TRPGこぼれ話#113~ライバルの演出・実例トミノライバル編~

 富野由悠季監督は過去のインタビューで「自分の作劇の原点は『用心棒』である」として、魅力的な物語には魅力的なライバルが必須、と持論を語っておられました…もしかして『姿三四郎』だったかな
 おっしゃる通り、富野アニメには愛すべきライバルがその都度登場し、ストーリィの盛り上がりに貢献してくれています。
 が、実際の彼らの活躍を見ていると、どうも宿命のライバルという破格の座席に対して見劣りする扱いだったことも否めません。それどころか美形ライバルなのに主人公には連戦連敗、立場もメンツも失ってこの有様…な連中が、かなり。
 シャア=アズナブルはクワトロ時代に失態を繰り返した挙句、最終的に池田秀一さんまで首を傾げるほど女々しい中年になってましたし、バーン=バニングスは騎士の誇りを捨ててまで挑んだ戦にアッサリ敗退。頼れる者もない地上に出てから、洋上で漂流者を装って救出され、裸足で体育座りして泣く様はこっちまで涙を誘いました。ジェリド=メサに至ってはライバルという席にすら座れてません。
 一方でパプテマス=シロッコのように、MS開発、政治工作、女の篭絡まで何から何まで大当たりする超人でありながら、主人公との関わりが薄かったため、宿命のライバルという立ち位置まで届かなかった奴もいます。最終回、何故カミーユがああまでブチ切れてシロッコに襲いかかるのか、初見で理解するのは、直感から来る怒りを理由にできるようなニュータイプ的視聴者でないと難しかったのではないでしょうか。
 今回はそんなイマイチ不遇な富野ライバルの中、一際異彩を放っていた人物を取り上げ、これまで記事にしてきたTRPGライバル的視点と合わせて紹介してみたいと思います。

●ティンプ=シャローン(戦闘メカザブングル)
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小滝進、横尾まり 他

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 燃える太陽白い砂、惑星ゾラと呼ばれた地球の上で、パターンというパターンを破り続けるはジロン=アモス(銀河万丈のナレで)。
 ドマンジュウなどと形容される丸顔の主人公に、複数存在する主人公機、物語途中での主人公機交代、メタ発言、とアニメのお約束に反逆しまくった作品『戦闘メカザブングル』は、バイタリティ溢れる登場人物たちの図太い生き様が魅力でした(なんせ、どいつもこいつも個人的な事情を優先して、事あるごとに主人公や組織を見捨てようとするんですから)。

 ティンプ=シャローンは「泥棒、殺人、あらゆる犯罪は三日逃げ切れば全て免罪」=“三日の掟”がまかりとおる、過酷な、しかしおおらかなザブングルの世界の住人にふさわしく、かつ特筆すべき一筋縄でいかなかったライバルです。
 次元大介を彷彿とする幅広の帽子の下から覗く鋭い眼光、黒いマントと葉巻を手放さない、マカロニ・ウェスタン風のスタイルで銀河万丈さんのドスの利いた声、これだけで強敵としての威厳たっぷりです。「西部劇風の世界」だったのに、まるでこいつだけ西部劇から抜け出てきたような風体とハードボイルドさ(1、3の他と違う外見・装備)。
 ザブングルは、主人公ジロン=アモスが親の仇であるティンプを追うことが動機となって始まりました(PCやNPCの知人として設定されているタイプです)。しぶとく追いかけてくるジロンに「三日の掟を忘れるとは」とうんざりしながらも、巨大組織イノセントの仕掛け人としてほうぼうで戦いを煽り、単なる流れのゴロツキでない一面が描写されます。この、端々で登場して物語上のキーパーソンであることを演出する手法は、PCたちとの直接対決をせずともライバルっぽさを見せつつ、かつ影を薄くしないという点で大いに参考になります。腕前の方も申し分なく、プロフェッショナルである自分の技前に絶大な自身を持ち、何度か迎えたジロンとの対決でも、毎回翻弄しています。

 そんなやり手のティンプ=シャローンの面白さは、ニヒルで格好良い姿を自然と醸し出しているのではなくて、本人のそうありたいという願望の表れ、カッコつけであること(2.他人と違う精神構造)、そして往々にしてそうならないことにあります。イデオンで人を殺し過ぎた罪滅ぼしに、と作られたギャグタッチからは強面のライバルキャラでさえ逃れられませんでした。
 なんせティンプが格好付ける時は、大抵直後ズッコケを見せる合図になっていましたから。トレードマークである葉巻に火が付いた時は、彼の鼻や手が火傷の被害に遭うことを意味します。悪党らしく高いところから登場してみれば、斜面で足が止まらなくなって、どこかに激突するまで走るハメになります。
 馬に乗ってもいないのに拍車つきのブーツを履いてるあたり、私見ですがあのファッションもカッコイイと思って揃えたんではないでしょうか。

 何より常日頃から「戦いはプロに任せときな」「てめぇにゃ男のメンツってもんがねぇのかよ!」などと発言をしていながら、いざピンチになるとあっさりと尻尾を巻いて逃走するいい根性こそ、ティンプの本質。やたら見栄を張りたがる癖に、逃げ足と見切り時は超一流。序盤のクライマックス第14話「ティンプ、悪あがき」でジロンに不覚を取った時はためらいなくクサい死んだフリをして欺き、「兄ちゃんは大物になるぜ」「フフフ…しかし、俺のこの演技があれば俺も捨てたもんじゃないぜ」とうそぶいてまでいます(そして、直後爆発に巻き込まれかけ、大慌てで逃げ出します)。余談ですが、死んだフリが最終奥義のキャラは多いです(キリコ=キュービィー、衝撃のアルベルト、早乙女乱馬、『魔獣使いの少女』のコルボ、沢野ひとし)。
 ある人曰く、「プライドが高いくせにプライドの無い男」とは、ティンプに対するこの上なく的確な表現でした。

 最終的に、ジロンの三日の掟を忘れた執着心は多くの人々を突き動かし、やがてゾラの体制を打ち破る闘争へと発展していきました。ここに至ってはジロンも個人的感情を押し留めて大義を優先せざるを得ず、一方でティンプがコケにされた恨み一念でジロンをつけ狙う、不思議な逆転現象が起きていました。知らず知らずのうちにアナキストのジロンの毒気にアテられて、プロに徹してきたティンプの、人間臭い執念深さの一面を垣間見ることができます(PC・NPCとの個性の応酬で開拓されたキャラクター性)。
 主人公のターゲットから外れてしまった、という点ではティンプも一見不遇なライバルと見えるかもしれません。しかし、作中一、二を争う実力と無類の生命力は最後まで出番を失わせず、なんと主人公の親の仇、それもストーリィ通しての敵であるにも関わらず、「また会おうぜ兄ちゃん」「ホーラと違って俺ぁ不滅だぜ」と最終回まで逃げ切ってしまいました(ご丁寧にラグの「もう会えるわけないんだよ!」というツッコミ付き)。
 トミノ産という枠を取り払ってさえ、異色中の異色と言えるライバルキャラです。

 …ちなみに、セリフにあるキッド=ホーラ君こそ、美形ライバルとして出てきた割に今一歩小物なせいでジロンには負けっぱなし、愛しのエルチには相手にされず、最終決戦にも参加できなかった、可哀想な「ライバルになりそこねた奴」だったりします。

●ジョナサン=グレーン(ブレンパワード)
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 ティンプに負けず劣らず濃いライバルキャラです。ティンプがコメディタッチのライバルに向いているとすれば、生々しい人間関係のエピソードにおける敵役の参考になります。
 伊佐美ファミリーを見下しながら、あからさまな面従腹背を見せる計算高さ、猥雑で神経質な指の動き、狭量で傲岸不遜な物言い…正直な話、初見では好きになれる要素が美形であること、「死ねよやー」という独特の言葉遣いぐらいしかありません(まあ、シャアの人気を見たりすると、美形だけで十分好かれるようですが)。
 案の定不敵な自信家でありながら、裏切り者の勇とブレンパワードを侮ったのがケチの付き初め(PCとの関係で言うと5.【立場が変化する】タイプ)。ノヴィス・ノアを前に敗退を重ね、富野ライバルの気の毒な二の轍を踏むかと思われていました。

 そんな彼のキャラクターが爆発したのは、第9話「ジョナサンの刃」で母・アノーア艦長と再会した時。試験管ベビーとして生まれ、母に愛情を注がれず育った複雑な事情が明らかにされました。
「嘘つけ! 悪いようにしないなんてずーっと言ってきたじゃないか! だけどいつもいつも裏切ってきたのがママンだ!」
「8歳と9歳と10歳の時と、12歳と13歳の時も僕はずっと! 待ってた!」
「クリスマスプレゼントだろ!!」

 “僕”“ママン”“クリスマスプレゼント”という子供じみた単語を使うことで、ジョサナンの生の感情が吐き出された名シーン中の名シーン(この回、ジョナサンの悲しそうな目の描き方が実に良くってなぁ)。伊佐美ファミリーへの冷めた態度は、単なる利己主義ではなくて、恵まれなかった家庭環境が原因という事実も抉り出され、一挙奥行きのあるキャラとなりました。
 さらにクマゾーに対する素直な賞賛で、少年期が少年期だけに子供には優しいという一面も演出されています。これが、母との再会というイベント抜きに出てきていては、浮いたエピソードとなるか、意外な一面というだけで埋没していたことでしょう。肉親との相克で描かれた側面を、さらにクマゾーというキャラをぶつけて、別の側面につなげてみせた高等テクです

 強烈なマザーコンプレックスという個性を身につけたジョナサンは、家族性の体現であるノヴィス・ノアへのアンチとして(そして、肉親の集団でありながら真逆のオルファンの象徴として)立ち塞がります。第13話「堂々たる浮上」では主人公の母との不倫という前代未聞の行為に出て、家族の間柄を嘲笑い、踏みにじっています(姉と通じていたのはハッタリという説あり。確かにあのブラコンが勇以外を相手にするとは考え難い)。
 一方でアノーア艦長にぶつけた本音、母からの愛情を求める欲求は捨て難く、僻地で出会ったバロン=マクシミリアンに師事してからは、実の親のように慕っていました。家族への苛烈な感情に反して、同じ痛みを持つ相手には見せる素直な親愛、愛憎入り混じった人物描写は最終回の「なんであんたがバロンなんだ!」という痛々しい絶叫を感慨深いものにしています。

 考えてみればジョナサンは「家族愛」というテーマの歪みに切り込む、もう一人の主役とも言うべき表現者でした。
 最後の最後でその歪みを許して受け容れた彼はテーマに対する答えであり、人がわかり合える可能性でもあり、また物語をしめくくる象徴でもある、と幾重にも意味を連ねた最終回における立役者となっています。物語の終焉まで主人公の対局であり続け、主人公の対決をせずとも円満な決着は迎えられるのだ、という点で、比類なきライバルだったのではないでしょうか。
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