クトゥルフ神話TRPGヨタ話#88~11年目のキーパーテクニック(後編)~

 11年目の再評価ぐらい大目に見ろよ
 11年前だって評価されたクオリティだと思いますけど。
 さあ内山先生直伝のキーパーテクニック後編だ! 実践に話題が移るにつれて、胸が痛くなる体験談もますます増えていくゆえ、ちょいと心臓の悪い読者は早く卒塔婆に墨入れな!

4.情報提供の流れを工夫する
 前回の記事に倣って
・インパクトのある事件で興味を引き
・探索者だけしか知らない情報で自発的に動いてもらい
・情報収集は多様なNPCで演出する
 てな流れが出来てきたところで注意されているのが、「調査方法に選択肢を複数用意すること」。
 つまり一本道シナリオはイカンということでしょう、耳にタコができるほど聞いてますよ俺らならそんな初歩的なミスあり得ないっすよ小指でひねってやりますよマジで、とマジン調に息巻くところだが、よく読んでみよう。内山先生曰く、ここで言う一本道のシナリオとは、最善の行動選択肢が簡単にひとつに絞られてしまうシナリオのこと。ゲームの目的が謎を解くことであれば、その最善の行動をしないことは、ほぼあり得ない。ならば、それは行動選択肢がないことと同じではないか?
1394009798624.jpg
 ちょっとお見苦しい所をお見せしましたがだだだ大丈夫、探索者は次々イベントに遭遇しているんだから退屈しない……という甘い幻想は「そんなに驚ける新鮮なイベントなんて思い付くもんじゃないし、だんだんとプレイヤーは考えることに飽きて、想像力を失ってしまう。それはシナリオへの好奇心が失せるのと同義だ」という言に打ち砕かれる。
1366001086208.jpg
 さて砕け散ってばかりでもいられんので、じゃあどうするか、を考えると、気を付けなくてはいけないのがプレイヤーの情報の質。ひとつの情報を手に入れたら、すぐに次のイベントが明示されるようでは、前述のような選択肢がありそで結局一本道なシナリオとなってしまう。情報を得た探索者の前には、複数の行動選択肢が示されるのが理想だ
 行動選択肢の提示は、「次の展開がはっきりわかるものではなく、少しだけ思わせぶりに、ぼやけた情報を渡す」ことで実現させる。人物ならば直接指定するのではなく、「偉大にして深淵なる魔術師」などと人となりを迂遠に表現したり、「私の最も尊敬する人物」のように、情報源との間柄で示す、など。
 明示されていない情報というのは、それだけでプレイヤーの興味を引き、想像力をくすぐるもの。こうじゃないか、ああじゃないかと手探りしている間は妥当な選択肢をすぐに導き出すことなんてできないし、そうするうちにKPの予想を超えて、より面白くなる可能性さえある。KPだけでもPLだけでも思いつかない展開を思いつく、これぞTRPGの醍醐味。これを誘発できるのがベストの情報の質というものだろう。
 ひとつ付言するなら、クトゥルフの場合、呪文のようなブレイクスルー手段を探索者が頼りづらいのを考えると、「少し考えればわかる」程度にぼかした情報を並べるのがちょうどいいと思う。あんまりややこしい情報だとそれにかかりきりになって展開が詰まるが、かといって単純すぎる情報は上記の一本道シナリオに抵触してしまう……そこで、そこそこにぼかした情報を並べて、吟味するという思考をひと手間加えることで、単純さを補うという寸法。
 まとめ、探索者の想像力をかき立てるような情報を。次の行動を簡単に特定させてしまう情報はNG

5.形あるものを残す
 この項は情報収集の補足といった感じ。曰く、「探索者に物的証拠を与えよ」。
 内山先生喩えるところによると、口頭の情報収集がクトゥルフの“”なら、物的証拠は“”。謎めいた形状のナイフ、犠牲者の握っていた不気味な彫像……一見しただけではその意味を読み取れない物品は、図書館を頼ったり、NPCに聞き込みに行ったり、という調査の出発点となる。
 それに、探索者の手元にあって、いつでも調べたり考えたりできる謎めいた物品というのは、心理的な土台となってくれるという効果もある。常軌を逸した事件が連続し、事実を直視するのが難しくなった時でも、物的証拠が手元にあるというのは、事件が妄想でも幻覚でもなく、現実のものであるという確信を抱かせてくれる。
 最後に、大事なのは、物的証拠は量より質。数が多いと目移りしてしまって、ひとつひとつの印象が薄れてしまう。決め手となる物的証拠なら、ただそれだけを見ていればいいぐらいのイソパクトを付与してやるのだ。
 まとめ、物的証拠で調査の足場を作る。奇妙な物品ひとつでプレイヤーの気持ちを掴め!

6.最後の盛り上がりに虎穴を用意
 情報収集で全貌が明らかにされたら、いよいよクライマックス。
 ここを上手くシメれば、終わり良ければ総て良し、逆に言えば終わりがしまらなければ全てがパーデンネンになるデッドエンドフェーズだ。あ、そうそう、終わり良ければ総て良し、を曲解して途中の情報収集なんておろそかでええんや、とかぬかす輩には「はじめ半分」という言葉もあるかんな!(by大熱言)
 ただ、情報収集とプレイヤーの推理で謎を解き明かすクトゥルフでは、全貌が明らかになった時点で目的が達せられたと気が抜けてしまいがちなのが危惧されている。消化試合扱いされないためにも、プレイヤーの興味は最後の最後まで引っ張ってやらねばならない。
 故に、クライマックスに必要なのは虎穴を用意しておくこと。大手同人ショップなどというありきたりなギャグや梶原一騎的プロレスラー養成機関などと昭和ジョークを放つ輩は一人残らず《ニョグタのわしづかみ》の刑だ。
 全ての謎が解けたら問題点を排除して終了してしまうこともあれば、良質なミステリにアクションシーンなんていらんのや、という人もいるかもしれない。が、道中こんだけ謎と危機を煽っておきながら無難に終了したんでは腰砕け。それに見合った緊張感があってこそ、カタルシスは生まれるのだ。
 んで緊張感を生むために手っ取り早いのは、「探索者を危険に立ち向かわせる」こと。
 最後の最後までガッチリプレイヤーの心を掴むには、全ての謎が解けた後でも、どうしても残ってしまう危険をKPは用意しておけばよい。そして、その危険はどの程度なのか、はっきりわからないようにしておくのが、なお理想。どうしても立ち向かわねばならない障害とあらば、プレイヤーはその危険を少しでも軽減しようと頭を搾り、入手した情報を総ざらいするだろう。プレイヤーが夢中になっている間は、シナリオに対しての好奇心が失われることはない。
 またあまりにも絶望的で無理竜な危険にしてしまうのは、ハナっから諦めて投げ出される恐れがあるから禁物。それまでの事前調査と推理、それにひとにぎりの勇気で乗り越えられる危険が程よい。まあ絶望的な危険というハードモードもありっちゃありだが、危険が大きければ大きいほど、その対処方法には確証を与えてあげるべきだろう。「危険は大きいが、探索者が集めてきた対策があれば対処することはできる」という保証がなければ、いくら遊びとはいえプレイヤーだってヤになって当然よな。
 さて、そのクライマックスの危険だが、ここからが本項の大部分を占める。というのも、クトゥルフでどつきあいで決着をつけるというのはなかなか難しい。何度もネタにしてきたように、クトゥルフの戦闘ルールはまじめに運用すると運用できない(内山先生は「ややアバウト」と控え目な表現に押さえているが、「やや」どころじゃないよ!)というポンコツであり、かつそれを意図して組まれた探索者でなければ、戦闘能力の確保は難しいため。それまでの地道な努力が、ちょっとの不運で露と消えたのではプレイヤーも納得しまい。かくて「クトゥルフは理不尽」などと触れ回るプレイヤーを自らの手で生む業を背負わねばならぬ羽目になる。
 ところでオレは何度も戦闘で解決させられてきたが、それはプレイグループの傾向が偏っていたからであり一般論と同一視するのは危険だろう。ついでに言うと、怪物の鉤爪に襲われて死にかけるより、操られた味方の拳銃に殺されかけた方が遥かに多いのもその証左だな。
 それではクライマックスの危険を戦闘以外でどう排除するのかというと、「これまでの情報で明らかになった手段」を「何度かの判定の成功」で行えるようにすると良い。クトゥルフが頭脳ゲーム中心であれば、その解決策もまた頭脳ゲームというのはごく自然な帰結。邪神が召喚される儀式ならば、狂信者や邪神を倒すという解決方法より、儀式に必要なアイテムを破壊する、封印の呪文を先に唱える、魔法陣を壊す……など、いかにして阻止するか、という方向性に持っていった方がよりクトゥルフらしいクライマックスとなる(この時、4の「複数の手段を用意してプレイヤーの好奇心を引く」を応用するとなお盛り上がる)。
 そして、この時自動的に成功するのではなく、何らかの判定も要求するのがポイント。全ての情報を組み合わせた最適解を得た上で、最後の一押しに判定の成否が関わってくるのも、クライマックスのスリルには相応しい。判定自体が単純なものでも、生死の関わった状況でのロールは場を盛り上げてくれるもの。
 ただ、使う判定はあまり無茶なものでない(誰も取ってない〈地質学〉ロールとか)こと、それに探索者の調査の進み具合や工夫を反映させたボーナスは積極的に汲んであげること、そして判定に取り組む機会は二度以上与えてあげること。いくらスリルが重要でも、d100ロールひとつでこれまでの成果が否定されては台無し。ひとつひとつ判定の成功を積み上げて解決に近付いてゆく展開は、達成感と同時に情報収集パートにない緊張感を演出してくれる、これぞクライマックスならではの展開というもの。それに諦めない心と努力は報われるべきで、失敗したとしてもヤクザの世界に二度目はねーぜ、などと凄まずチャンスは与えてあげてほしい。
 戦闘自体も、この「何らかの判定」に含まれる。戦闘ルールに難儀があるなら、それ自体を解決策にせず、危険を阻止するための一環に含めればいいのだ
 もしも判定抜きで事件を解決できるようにするなら、前述の絶望的なまでに危険が大きい場合と、支払うリスク(マジック・ポイントや耐久力)が取り返しがつかないほど大きい場合が望ましい。直面する危機が大きいと、プレイヤーは判定を求められた場合、刺激以前に「ここまで段取りしておいてなおロールが必要なのかよ」とストレスに取られかねない。また、よくわからんが取りあえず火を点ければ解決できる、てな最善策というのは、緻密な情報戦を下地にしておくにしては、あんまりにもあんまりだ(『パラダイスの終焉』は知っている人ほど最善策に辿り着きづらい意地悪い仕掛けになっているので…という考察を聞いたことがあるが、そんなシナリオをルールブックに掲載するなっちゅーねん)。
 最後に、失敗した場合の脅威を提示しておくのもクトゥルフでは大切なこと。プレイヤーに真に伝えるべきはその一点、とさえ内山先生は訓戒している。
 事件の真相に近付けば近付くほどその脅威を知るのだが、それでもなお探索者には立ち向かう決意をしてもらわねばならない。もしもそれが放置されたら、そして探索者たちが投げ出した場合、人間社会にはどんな危機が迫るのか? その切迫感があってこそ、探索者は最後までシナリオに取り組む姿勢を保てるのである。同時に、その危機が「探索者の手で対処できる」ことを明示するのも同じぐらい大事。わかっていて危険に取り組むとしても、探索者がアクションを起こせば解決できるというシナリオ上の保証、そういうプレイヤーとKPの信頼関係があれば、「クトゥルフは危険を無理強いされる理不尽なシステム」などと揶揄されることはないだろう。
 まとめ、終わり良ければ総て良し。失敗の恐怖と成功の達成感をプレイヤーに与えよう

 ……11年前、『クトゥルフ2010』さえ登場してなかった時期に執筆されたKP講座、如何だったろうか。
 もとよりシナリオやマスタリング作法というのは時代を越えて通用するもので、今のKP諸氏が読んでも頷ける内容、納得できる内容であったと思う。今では手に入れるのがちょっと大変だが、Vol.99のキーパーの十戒、それに最新のVol.162のキーパー・デビューと併せて読んでみていただきたい。冒頭のイラストが、女物の下着姿でハイヒールと網タイツ(と恐らくカツラ)を着用したオッサンが魔法陣の上に大の字に倒れている、という逆方向に全力で舵を切ってる代物な以外は素晴らしい記事だ。

  
スポンサーサイト

テーマ : TRPG
ジャンル : ゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

銀河アズマ

Author:銀河アズマ
R&RにてパスファインダーRPGのサポート記事を担当させていただいております。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
タグ

D&D Pathfinder PC作成 5e 4e Encounters 初期PC TRPG クトゥルフ神話TRPG クトゥルー キャンペーン 六門世界 東方ドミニオン ARG レポート 3e 読んだ本 ボードゲーム 迷宮キングダム 小説 APG ACG サプリメント MM SW2.0 カードゲーム モンスター・コレクション ザ・ペナルティメイト・トゥルース UC メタリックガーディアン N◎VA パラサイトブラッド 音楽 エッセンシャル  一発ネタ 大槻ケンヂ UE PU 筋肉少女帯 MTG 漫画 ブレイド・オブ・アルカナ Season8 風神録 バカゲー キン肉マン SF ジョジョの奇妙な冒険 UM 覚醒篇 中堅PC 野望のルーツ ウォーハンマー Season6 GM Princes_of_the_Apocalypes Season4 永夜抄 アニメ Season7 リプレイ クトゥルフ2010 サタスペ 東方領土研究会 ゲーム Bestiary EXTRA PHB DMG 紅魔郷 R&R パズル 真・女神転生 クトゥルフ2015 伊藤勢 椎名誠 妖々夢 死の国サーイ Season11 天羅万象 UA ガンダム NEXT PSYCO-GUNDAM スパロボ 地霊殿 シナリオ MC Season9 Season5 機動戦士Zガンダム ファンタズム・アドベンチャー スティール・ボール・ラン Season3 奇想コレクション シオドア=スタージョン バキ Forge 世紀末古代災厄公社伝説 フィリップ・K・ディック 好きなTRPG コードウェル城奇譚 荒野に獣慟哭す Season12 空中庭園エリュシオン レッド・ノベンバーを救え! キャッスル・レイヴンロフト Volo's_Guide_to_Monsters ナイトウィザード シャドーオーバーミスタラ 番長学園!! タイム・オブ・ティアーズ・アゲン CRB 映画 特撮(バンド) Expeditions UCa プロモカード リボルミニ フンタ レジェンド・オブ・ドリッズト 特撮 サタスぺ 電車 ジョジョリオン パンデミック 五つの風 手塚治虫 機甲猟兵メロウリンク FEAR パスファインダー・アドベンチャー 異色作家短篇集 ラス・オヴ・アシャーダロン 雑記 ダンジョン・コマンド T&T ビギナー・ボックス d20モダン 即大休憩 Temple_of_Elemental_Evil シャドウラン 装甲騎兵ボトムズ アルフレッド=ベスター メガテン 三国志 ACG 真夜中の探偵 アリアンロッド ダークブレイズ 快傑ズバット レイトショウ 東映特撮YouubeOfficial カットスロート・プラネット ストーンオーシャン 幻想少女大戦 ドラスレ 異色作家短編集 ウルトラマン 当方領土研究会 Out_of_the_Abyss フレドリック=ブラウン スティーヴン=キング クトゥルー神話 ミストグレイヴ バイブルハンター 島本和彦 MM2 セブン=フォートレス OA ルーンロードの帰還 2nd カードランカー Starfinder そっとおやすみ 三上寛 エンゼルギア クソコラ VGtM ポケットの中の戦争 ログ・ホライズンTRPG ゲーマーズ・フィールド Pit ジャングルスピード モンスター画家 Role&Roll イベント パラノイア キャット&チョコレート ラフカディオ・ハーンと四つの顔 魔獣使いの少女 ラクラク大統領になる方法 東方領土研究会会報 刺青の男 レイ=ブラッドベリ アーカム・ホラー 革命万歳 都筑道夫 キテレツカップリングパーティ 火の鳥 鉄腕アトム ガントレット・オブ・フールズ 絶体絶命 コズミック・エンカウンター 

リンク
FC2カウンター
D&D5e
Pathfinder
クトゥルー
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード