TRPGこぼれ話#304~BRP深夜三流俗悪映画の逆襲!!~

 みんなーッサメ映画好きーッ?
 俺ふつー。
(ヒラコー調)
 ちょっと前(おっさんの言う「ちょっと前」は十年前まで含まれる)オンセにおけるルールブック未所持問題で騒いでいたが、常識知らずは叩き出せの一言で済むところを雪ダルマ式に小難しい話題にしちまうのがTRPGクラスタの悪習とかそういう事は置いといて、世には未所持以前にルールブックが手に入らんシステムというのもあるのです。人を集めたくても。例えばメガテン覚醒篇とか。でもXの方がプレミアになってると聞いてびっくらこいた。
 この問題を解決するには私家版を作るなり電子化するなりしてオンライン上で閲覧可能にすることだが、著作権的にかなりアウトっていうかモロアウト、それもいくらセキュリティを施そうとコピーしやすい電子媒体という時点で裁判キャンセル監獄のデッドライジングを極(き)められる危険性は高い。公表から50年後の失効待ちという時間勝負も手ではあるが、多分切れる頃には我々は土の下にいるか、ちゃんとものを喋れなくなってTRPGどころぢゃなくなっていると思う。ちゃんと版元と交渉して企画通すとか、そういうまっとうな立ち回りをできる立場ならいいのでしょうが、うーむ。
 もちっと現実的な路線を考えると、みんなが持っていそうなシステムで代用するというのが手だな。例えばソード・ワールド旧版をやりたければシステムはSW2.0で世界観を合わせるなり、旧版に合わせたルールの調整を加えるなりすればいいだろうし、それこそ気力と根性次第によっては全然別のシステムで代用することだって可能だろう。はるか昔のTRPGユーザがD&Dを使って現代学園モノをやっていたように(GM「そう言って彼女は君の首筋に熱い息を吹きかけてきた。さあドラゴン・ブレスに対するセービング・スローだ」)。d20システムでクトゥルフやトラベラーをやったりしてたんだからやってやれないことはない……もっとも、d20システムって言うほど汎用性はなかった気もするけど……ガープス? んーとね、悪いけど俺その話題になると頭痛がするの。
 イット・ケイム・フロム・ザ・レイト・レイト・レイトショウもそんな代行システムを立ててでも遊びたいゲームの一本である。
 イット・ケイム・フロム・ザ・レイト・レイト・レイトショウ(正式名称はこれに深夜三流俗悪映画の逆襲!!が続く。以下レイトショウ)とは、TRPG界でも珍しい映画撮影をモチーフにしたTRPG
 映画撮影でTRPG? とピンと来ない人もいる、いやこんな吹き溜まりに書いてある記事を読むような人達なら説明いらんかもしれない(読者ディスりすいません)が、あらためて語ると「GM=監督、PC=俳優、舞台=映画のセット、シナリオ=脚本、セッション=撮影」と考えてもらえば想像しやすいのではないだろうか。監督の語る状況説明と脚本に沿って、俳優たちは様々な困難に立ち向かっていかなければならない。同時に、俳優たちも監督や共演者と相談して制作に参画することができる。こうして見ると普通のTRPGのセッションに近い物があるとワカる。
 んで、ここからがミソで、レイトショウで撮る映画とはまともな映画ではない、サブタイにあるような三流俗悪映画、B級やC級というのも生ぬるいというかB級C級に失礼な、Z級と称されるくそ映画中のくそ映画だ。冒頭で触れたサメ映画なら、サメが竜巻に乗ってやって来る……こんなまっとうなプロットじゃ全然Z級じゃないな、「ナチス・ドイツの科学で蘇り、ブードゥー教の呪いによって竜巻を呼べるようになった三本首のゾンビ・シャークVS人類の自由と希望と正義を賭して戦う、大統領操る核弾頭搭載のフルメタル・シャーク」これならどうだ。
 そんなくそ映画につきものなのは、映画会社の屋台骨を支えるよりぶっ壊す方に貢献している、何故絞首台に上らないのか不思議な監督、出来の悪いCGにしか存在しないと思われている劣悪な化石舞台セット、そして破綻した脚本だ。シナリオライターがよこした書きかけの、それこそプロット以下のプロットで投げ出された代物を元に、監督と俳優は映画を撮っていかなければならない。大雑把な筋書きしかないが故に、監督はその間を埋める創意工夫に無い知恵を絞らねばならず、そしてそれはしばしば出演者の安全や物語上の保証を顧みない無茶ブリとなって俳優たちに降り注ぐことになる。そいつをうまくかわして人気を獲得するために、俳優たちはあの手この手を尽くさねばならない。時には監督を含めたスタッフに口を出してでも――実を言うと、「大雑把な筋書きを元に、ホストが語る物語に対して行動を決定し、結末へと導いていく」という構造は普通のTRPGと同じ。それを(くそ)映画撮影というテーマに合わせて落とし込んだ結果がこうなのではないかと分析する。
 そして筆者がレイトショウをTRPG史に残る傑作いやさケッサクと信じてやまないのは、メタ・フィクション要素を大々的に取り入れた作品である、ということだ。PCは現実世界の俳優であり、セッション=撮影中で演じる姿は架空の役柄という、まったく別の人物だ。舞台設定も同じく映画のセットなのだから、茂みの裏を除いたら書き割りの板が見えたりする。故に、舞台を外れた場外乱闘を仕掛ける要素が無数に用意されてある
 なんと人気をタテに物語の展開を捻じ曲げる方法が規定されているのもその一面。俳優がつむじを曲げて舞台から降りることで、監督が泣きついて無茶な状況を変えてくれるルールが存在するのだ。もっとも人気が無い俳優がやっても鼻で笑われるだけだけれど(そして、大抵の俳優は人気が無い。あったらこんな映画の撮影になんか出演しない)。それ以外にも、フィルムを破損させてまずい場面の撮影を中断するブレイクスルーあり、耐えられないダメージをスタントに受けさせるシールドあり、緊迫したシーンの後のお色直しという名の回復タイムあり、どれもこれもが映画撮影ならでは、そして映画撮影を扱ったTRPGならではの、このタイトルでしかありえない徹底的なメタ・フィクションとシステムの融合。デザイナーは相当の手練れでしょう。そういえば、監督もこれを逆手にとって、メタ的な演出を作ることもできるんだった。プレイヤーに考える時間を与えたい場合は、突然撮影を中断して休憩を申し渡した後に、スマホに耳を当てつつこう囁くとか。「すいませんお金あと2日待ってください」
 中でも出色なのは俳優と役柄(またはGMと監督)の分離によって、TRPG上のメタ的なぶっちゃけをルールにしてしまっているところ。言ってしまえばTRPGではGMはクリアできない物語は用意しないし、何らかの解決策を持ち込んでのセッションという、ある種それを言っちゃあおしまいよ的な安心感のあるプロレスである(たまに用意しなかったり持ち込んだりしないGMもいるがそういう話は今回触れない)。しかしレイトショウでは、役柄というPCの視点と共に、俳優=プレイヤーの視点も許容されている。キャラクターの目線で考えると共に、プレイヤーの目線で考えて発言し、それを楽しんでしまうことができるという寸法
 クトゥルフで言えば「絶対に見に行きたくないがシナリオ上見に行かないといけない怪物の住処」があったとして、そこにノリノリで行くか嫌々行くかは人によって異なるだろう。が、レイトショウでは監督や共演者に対して、「これはどう考えても見に行くのは頭がおかしい奴の行動なんで、もうちょっと上手い手はないだろうか」という相談タイムに入ることができる(ただし、もっと上手い手段、あるいは面白おかしく頭のおかしい手段を講じなくてはならない)。もしくは「ただ見に行くだけじゃ面白くないよ。僕は数歩ごとに自分の足音が大きくないか確認しながら進んで、角まで来たらずるりと足を滑らせて、そこでやっと床の血のりに気付くんだ。“うわあ、なんだこれは!”と叫びながら」と自主的にくそ映画につきものの頭がおかしい奴の行動で笑いを取りに行ってもいい――ついでに言うと、このくそ映画につきものの頭がおかしい奴の行動をすると、観客は大喜びして人気が上がる。故に、慣れてきた俳優は自然と命を顧みない体当たり撮影に飛び込んでいくようになる(スタントが使える限りは)。
 段々察してきたかもしれないが、レイトショウの目的は皆でネタにするしかないおもしろ変なくそ映画の完成なのだから、基本的にウケが取れれば何でもいい。ちょっと『番長学園!!』などの前時代HJ系システムや1PTRPGに通じるものがある。プレイヤーからはどんどんアイデアを出してもらい、監督がどんどん採用することもできるし、それこそ監督の方から「シナリオからぶっ飛び過ぎてこの状況を打破するいいアイデアが無いんだけどどうしたらいいと思う?」とぶっちゃけてもいい。監督が無理難題を押し付けるにも、それは楽しく追い詰めて悩ませるものでなければならないし、プレイヤーもそれをワカってより楽しくなるよう立ち向かい、あるいはさらに苦しむ方に転がっていってもいい参加者全員がこれはバッドエンドに行くしかないな、だってその方が面白い映画になるんだもん、と覚悟完了したらそれで映画をしめくくってしまってもまったく構わない。実際に俳優が死ぬわけではないんだから、PCのロストは起こり得ないんだし(俳優が死ぬようなメタ要素を持ち込まれたらその限りではない)。意地の悪い人なら出来レースとくさすTRPGの構造自体を笑い飛ばしちゃうこのアイデアは、なかなか他所では見られたものじゃないですよ。てか凶器攻撃なんで他所であんまり見られちゃいけないと思うんだな、ギャグの大敵は陳腐化であるし。
 これらの説明を読んでちょびっとでもレイトショウに興味を持ってくれたヤングには申し訳ないのだが、前フリの通りレイトショウも年季の入った(くそ映画TRPGの割に意外と歴史がある。日本語版として20年前に出たのは生意気にも第3版)システムの例に漏れず入手は困難である! 仮面ライダーAmazonによると中古品がお値段たったの55,800円(2017年12月現在)という数字に俺は脱糞しかけた。

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こんな感じ
 ソシャゲに突っ込んだ額がン万円なら回らない寿司屋で豪遊できるという説教にもまあ金の使い方は人それぞれでないの、と思うけど、それにしてもこの額を払って入手するなら、55,800円の価値を考えていいんじゃない、と一口添えずにはいられない(面白いのは保証しますが、うーむ)。ちなみに版元がバイチャダストされたせいで再版もできないという噂も聞いた。翻訳のセンスが迸りまくっているんで是非現物を読んでもらいたいのに実に惜しい。D&D界の味皇こと桂令夫さんの仕事としては、RPGマガジン&ゲームぎゃざのガンダム記事と双璧をなすものではないでしょうか。
 ルールブックの確保が難しい以上、あんまり怒りを買わずにオンセで遊ぶなら、既存のルールに手を加えたヴァリアント的な扱いで、具体的なデータは頒布しないようなやり方になるが、さていい代用ルールはないか……と考えるまでもなく目の前にありました物凄く近しいルールが。BRPっちゅうかクトゥルフがほぼそのまんま使えますやん。システムからして好奇心が肥大化して自ら危険に体を晒す(その上探索能力は尖って凡人より強力ではある)一般人がPCのゲームですし。それに、
・d100を用いた%ロール
・無駄に多くマトモに運用することを考えているとは思えん技能群に、大雑把なポイント配分方式
外見という直球の、他のシステムであまり見られない能力値
・くそ映画では無体なクリーチャーや超自然的存在との対決がしばしば起こる
 と、親和性も高いぞ。そういえば、クトゥルフのシナリオ上必要な技能の成長機会を開始前に与えるルールはレイトショウの特別技能指導と似てるな(その作品の撮影中に限って、特定の技能の成功率が50%になる)。……いや、クトゥルフをレイトショウがパロったんだろうな、というのは言われんでもよーくワカってますがね(クトゥルフの正気度ロールや一時的狂気表とクリソツのルールが存在する。ただし、レイトショウで恐怖に耐えられるか否かは人気である)。あ、そういえばクトゥルフにもB級映画のノリを再現する『ホラーショウ』なんてサプリがありましたね。でも、こんだけ真正面からメタ・フィクションを見事に取り込んだシステムはやっぱり無二のものだと思うんだな。現物見てないんで断言はしませんが、多分フィルム燃やしたりできないでしょうし。

ってこれまたプレミアかよ!
 システム的に親和性が高いと言ってもいくらかは削らなければならない。例えばEDUとSANが削られ、その代わりに人気が入ってくる。またくそ映画の俳優が運がいい事はほぼないので、〈幸運〉ロールの存在も消えるだろう。幸運か否かを問う時は人気ロールになるはずだ、それも×5などという甘い数字ではなく、人気そのままで。余談だけれどレイトショウは人気さえあれば大抵どうにかなる。流石は映画撮影TRPGだ。さておき、クトゥルフを元にしたこのBRPレイトショウ、なかなかイケてるアイデアではないでしょうか。上手く行けばザギンで懐石料理でもつつくか、待遇がいいという府中刑務所で壁相手にキャッチボールすることになるぐらいの成果は見込めると思うんですが、どうよ?
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