D&D5e余話#161~部族形式の遭遇を考える~

 ここでいう部族形式の遭遇、というのは同一の種族(ゴブリン、コボルドなど)が中心である敵勢力を蹴散らしていき、最終的にその種族の長と対決するような一連の遭遇を想定している。雑多な種族が強力な支配者の下で使役されている、という遭遇もそれはそれでいいが、こういう統一感を持たせた遭遇というのもシナリオを組む上で雰囲気作りに大事だと思うのれす。
 ほんじゃもっちゃ種族の長はMMで提示されている上位種を使えばよかんべえ、と言いたいところだが、5eだと種族の一般的な輩とボス格の脅威度の間にどでかい差が開いている例も多く、そう単純ではない。てなわけで5eのMMに掲載されている同一種族で上位種のデータが掲載されている連中を抜き出してみた。

・コボルド(脅威度1/8)……ウィングド・コボルド(脅威度1/4)
・ゴブリン(脅威度1/4)……ゴブリンの首領(脅威度1)
・ドラウ(脅威度1/4)……ドラウの上級戦士(脅威度5)、ドラウの魔術師(脅威度7)、ドラウのロルスの女帝(脅威度8)
・クオトア(脅威度1/4)……クオトアの鞭打ち(脅威度1)、クオトアの高司祭(脅威度6)
・オーク(脅威度1/2)……オーク・アイ・オヴ・グルームシュ(脅威度2)、オログ(脅威度2)、オークの戦長(脅威度4)
・ホブゴブリン(脅威度1/2)……ホブゴブリンの司令官(脅威度3)、ホブゴブリンの戦王(脅威度6)
・ノール(脅威度1/2)……ノールの群れ長(脅威度2)、ノール・ファング・オグ・イーノグフ(脅威度4)
・リザードフォーク(脅威度1/2)……リザードフォークのシャーマン(脅威度2)、リザードフォークの王/女王(脅威度4)
・サフアグン(脅威度1/2)……サフアグンの女帝(脅威度2)、サフアグンの男爵(脅威度5)
・バグベア(脅威度1)……バグベアの頭目(脅威度3)
・ギスヤンキ(ギスヤンキの戦士、脅威度3)……ギスヤンキの騎士(脅威度8)
・ギスゼライ(ギスゼライのモンク、脅威度2)……ギスゼライのゼルス(脅威度6)
・ユアンティ(ユアンティ・ピュアブラッド、脅威度1)……ユアンティ・マリズン(脅威度3)、ユアンティ・アボミネーション(脅威度7)

 種族のトップとの差はこうして見ると相当に大きい。一般的な個体といい勝負ができるレベル帯では、トップの一歩手前の奴をぶつけておくのがシナリオのボスとしてはちょうどいいぐらいか。とは言え、5eだと攻撃ボーナスが伸びづらいせいで脅威度が低い敵でも侮り難くはあるのだけれど。
 中でも低脅威度から中脅威度まで対応できるオークの懐の広さが心強い。基本のオークさえグレートアックスの一発があるため侮り難く、“猛進”の機動力もあって後衛も迂闊な立ち回りができない。アイ・オヴ・グルームシュは“グルームシュの怒り”の大火力にスピリチュアル・ウェポン+ブレスのクソコンボ搭載(【判断力】が低いのでスピリチュアル・ウェポンであまりヘイトを買わない良心的設計)、オログは高いACと複数回攻撃という単純明快にして美しくさえある上位種ぶりで、まさに理想的な中ボス。コイツら1体がいるだけで、2~3レベルになって強さを実感できるようになったパーティでも大苦戦は免れまい。hpはそこそこなんで、やられる時はアッサリやられるところも潔い。ボスのオークの戦長は次ターンまで有利を与える狂能力“鬨の声”のおかげで言うこと無し。序盤から中盤にかけてどこで出してもいい、部族形式の遭遇のベストなモデルケースと言えましょう。
 ゴブリンの上位種、ゴブリンの首領は複数回攻撃で脅威を拡散でき、かつ2回目の攻撃には絶対に有利が乗らず(不利がつくため)、火力も控え目で1レベル相手でも出せそうな珍しいボス格。ただ、以前に何度か言及したようにAC17というのは1レベル相手には高い壁。ゴブリン自体もAC15と脅威度の割には高いので、初心者相手のインサートのようなシナリオだったら、シールドは外した方がストレス溜めなくて済むかもしれない。代わりはジャヴェリンを握らせておくとか、他のゴブリンはショートボウを射かけさせるとか。
 ゴブリンの下にはコボルドがいるが、上位種がウィングド・コボルドと基本個体に毛が生えたような奴なんで、これをボス格で出すというのもちょっとね……。上空からの投石で後衛を襲いに行っても、スリープ一発で眠って落下ダメージで即死しそう。あと、コボルドばっかの遭遇というのはパック・タクティクス祭りに必然的になるんで心象よぐねえ。
 低脅威度の中で脅威度詐欺著しい5eにおいて、ノールは数値の割に火力も特殊能力も大人しい、珍しく良い奴である。ファング・オヴ・イーノグフまで到達してもそれほど嫌らしい攻撃は少なく、わりかし安心して正統派の殴り合いが楽しめるだろう。が、個人的にコイツらの最大の危険性は種族独自の“大暴れ”ではなく射程150のロングボウにあると思う。攻撃ボーナスはチョロくても呪文すら届かない距離から矢ブスマにされかねないので油断は禁物。
 リザードフォークは脅威度1/2から複数回攻撃持ちで、ACもなかなかと攻守のバランスが取れている。そのぶんダメージは控え目。一見多彩な攻撃方法は持っているがデータ上の際は殆ど無いのであまり気にしなくていい。せいぜい、ヘヴィ・クラブを落としてジャヴェリンを投げた後でも噛みつきとシールド・スパイクで殴れるぐらい。……てか、なんでヘヴィ・クラブを持ってるんだろう。さておき、上位種のリザードフォークのシャーマンはAC13、hp27と脅威度2にあるまじきヘッポコ野郎だが、呪文はエンタングルヒート・メタルと非常にいやらしい。コンジュア・アニマルズで手勢を増やすなど、早々に始末しないと面倒なことになる。hpが低いのと、要精神集中の呪文が多い欠点を突いて、マジック・ミサイルを撃ち込んで精神集中を乱した後に集中攻撃を仕掛けるのがベストだ。呪文の恐ろしさを教えるなら、コピペのような呪文表しか持ってないNPCどもなんかよりこういう奴で示したいもんですな。リザードマンの王/女王は“串刺し”による火力アップと一時的hpがマジヤベェので、「経験点枠上問題ありません」とかぬかしてレベルの低いPCが混じってるパーティにぶつけると惨事になる。てか、なった(体験談)。珍しくセーヴにも習熟しているため、搦め手もやや通じづらく、DMもプレイヤーも手に汗握るガチンコファイト倶楽部を覚悟で戦うべし。【敏捷力】セーヴだけがやや苦手なので、突くならそこか。
 サフアグンはちょっとでも傷つくと“血の狂乱”に入るキレキャラで、脅威度1/2の中でも攻撃性はオーク以上と言える。3発は叩き込まないと倒れないhpもいやらしい。有利の代わりに一発一発は軽そうに見えて、スピアを両手で握りつつ噛みつきが可能なので打撃力も十分。実は1レベルPC相手だとボスとしてちょうどいいぐらいかも(攻撃回数が多いので軽めのダメージをバラ撒ける、ACの低さは高いhpで補っているため、「ダメージを与えている」という実感を与えられる)。男爵になると図体がでかくなるが、攻撃回数増加ぐらいで、4eで味わった別格感は意外と薄いかもしれない。四本腕の四回攻撃が無いのはザネンム・ネーン。女帝はいつもの呪文使いって感じでクソ面白くないのでノーコメント。まあ要するにブレススピリチュアル・ウェポンホールド・パースンってことです。
 クオトアはオフェンス・ディフェンスともまあ脅威度1/4相応であるが、クオトア名物“粘着盾”があるため、潜在的な危険性は高い。予備の武器を用意するヒマがない作成直後のPCだったりすると、こいつ一つで完封されかねない。低い脅威度のために大量に出現しやすく、ネットの一斉投擲などいやらしい攻撃には事欠かない。上位種のクオトアの鞭打ちもピンサー・スタッフによる組みつきやベイン呪文など妨害を得意としつつも、恐るべきはhp65点という脅威度1にあるまじきタフガイ。脅威度の構成こそゴブリンと同じであるが、作りたてのPC相手にはちとマズかろう。ちなみに高司祭になるとホールド・パースンスピリチュアル・ウェポンの二大クソ呪文使いという途端につまらない奴に成り下がる(こればっかりや)。この露骨な効率優先の呪文セレクトには[電撃]ダメージ付与のセプターも台無し。
 困った奴がホブゴブリンで、AC18という非常に強固な防御と、“連携打撃”による追加ダメージ持ち。“連携打撃”の性質上、複数出現してくるのが普通なのがさらに困る。攻撃ボーナスは低いのでデザイナーはそれでバランスを取ったのかもしれないが、なんかAC高くて攻撃は当たりづらいが一発がある、って低レベルPCは一撃に怯えながら延々殴り続け、高レベルになってACが上がるとただただ邪魔っ気、とどう転んでもフラストレーションを溜めるだけのような……。最上位の戦王も芸無く“受け流し”でACを高めてくるのがいただけないそういうデザインをしてるから、慌てて秘術呪文使いにもAC狙いでなくセーヴを振らせるキャントリップをサプリで増やすハメになるのであるよ
 ドラウは基本個体と一個上の間がボコーンと空いているが、そもそもドラウ自体がほぼ全ての面において脅威度1/4という数値が嘘っぱちに思える能力なんで、PCが上級戦士と渡り合えるレベルになっても、普通ドラウも十分脅威になり得るだろう。本当にアレを脅威度1/4に設定した奴、誰? 多分「レンジャーこれじゃ弱くないですか」という意見を「弱くない」と突っぱねた奴と同一犯だな(と勝手に思っている)。余談ながら、ドラウの魔術師って野郎しかなれない落ちこぼれだったと記憶しているけど、女帝と1しか脅威度離れてないのが笑える。絶対女系社会を謳いながら、所詮管理してる女ドラウも落ちこぼれと大差ないカビの生えたもとい蜘蛛の巣の張った旧態依然体質か。
 バグベアはあんまり群れてるイメージが無いのだが、頭目のデータも存在している。ボス格がハマるとかっこわるい効果(恐怖とか麻痺とか)へのセーヴに有利があるため、豪快な殴り合いにはピッタリ。バグベアの基本脅威度が高い分、頭目の脅威度3に対して適切なパーティレベルを考えると多数の徒党を組んでの遭遇はやりづらいかもしれないが、肉弾戦ボスはこうあるべし、というデザインで好感が持てる。
 ギスヤンキは攻防に渡ってバランスが良く、特にセーヴが3種類に習熟と非常に優秀。戦法も上位種のギスヤンキの騎士とあまり変わらず、同じ感覚で扱えるだろう。ギスゼライもシールド呪文にややイラッとさせられるがまあ正統派の上位種って感じ。
 最近のD&Dスタッフの推しメンユアンティは、最下層のピュアブラッドから呪文抵抗を持っており、hpも高めでタフさは及第点ながら、攻撃面では複数回攻撃のみとちょっと脅威度1にしては物足りない。素直に殴りに行くよりは、激怒してるババリソなんかにポイズン・スプレーで一泡吹かせてみたい。マリズン、アボミネーションになると有毒の噛みつきやロングボウ、巻きつきで攻撃面がググッと強化される。オークが序盤~中盤なら、中盤以降の部族モデルケースとして使いたいなかなかの良構成。全員が全員呪文抵抗持ってるんで、スペルユーザPCのことを思うと普通ヘビとかパシリの他種族はいた方がいいだろう。
 遭遇の作りやすい種族は難易度や対応レベル帯も考えて、
◎オーク、ノール、リザードフォーク
○ゴブリン、ユアンティ、サフアグン、バグベア
 このあたりかと。基本個体と中堅の差がデカすぎる奴はDMGに従って脅威度の調整をして出すという手もあるが、やっぱ公式で提示された上位種データの方が、ユーザ個々のさじ加減よりは安心ですわな。そういうクリーチャー強化のテンプレートがあるなら兎も角。むしろこの手のPFでいうアドヴァンスド・テンプレートのルールの掲載は全てのTRPGに標準装備してほしいものだっぜ。

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