TRPGこぼれ話#276~TRPG冬の時代・自分史~

 寒い日暖かい日が入れ替わりにやってくる日々が続いておりますが、暖かい日はホント暖かくて上着なんて着てくるんじゃなかったと汗ばむほどだったりして、いよいよ冬も終わりだなー、と実感する今日この頃。
 して冬と言えば、TRPG関連ブログで連想するのは当然厳寒のロシアに飛んだ冒険者がラスプーチンをブッ殺しに行くPFシナリオ。違う。せめてネバーウィンター。などというむなしい一人ボケツッコミは置いといて、TRPG冬の時代
 TRPG冬の時代とは90年代後半に新作や商品展開が途絶えていた現象のこと。TRPG専門誌はバタバタ休刊が続き、他のメディアへの露出も皆無に、MTGという黒船来航ということもあって、当時の人々からすればそりゃ冬に見えたのは想像に難くない。
 まあ、何度も書いているようにオレはTRPGバブルを体験してない世代なので「は? TRPGに春なんてあったんすか?」などとやさぐれた反応を示すほかないのですが。時間を空けて分析してみると本当に冬だったのか疑わしい統計も出ているそうで。ただ、この話をすると業界人ぶりたがるアマチュア未満があった派・なかった派に分かれて個人の主観によるイチャモン・こじつけ、出典の怪しい情報の応酬、果ては特定企業や個人への攻撃に発展して、飛び蹴りやパイプ椅子が飛び交うルール無用の残虐ファイトと化すためとても冷静な論議なんてしてらんない。ので、今回は筆者の思い出話と個人的見解に留める。
 冬の時代を唱えた人の言うように、TRPGがメディアから消えた時代は、確かに筆者からすれば「ある」と思う。筆者がTRPGを始めたいと思った頃に筆者の周囲にTRPGを知ってる人間と遭遇する確率は、ワイルド・マジックで自分の周囲がファイアボールで焼かれるより稀だっただろう。流通も今と比べれば天と地の差、普通の漫画さえ書店に注文しても届かないことなんかザラ。リプレイはちょこちょこ見かけた気がするが、文庫版ソード・ワールドさえ新品で見かけたことは少なかった。遊ぼうにも人もいないし商品も手に入らないという八方塞がりだったのだな。
 TRPG関連雑誌の連鎖消滅を目の当たりにすることはなかったが、恐らく最後の生き残り組であるRPGマガジンの方針転換は「???」だった。買ったはいいがTRPG記事が数えるほど少なく、掲載されているのはガンダムとMTGと読者参加ゲームばっか。期待していたTRPGはどこにあるねん、と首を捻っていたら、それから2号ほどでRPGマガジンはゲームぎゃざに鞍替えしたという笑えないオチがついたのであった。
 幸いTRPGサークルに出会って、以後も機会に恵まれ今日まで続くTRPGジャンキーと化す(こうして見ると不幸だったかもしれない)のだが。あらためて「冬の時代」を振り返ってみると、ホントに「冬だったのかな?」と疑わしい部分はある。
 TRPGの関連誌消滅という話であるが、古本で手に入れたTRPG関連誌を読んでいると、ぶっちゃけTRPG浸透にそれほど貢献していたとは思えない。これは雑誌の質が悪かったという意味ではなく(ルナルの貞本先生のビジュアルイメージはすんばらごい)、TRPGという遊戯の質のモンダイであろう。一言ないしは一見で説明できないTRPGという存在のせいで、雑誌を読んでいても何をしてるのか門外漢が読んだらサッパリわからんかったであろうことは想像に難くない。脚本のようにセリフがずらずら並んで、時々状況説明とイラストが入って、一体これは何の雑誌なんだろう……? というのが、TRPG知識ゼロの人が読んだ場合の大半の感想ではなかろうか(初めてリプレイを読んだ時も同じような感想だった)。しかも、そんなリプレイが読み物の主体であるというのがよぐねえ。大概続き物で途中から読むとますます理解できないんだもの。
 漫画や小説は既に定着している娯楽であるし、TVゲームだって知らない人が見ても「なんか画面が綺麗でスゲエことをしてるんだな」という視覚情報に訴えることはできる(ゲーム雑誌も同様)。が、TRPGの根本は想像力であり、その抽象的な面白さを未体験の人達に伝達するには、まだまだ技術や方程式を確立するのに時間が足りな過ぎた。というか今でも確立されてないし。加えて、TRPGとは何であるか、という説明をTRPG専門誌で見た覚えも薄い。RPGマガジンでは初心者RPG講座を開いていたものの、TRPGの性質を考えると毎号の冒頭にでも掲載しておくのがベストのような気がする……ああっこんな娯楽がメジャーになるわけがないと唐突に理解してしまった。
 結局のところTRPG雑誌とはマニヤ雑誌に過ぎず、それが消えても業界的には痛手であったろうが、元々新規参入者を呼ぶための訴求力としてはそれほどでもなかったんじゃないのかなあ、というのが筆者の実感。
 TRPG出版点数の減少はコチラを見ると、確かに案外減った印象はない(99年の狭さが泣けるけど)。目に付くのはFEARのガンバリだろう。HJがMTGに舵を切り、SNEがモンコレに現を抜かしていた間にセブン=フォートレスAdやノバレボなど、現在まで続く商品ラインナップを生み出してTRPG供給を続けていた事実は、いくらFEARゲー嫌いでも(ゲヒャヒャヒャ)直視せねばなるまい。ちうかFEARぐらいしか新作を安定して出してくれる土壌が無かったから、FEARゲーマーという固定ファン層ができたとも言える。でも、本当に評価されるべきなのは、TRPGというへんちくりんなゲームを見捨てずずっと付き合ってくれるアスキーやエンターブレイン、ログインな気がする
 またFEARゲー一強だったと言っても、TRPGにおいては王道よりワンオフ、キワモノ商品寄りだったという事実は否定できない。天羅や番長学園!!、熱血専用などのロールプレイ支援システム系列の後継者であったから、当然と言えば当然であるが。メリケンならD&D、日本ならソード・ワールドのように、TRPGならコレ! というスタンダードが軽視された結果、マニヤ向け作品ばかりになって新規参入者の窓口が狭くなってしまった、というのがTRPG市場縮小の原因の一説にあったが、割と的を射ているのではないか。供給点数自体は減っていなくても、少々イビツであったことはFEAR育ちの人間としても認めるのにやぶさかではない。
 TCGやMMOなど他ジャンルの隆盛でTRPG層が食われたという説は根強いが、これもどうだろう。特に語調が強いのはTCG。前述の通りMTGにRPGマガジンが侵食されていったのを思うとnrhdと思わなくもないが。MMOやコンシューマ・ゲームとなると、やることは、やればわかるがTRPGと全然違う形態だから、食い合うというのは想像しづらい。TCGは非電源ゲームなのでまあ地続きと言えるから、まだわからんでもない……にしたってこれも全然違う遊びだからなあ。局所的にTRPGサークルがMTGサークルとなっていった、とは聞くものの。そういうプレイ機会が減らされた人たちの恨み節というのが本音のような。というか、筆者としてはTCGがTRPGを食ったというよりも、TRPGをサポートしていた企業が揃ってTCGに走ったのが真相で、業界人がTRPG冬の時代を唱えてるのを聞くと、それ以前にお前らが真っ先にTRPGを見限ったんじゃねーか! と喝を入れたいのが本心。そうやってTCGに走った末路がどうだったかというと、死体蹴りになるのであんまり責めたくはないのだけれど。……モンコレは言うに及ばず、HJはMTGと手を切り、そして回り回ってウィザーズにD&D翻訳打ち切りという物凄い不義理をカマされてるしなあ……。
 現在においては、TRPGの出版点数自体はバブル期とされる90年代をも超えているとされている。ただ、これをもってTRPGバブルが見せかけだったとか、TRPG冬の時代がコケオドシだったとかいうのもどうかなー、と思う。DTP技術の発達、アマザンなど商品流通の改善によって出版と供給のハードルが下がったこと、他サヴカルチャ盛り上がりの余波、ノウハウの再利用が可能になっただけで、他のメディアにまで出張できてた時代と比べたら数字としてはともかく、影響力としては遠く及ばないというのは揺るぎないのではなかろうか。SRSやサイコロフィクションのように共通のシステムでガワだけ変えて売る、というスタイルで点数を稼いでいるという側面もあるし。やっと再びニュースサイトで取り上げられたりする機会も増えてきたのはいいことだ。
 結論をまとめると、「冬の時代」とされる時期は確かにあったけど、それは業界内に限って騒がれていた話で、実態はそれほどのモンでもなかったというのが筆者の見解。なんかバブル景気を基準にして日本はダメになった、とブーブー言ってるのと同じ感覚を覚える。異常な時期を基準に「悪くなった」と言われたってこっちも困るんよ。同時に、当時を知らずデータだけで冬の時代はイカサマだったとか語られたらば今だって冬の時代を無かったことにできる程盛り上がってるわけじゃねーぞ、とは言っておきたい。むしろ出版点数やユーザが全盛期より増えたといっても、商品ラインナップを見てると供給側で世代交代や新人発掘、人材育成が上手くいってるのか不安になる方がオラァ心配だ。狭いながらに購買層は確保され、メソッドも確立されつつあるだけに、既存ファンの囲い込みに熱心になりベテランデザイナーが居座り続け、新しい芽を育てる余裕や機会に恵まれない。そういう意味で今はまた「冬の時代」に入りつつあるんじゃなかろうか。
 まあ、こんな心配こそ冒頭でディスったアマチュア未満のタワゴトであり、現行遊んでる人たちからすれば単なる大きなお世話だと思いますけど。スマン。俺もそんな懸念を語られたとしたら、「大きなお世話じゃ」と吐き捨てて終わる。TRPGを遊べる限りは春だろうと冬だろうと知ったことじゃねえやあ、元からTRPGで飯を食ってるわけじゃねえんだ、そんな栄枯盛衰とは無関係じゃあ、というのが本音だしな。恐らくPFとクトゥルフと欲を言えばD&Dの最新版を回し続けてるだけで、まともに言葉が喋れなくなるまで遊べる。

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