クトゥルフ神話TRPGヨタ話#73~クトゥルフセッションレポート『渇きの泉』・中編~

 やれうれしかな 仙人さまのつくりし泉
 網を投げりゃあ どっどどどうどう 鮒あがる
 食べれば病も魔も寄れず
 食わずば浄土への道はなし
 ハァーチル ウタウセ
 ハァーチル ウタウセ

 ―銀鮒に伝わる囃子歌。最後の文句は何らかの祝詞のようで、意味は不明―

 少年を追って走っていった先には、高い木々に覆われた開けた空間があった。
 そこには年ふりた山小屋がぽつん、と建っており、その前に一人の女性が薪を抱えて歩いてきたところだった。
内川「むっ、あれが幡さんのアトリエか」
KP「そういえば内川さんの特徴は6-10・好意を寄せられているでしたな。シナリオ中これ以上女性が出てくることはないし……いい機会だから、D100をどうぞ」
内川「それで好意の度合いが決まるんだったな……とりゃっ」
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KP「……えーと、女性は内川さんの顔を見て、ハッとして薪を取り落とした
吉良「きょうび希少なワカりやすい反応だなぁ」
 KPもびっくりだ。いやシナリオ展開としては好都合と言えば好都合だったのですが、世の中うまくできている。
穴木「ヘイヨーお嬢さんここが幡 斉市のアトリエなの? ドンツクドンツク」
吉良「気に入ったのかその踊り」
女性「えっ? えーと、それはそうですが……」
内川「実は幡さんにお聞きしなければならないことがあるのです。お会いしていただけないでしょうか……と誠実さをアピールしつつ」
KP「女性はうろたえてますな。なんか、幡さんがここにいるのを知られているのが、喜ばしくないような反応」
穴木「ん? 会いに行くとなんかマズイの?」
 そうしている間に小屋のドアが開くと、十歳前後の見目麗しい少年の顔が覗き、「上げてあげたらいいんじゃないですか、千代さん」と言う。
穴木「あ、あの泉にいた子だ」
 少年は三人を小屋の中に案内すると、自分は幡 斉市の息子の真人(まさひと)だと名乗る。
吉良「幡さんってもう六十過ぎだったよね? それで十歳というと……でも、そのぐらいで子供を作っててもあり得ないでもないか」
真人「申し訳ありませんが、父は体調がすぐれないものでして。お会いしても、お話もできないような容態なんです」
内川「はあ……それは個展を開いた後でしょうか」
真人「そうですね。今度の個展を楽しみにしていたのですが」
 殊更残念そうに真人は天を仰ぐ。
 千代がお茶を出すのに手間取っているようなので、吉良はその手伝いにキッチンに赴く。同時に穴木は助けるフリをして怪しいものを物色していた。千代が困っているのはカップの数が足りないせいであるが、彼女が探し出したのは二つがやっと。穴木の目にも、ここで使用されている食器は一人分のようだった
 難儀しながらも用意できたお茶を飲みながら、三人は真人から話を引き出そうとする。真人は生まれてからずっと銀鮒で父と共に育てられており、外の事情には明るくない、と言う。その割には、妙に超然とした物言いが目に付く
穴木「……ってことは、真人君学校は?」
真人「行っていません。父の蔵書がありますので、独学です」
内川「それは……義務教育を受けてないのはまずいんじゃないのかなあ」
真人「なにぶん、人里から離れた所ですし、生活も苦しいものですから」
吉良「お父上の具合が悪いなら、一度山を下りた方がいいんじゃないですかね」
真人「それが、父を動かすのもお医者様に来てもらうのも難しく、それに今度の個展で蓄えを使ってしまって……」
 個展の件と聞いて柳川の話を振ってみたりするのだが、真人は「詳しい話はわかりませんね」と動じない。そこで看護師の吉良が動く。
吉良「実はお父上の体調を一度見てほしいと頼まれて来たんです」
真人「へえ……もしかして、それは秋島さんが言ったんでしょうか?」
吉良「ええ、確か助手をしていると仰ってましたから」
 そこで初めて、真人は余計な事を、とでも言いたげな忌々しそうな表情をチラリと覗かせた。
真人「わかりました。では、二階へ。個室で寝ているんです」
吉良「じゃあ、様子を診てきましょう」
 看護師の吉良が来るとあれば、流石に真人は拒まなかった。
内川「もうちょっと詳しい事情を聞きたいな。千代さんもこちらの生まれなんでしょうか」
千代「え……はい、私ずっと銀から出たことはありませんわ」
穴木「え? 銀“”? ここって銀鮒じゃないの?」
千代「ええ。銀沼がこのあたりの地名なんですけど……」
 千代は銀鮒と呼んでいる方に違和感があるようで、どうも噛み合わない。それに所々で真人や幡に怯えている、というか遠慮しているような、前時代的な男性を立てた態度が目立つ。
 さて、二階に行った吉良。
 個室には施錠されており、真人が鍵を取り出してドアを開ける。その鍵は外から据え付けられたものだった。
吉良「ん? ってことは中から開けられないんじゃないの?」
KP「そうですね」
吉良「そうですねって真顔で言われても……」
 幡の部屋は書斎兼寝室という設えで、沢山の本棚を抜けた先に、書斎机の横のベッドで寝ている老人の姿があった。二人の入室に老人はピクリとも動かない。一応、目は開いたので意識はあるようなのだが。
真人「ご覧の通り、身動きひとつも取れないもので……僕と千代さんが二人で世話してるんです」
吉良「そういえば、秋島さんは? そういうお名前の助手がいると聞いていましたけれど」
真人「少し前にお暇を出したそうです。二人雇っておくほど余裕がなくなってきていましたし、秋島さんもお年でしたから」
吉良「ふーむ……まあ取りあえず診てみましょう。でも〈医学〉はないからなあ。〈応急手当〉でいいですか?」
KP「ざっと見るぐらいならそれで十分じゃないでしょうかね」
吉良「ここ暫く80以上の出目ばっかりで不安だけれど……おっ、よかった、成功した」
KP「あい。それでは、体力の低下は恐らく加齢による衰えが主要な原因ではないかと思います。相当皺が入っていたり、肌がカサついたりしてますね。麻痺の方は現段階ではちょっとわかりませんが、神経性のものとか、病気ではないようです」
吉良「外的な傷なんかはないんですね」
KP「外的な、と言えば舌に炎症があって話せないようです
吉良「外的な炎症……ってことは、焼かれたってことですか?」
KP「そうですね」
吉良「いやだからそうですねって真顔で言われても……」
 今の所命に別状はなさそう、ということは確認したが、どうも不可解な点は数多く残る。ことに、個展で柳川が急速に老化して死んだように、老いという現象には気にかかるところだ。
 部屋を出る前に、吉良は本棚に何か手掛かりがないかと目を通す。蔵書は外国語のものが多く内容の判別は難しかった(吉良「出目がさっきから80以上(以下略)」)が、ただ一冊、一目で見わけが付けられた本があった。分厚いギリシャ語の辞書は、間違いなくあの時秋島が持っていたのと同じものであった。

 吉良と真人が下りてくるまでに、千代は内川と穴木の東京の話に目を輝かせていた。聞く者すべてが新しく珍しく、何を言われても信じてしまいそうだが、穴木に「千代さんも東京に出てサイケな口紅を塗ったり流行りのオシャレをしましょうよー」と誘われると、途端に表情を暗くして口を閉ざしてしまう。自分の素性と銀鮒を出ることに関しては、禁句になっているらしい。
内川「そういえばこの山小屋って兼アトリエなんだよね。幡さんの絵ってあるんですか」
真人「はい、作業場にいくつかあります。作業場は今では僕が使っていますが」
穴木「へー、真人君も絵を描くんだ」
真人「と言っても、父からの手ほどきを受けた程度ですけれどね」
内川「では折角ですから見せてもらいましょうか」
穴木「私も、昔の作風は好きだったからねー」
内川「どうも、真人君と千代さんを一緒にしていると聞き出せる内容が限られそうだからな。こっちが案内してもらってる間に、千代さんにつっこんだ話をしてもらおう」
吉良「オッケー」
 通された作業場には、これまた退廃的かつ冒涜的な後期の絵が並んでいる。
内川「……正気度判定をしなくていいんでしょうか」
KP「あそこまでやばいやつは、個展の最新作だけなんで大丈夫です」
 イーゼルに架けられたキャンバスには絵の具が塗られたばかりで、大胆な筆遣いで黒色が走っていた。その筆さばきは、相当の腕前のものに見える。
穴木「これは真人君の? えー、これは一体何を描いてるのかな」
真人「はい。時を超えた永遠の存在の美しさ、偉大さ、素晴らしさです。父はそれを伝えることが使命と天啓を授かり、僕もまたそれを信じています
 そう語る真人の目には、異様な熱が宿っていた。
 当然だが二人は
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内川「……気を取り直して、過去の作品をもっと見てみたいんですが」
KP「未発表の作品や習作、スケッチが色々と出てきますね。ただ、中には絵の具の乾き具合や鉛筆のかすれから、どうも最近も最近描かれたんじゃないかと思えるものもあります
内川「ううむ。あの個展の最新作っていつ頃描かれたって書いてありましたっけ……って、俺は見に行ってねえんだ
KP「(鋭いなあ)穴木さんは前期の作品もちょくちょく見つけましたね」
穴木「この頃の絵が好きだったのになあ」
KP「で、目を引いたのが、古代の中国を思わせる人々が出航する様を描いた一枚。徐福伝説にまつわる作品ですな
 つまり、そういう連作なワケです。
内川「なんだか猛烈に嫌な予感がしてきたのだが……真人君、最初に出会った時泉にいたけれど、あれは何か知ってるのかな」
真人「はい、長命の水と聞いてます。あれを飲むと健康にいいんです」
穴木「思いっきり水銀みたいに見えたんだけど……」
内川「どうせだからあれについても聞いてみようか」
 というわけで、作業場から泉に移動。
 相も変わらず季節外れのトンボやチョウが飛び交う中で、静かに泉は白い光を湛えている。さざ波一つ立たない水面は、鏡の如く三人の顔を映している。
真人「この水を飲んでから、僕は病気にかかったことはありません。父もそれで永らえているんです」
内川「の……飲むんだ、この水を……」
穴木「その辺の雪を溶かして水滴を落としてみますけど」
KP「まるで金属の上に落したみたいに、滴は丸くなりますね。沈んだり混じったりするということがありません」
穴木「……やっぱマジモンの水銀じゃないのコレ」
KPうまそうに真人君は手ですくって飲んでますね
内川&穴木「( ´゚д゚`)エー」
真人「どうでしょう、お二人もいかがです?」
内川「いやー、その、胃腸が弱いんで……」
穴木「生水はおなかによくないしー」
 焦って拒否る二人に、ちょっと真人は考え込む。
KP「……あのー、穴木さんってAPPいくつでしたっけ?
穴木「ん? 9だけど」
内川「ちなみに俺は平均値の11だ」
KPじゃあいいか。真人君はそうですか、と特に気に留めた様子もない」
穴木「あんだぁこの小僧! ガキのくせに面食いか!?」
 そんな失礼な展開に穴木が立腹していると、ふと目に入ったものがある。あらためて泉の周囲を目にして気付いたのだが、泉を巡るように木の杭が打たれていたのだ。もっとも、五本打たれた杭はどれも一度抜かれたようで、傾いでいたり、中には横倒しになって土の上に転がっていたりするものまである。池の中にも二本の杭があるのだが、流石にこれには手が付いていない。また、杭と杭の間にはねじれた石が落ちているのだが、規則正しく編み込んだようなその形状は、人工物が石化したようだった
穴木「もしかして注連縄?」
KP「そうですね。注連縄が化石になったものと言えば近い。言うても起こり得ない現象ではないとして、年代的にも場所的にもあるのが不釣り合いではありますが」
内川「この杭と真人君は知ってるのかい?」
KP「さあ、と興味なさそうに答えながら、彼は石を蹴ったりしてます」
 その時、木々の間をさっと飛ぶ影が見えた。そいつが真黒なのは宵闇のせいではなく、ゴムのような質感の皮膚持つ四肢も、巨大なコウモリのような翼も、全てが黒一色に包まれている
内川「……真人君、あれは何だろうね」
KP「鳥じゃないんですか? と平気な顔をしている」
穴木「いや鳥じゃないだろ! 天狗じゃ、天狗の仕業じゃあ!」(錯乱気味ですが正気度ロールには二人とも成功した)
 一方吉良は千代と夕食の用意を進める。千代は内川に料理を振る舞えることで上機嫌であった。こんな山奥では食料の確保も難儀するようで質素なものだが、来客三人を除くと一人分しか作っていない。
吉良「真人君と幡さんの分はいいんですか?」
千代「旦那様の食事は、真人様がご用意なさっておりますので……真人様も、ご自分の分は不要と仰っています」
吉良「うーん……真人君に任せっきりで良くなるとは思えないんだけどなあ。やっぱり一度山を下りて、ちゃんとした検査を受けた方がいいと思いますよ、私の見た限りでは」
千代「でも、真人様に逆らうのは……それにここを離れるのも……」
吉良「千代さん、銀鮒から出たことが無いって言ってましたよね。ってことはここで雇われたんですか」
千代「えっ……ええ、そうなんです。銀沼にいたところを声を掛けられまして」
吉良「何かあのお二人とご縁が?」
千代「あの方々……真人様は、命の恩人なんです
 そう言った時の千代の顔は、一段と悲痛であった。

 帰ってきて一同揃ってから食事となるが、やはり真人はまったく食事に手を付けず、自分の分を用意することも無い。
KPでは父に食事を運んできますので、と真人は水筒を片手に二階に上がります」
穴木じゃ私もトイレに行ってきます
内川「なんでわざわざ言うんだよ!」
吉良「っていうかなんでこのタイミングで言うんだよ! 食事中なんだから気を使いなさいよ!」
穴木いやだなあウ○コと言わないだけいいじゃないですか
KPいけないよ女の子がそんな下品な事を平気で言うようになっちゃっちゃあ! お兄さん泣いちゃうよっ!
穴木「KPは女の子に幻想を持ち過ぎですよ!」
 そんなどうでもいいやり取りは、当然尾行の合図。こっそりと二階に上がった真人の後に続く。
穴木「ふふふ、スニークミッション担当の〈忍び歩き〉を見せてあげましょう。80%もあるんだから当然成功」
KP「おお見事な足運び、っていうか本業以外の技能の方が全体的に優秀なような」
穴木「扉の隙間から覗こうと思うんですけど、見えます?」
KP「鍵は外からしか掛からんですしね、覗けてよいです。真人君は水筒の中の水を少量寝たきりの老人に飲ませているところですが……〈聞き耳〉をどうぞ」
穴木「うっ、そこは技能ポイントを振ってない……流石に失敗」
KP「詳しい内容は聞き取れませんが、どうも剣呑な響きがありましたね。で、それが終わると真人君は引き返してきます。水を与える以外、何もしていませんな」
穴木「よし、それなら〈隠れる〉! 華麗に天井に張り付きます
KP「おお見事なジャンプ、って貴方〈跳躍〉にポイント振ってませんやん!(その結果が恐るべき切れ味の蹴り) まあ演出は自由なんでええですけれど」
穴木「では真人君が消えてから〈鍵開け〉に挑戦。ふっふっふ、こんな時のためにローグ系技能を網羅してきたのです……ボキィ! えー、出目が99なんでまた後でにしますね
 戻ってきた真人は、三人に「申し訳ありませんが、寝具が足りないので床で寝てもらうことになります」とことわりつつ寝る部屋を伝える。千代に寝床の用意と食後の片付けを任せる(結局、何を口にすることもなかった)と、自分は作業場で絵を描くことにする。「ではごゆっくり」と真人が姿を消したところで、鳩首会議再開。
吉良「どーにもこーにも確証が取れてないね」
内川「いくら怪しいと言っても、俺たちオカルト体験が無い一般人だからな。これだけじゃあ動けん」
吉良「それに、千代さんが銀沼銀沼言ってたのが気になって、スマホで調べてみたんですけど……銀沼っていうのは銀鮒の昔の地名らしいんですよ
穴木「昔ってどのくらい?」
吉良「江戸時代説もあれば戦国時代説もあり、一番古いのだと平安時代までさかのぼれるのもあるとか
内川「うーむ……今までの事象を考えると嫌な符号だが」
穴木「となれば、やっぱりもう一度幡さんの個室に踏み込むしかない! ごゆっくりと言われたんだから、遠慮なく鍵をゆっくり開けさせてもらいますよ!」
吉良「医学知識がいるかもしれないから、私もついていこう」
内川「千代さんにも、隠していることはなんとか聞き出したいな」
吉良「そういう事は、若いお二人だけでどうぞ」
穴木「ええそれはもう、愛し合ってるお二人にお任せします」
内川君ら大して変わらんだろう。っていうか一人は年下だろう(吉良24歳、内川23歳、穴木19歳)
 追加の薪を割りに行っている千代の手伝いに、内川が外に出る。
 斧を振るいながら、内川は東京の話を続け、千代はそれにいちいち大袈裟に頷く。外の世界の話は何よりも心騒ぐ話題なのだ。
内川「なんなら、千代さんも東京に行きませんか。私が案内しますよ」
千代「え……でも、私はここを離れるわけには……」
内川「ここは押し時! 目を見ながら、貴方のような人が山の中で一生を終えてはいけません、と訴えます」
KP「ベタ惚れの相手だからなー、その言葉にはかなり心を動かされますが……幡と真人を置いてはいけない、真人は命の恩人だから、と吉良さんにも言ったことを呟きますね」
内川「命の危険が伴うようなことがあったんですか?」
 あからさまに千代は動揺しながら、
千代「えっ……え、ええ、W川に流されてしまったことがありまして、その折に」
内川「あの少年が泳いで助けたんですか……体格が違い過ぎるような……」
千代「いっいえっ! 流れ着いていたところを、見つけてもらったんです! 発見が遅かったなら、危ないところだったと……」
 〈心理学〉の必要もなく、口からの出任せを言っているとワカる内容で、口にした端からボロが出てくる。
内川「千代さん、幡さんは危険な容態だそうです。それに、この山小屋から出ないというのも、真人君の成長にもよくはないでしょうし、もちろん貴方にも。何か、止むを得ない事情があるなら、話していただけませんか……と、真剣に告げます。……まあ、〈説得〉ロールは失敗してるんですけど
KP「OH……でも真剣な様子に、もうひと押しってところまでは来てますよ。ただ、そんな話をしている間にも、例の無貌の黒い影が小屋の周囲を飛んでいるようですね」
内川「あのー、千代さん、あれはご存知でしょうか」
千代「あれ? ……物の怪の類でしょうかねえ
内川「動じない人だなぁ」
KP「怪現象に対してあまり抵抗を抱いていないというか、科学的なものの考えに欠けてるようですな」
 一方、個室への侵入を試みる穴木&吉良の巨女コンビ。
穴木「よし今度こそ〈鍵開け〉成功。そーっと踏み込んでいきましょう」
吉良「幡さんの様子は?」
KP「やっぱり、目だけ動かせるだけですね。でも、貴方達の侵入を拒む様子はなさそう」
吉良「聞こえていたなら、こう言います。私たちは、秋島さんに頼まれて、貴方の様子を見に来たんです。私たちの質問に、はいならまばたきを一回、いいえなら二回して下さい
※この手法、リプレイでも使われていたのと同じ。定番でもこういう手口がスパッと出てくるところは流石。
KP「まばたきを一回します」
吉良「よし、ちゃんと伝わってるな……しかし、薬の類はないんですよね」
KP「例の水筒から移した水があるだけですね」
吉良「あれを飲みたいですか?」
KP「まばたきを二回」
吉良「むむ? でも、柳川さんの最期を思うに、あれを飲まないと命に関わるのでは」
KP「まばたきを一回」
吉良「……では、このまま静かに息を引き取りたい?
KP「まばたきを一回」
吉良「ううむ、詳しい事情が知りたいんだけど、質問はYES NOで答えられるものでなくてはならないのだった」
KP「アトゥム神方式ですからね」
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吉良「……では、秋島さんの姿が見えないんですが、お暇を出したとか」
KP「まばたきを二回」
吉良「え? じゃ今もこの小屋にいる?
KP「まばたきを一回」
吉良「真人君のウソがこれで裏付けられたな……でもどこにいるんだろう。では、千代さんは貴方の後に、この銀鮒で声を掛けられて雇われたと聞きましたが」
KP「少し考えてから、またばきを二回」
吉良「ええ? じゃ千代さんもウソをついてたってこと?」
 その間に、穴木は怪しげなものが無いか部屋を物色していた。
穴木「妙な蔵書が色々あると言ってましたよね。〈目星〉は失敗しちゃったから、仕方ない、手当たり次第に懐に入れていきます」
吉良「私もそれに助言を……って、出目が01で大成功
KP「そりゃ凄い、ふと覗き込んだベッドの下に、ハンカチのような布が敷かれているのに気付きました。布には何かの模様が描かれていて、ピンで留めてありますね」
穴木「それやっ。外して暖炉に投げ込んじゃれ」
KP「では、穴木さんが布を引っ張って剥がすと、グリッと老人の首が回って、呻き声を上げますね
穴木&吉良「うわっ!? 急に動いた!」
 まるで呪縛が解けたように老人は苦しそうに身じろぎし、断続的に喉を鳴らし続ける。
吉良「動けるようになったらしいけど、これじゃ話を聞くのはなぁ……そうだ、書斎なんだから書き物ぐらいはあるでしょう」
KP「うむ。老人の指差す机の先には、鉛筆とメモが転がっています」
吉良「では、それを渡して筆談をしてもらいましょう……貴方がこうなったのは一体何故?」
老人の筆記ミズヲノマサレタ
吉良「柳川さんもそうだったということですか」
老人の筆記「ソウダ」
穴木「真人君の仕業だよね、絶対」
吉良「あの、真人君って一体何者なんですか? 貴方のお子様だと聞いてますが」
老人の筆記ハンセイイチ
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吉良「じゃ、じゃあ貴方は一体……」
老人の筆記アキシマ
穴木「うわあ、なんか薄々想像していたことがどんどん現実になっていく……そうだ、それじゃ千代さんは何処から来たの?
老人の筆記イズミカラウカンデキタ
穴木「うわわわあ:(;゙゚'ω゚'): これ、もう小屋から出るとか出ないとかそれ以前の問題になってきた
吉良「秋島さん、この事態は放置できないと思います。何とか、これを収拾する手掛かりのようなものは知りませんか?」
老人の筆記「ホンダナノシリョウ ギリシャゴノシャホン」
穴木「私が懐に入れた本の中にありますね。ギリシャ語の辞書もあることだし、ここから調べるか……」
 話し終えると、幡 斉市あらため秋島は静かに目を閉じる。彼の肌にも、柳川に起きたのと同じ老化が始まってきていた。二人は手を合わせると、そっと部屋を出ていく。
内川「薪割りが終わって帰ってきましたけど……どうだった?」
穴木「いやどうだったもこうも、急いだ方がいいです。とんでもないことになってきました」
KP「そこに真人君が顔を出します」
穴木「うわー本を隠して隠して!」
真人「僕はそろそろ寝ますので、お先に失礼しますね。皆さんもお休みなさい」
 そう言いながらも浮かべた笑いは十歳児のそれではなく、年経た邪悪な老人特有の、禍々しいいやらしさがあった
 逃げるようにしてあてがわれた部屋へ千代さんを連れて飛び込むと、穴木と二人は秋島から聞き出した、切迫した真相を伝える。
KP「千代さんは口を手で覆って、真っ青になっています」
内川「千代さん、そろそろ本当のことを話していただけないでしょうか。これは放置しておけない、とてつもない問題を孕んでいるようです。泉から浮かんできたというのは、どういうことです?」
 想いを寄せている内川に真剣に問われて、千代はポツリポツリと語り始めた。
千代「……私にもわからないんです。かつて私は、あの泉に生贄として沈められ……気付いたら泉の脇で寝ていて、斉市様と秋島さんが目の前にいらしたんです」
吉良「生贄……って、沈められたのは一体いつなんでしょう」
千代「正確にはわかりませんが……ずっと前のことのようです。その頃は、あの泉もただの水で、銀沼の人達は、何とかして言い伝えにあるような効力を甦らせようと、私を生贄に選んだのです」
穴木「あの水って一体なんなんですかね。飲むとどうなるんです?」
千代あの水を飲んでから、斉市様のお姿が見えなくなり、真人様が現れたんです
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一同「うわあ……ってことはやっぱりあの子供が斉市なのかぁ……」
千代「でも、秋島さんも水を与えられたようですが、逆に年老いていったようでした」
穴木「一度飲んだら飲み続けないといけないってワケかね」
吉良「柳川さんに比べて、秋島さんの老化はかなり調節されてたみたいだけど」
内川恐らく、量によって速度を変えられるんだろうな。秋島さんは少量ずつ飲まされていたんで、老人のままだったんだろう(ズバリ正解)」
穴木「にしても、なんで千代さんは浮かんできたんだろう……」
吉良「若返る……というか時間を逆行させるような効力があるから、その影響かな」
内川「そんなお伽話のようなこと……と言いたいけど、この現象を突き合わせると、そうとしか言いようがないんだよなあ、ここまで来てしまうと」
KP「ですよねぇ。そんな恐ろしい考えに行き着いてしまった、超常現象にまだまだウブい貴方達には正気度判定を差し上げましょう
一同「ヒィイ……やっぱりそうなるのか……」
KP「千代さんはその辺の事情を隠しておく代わりに、一連の真人、というか斉市のやっていた事を黙っているように命じられていたそうです。これまで見せてきた控え目さも、女性の地位が低かった時代の名残ですね。でも、素性を知られてしまったからには、全てを正直に話すハラを括りましたな」
吉良「千代さんは、あの泉について何か知りませんか?」
千代「私の時代では、こんな言い伝えがありましたが……」
 彼女が語った逸話は、旅館や元マタギの昔話の原型ともいうべきものだった。
 飢えや病に苦しむ村人に相談され、仙人は泉を作りだした。
 その泉の水を飲んだ村人は長命になり、飢えや病、老いを知らない体となった。
 しかしある時泉の水を汚した者が現れたために泉は干上がり、水を飲めなくなった村人は、皆骨になってしまった。
 仙人の作った水が銀色であったことから、ここは“銀沼”と呼ばれるようになったという。
穴木「この、“汚した”っていうのがポイントなんでしょうね。でも、あの泉、水を落としても弾かれたんですけど」
内川「ってことは、不純物を落とすとか流すとか、化学的な行為じゃないんじゃないかなぁ」
吉良「そこは、持ってきた蔵書を調べるしかなさそうだね」
 顔を突き合わせて相談する探索者たち、その様を窓の外から見ているものがあった。
 巨大な翼と鉤状の尾を持つ顔無き飛来者は、木々の上からじいっと四人のいる部屋を見つめていた。やがてそいつは、羽根を打って飛び立つと、ぐるりと回って真人の寝室へと向かった。

(つづく)

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