クトゥルフ神話TRPGヨタ話#72~クトゥルフセッションレポート『渇きの泉』・前編~

 R&Rに掲載されているクトゥルフのリプレイは面白いんですがシナリオとして書き起こされない場合が多いこれはひじょうにもったいない。こんなに面白い話なんだから、自分でやってみたいのになあ。オレ好みのマイナー神格をよく取り上げてくれるし。
 そんな思いを、『クトゥルフと帝国』リプレイから自らの手でシナリオ化し、さらに『クトゥルフ2015』発売に合わせて現代ナイズ、そして自分好み&前々回レポートと関連付けて連作っぽくして遊んでみましたのが今回

 渇きの泉

BBAスキー(以下B):というわけでございまして、コレを導入しないと眼鏡っ子探索者を遊べないという村の噂の『クトゥルフ2015』を今回導入しようと思うのですよ。
モンクスキー(以下モ):私はそれを聞いて購入を決めました。ウソだけど。
メガネスキー(以下メ):セッションに使うと聞いて三件本屋回ったんだけどどこにも置いてなかったのよな。
B:仮面ライダーAmazonだとTRPG部門ベストセラー1位だったから、あながちバカ売れで品切れ続出というのもあり得ない話ではありませぬな(本当)。
姉スキー(以下姉):で、『2015』って使うとどう変わるの?
B:うむ、探索者の出自がインスマスだったり邪神の落とし子だったりする様を見てガハハと笑うゲームになります
:どう考えてもデメリットじゃねえかよ。あとそんなサプリベストセラーになんねえよ(なるかも)。
B:神話的ジョークはおいといて、『2015』では新しい職業が増えたほか、技能ポイントがEDU依存から、職業によってはSTRやCONなどその他の能力値も反映されるようになりました。また、“探索者の特徴”といってパーソナリティと同時に職業とは別の特典を得られるようになっています。これは後に眼鏡っ子事変と呼ばれる変革いうことですな(力説)。
:じゃ、せっかくだから新しい職業を選ぶとしよう。今回芸術系のシナリオだったと聞いておるが。なら芸術家の中から……キャラクターシートのアイコンになっているダンサーにするかね。
どう見ても穿弓腿だよなコレ。絶対浮いたまんま永久になるよ(byコフ'99)
:ストリートファイターの元の逆瀧にも見えるな。
senkyu.jpg gekirou.jpg
もっぱら超能力が無い方が強いと言われていた時代。逆瀧は見た目の割に対空としては心許ないが、オリコンと足払いスカシで活躍する奥深い技だった。この話題が通じる時点でプレイグループの年代がバレるって? うるさいよ!
B:職業技能は〈回避〉に〈目星〉、ボーナスで〈芸術(ダンス)〉はいいとして〈回避〉に+10%ってなんじゃこの見た目の割に実用一点張りな充実ぶりは
:医療系がいると聞いたから、医師よりは新しく追加された看護師を選ぼうっと。う、〈目星〉が職業技能にある代わりに〈医学〉がねえ。〈医学〉までは補助員では至らないということか。
:俺は公安関係を埋めるかな。警察官って『2015』だと変わるの?
B:職業技能は変わらないけど、技能ポイントでEDU×20点かEDU×10+STR×10のどっちかを選べますね。
:俺どっちも13だから変わらないんだけど……。
B:(・3・)アルェー まあ、制服を着ているか警察手帳を見せると〈信用〉〈説得〉+20%がありますので。実はシナリオが始まるとすぐ別所に移るんですけんど
:別の所轄で警察手帳って通じるのか?
:普通に越権になるんじゃねえの?
B:まあ、その辺難しいことを言ってるとクトゥルフはやってられないのであんまり気にしないことにしましょうや。ほんで、能力値が決まったら“探索者の特徴”を振っていきましょう。
:D6とD10を振るんだったな……3-7だな。
B:そ、そりは〈回避〉の基本がDEX×5%になる「俊敏」のキーナンバーでは……マンチ御用達の特徴をパツイチで引き当てるとは
一同:TUEEEEE!
:我は5-4・ペットだから、最愛のペットがいてシナリオとシナリオの間一緒に触れあうと1D3ポイント正気度が回復する……精神科医の治療並のペットってすげえな
B:なにそれつよい
:あのさー、俺ただでさえSIZが6ゾロだったのに1-2・「大きな体」でSIZ+1なんだけど……
一同:人類の限界値超えちゃった……:(;゙゚’ω゚’):
B:そういえば特徴って2つまで持っていいと書いてあったな……こんだけ面白いならもう1つ決めてもいいですじょ。
:俺の2つ目は……6-10・好意を寄せられている
B:シナリオに登場する誰かに好意を持たれる? KP裁量で誰がなぜ好きかは決定、その度合いはD100ロール……これ、有利な特典なんですかねえ(フラグ)。

 そんな期待通りのゆかいキャラメイクを経て作成されたのが以下の死をも恐れないが正気度を20%以上1時間以内に減らすのはカンベンして欲しいサヴェイジファングな探索者たち。

●穴木 信長子(あなき のぶながこ)
 通称アナーキー。通称通り芸能分野はボディペインティング、ただし自分に描くのではなく体を使って踊りながら筆を振るったり、身体に絵の具を塗って体当たりしてできた模様で芸術表現をする、ニューウェーブでアヴァンギャルドでパンク魂溢れる女子大生。反逆児だけに〈鍵開け〉や〈隠れる〉などローグ技能にも長ける。あと歴史に興味がるのでこの名前らしい……流石に芸名ですよ…ね……。
 STRはやや低めと思いきや、人類の限界値に迫るSIZ17のために得たダメージ・ボーナス+1D4を
kapoera.jpg
 と組み合わせて恐るべき蹴りを放つ。というか〈芸術(ダンス)〉より〈キック〉と〈武道(カポエイラ)〉の方が得意あ……あいつダンサーじゃねぇ!!
 特徴は3-8・信頼のおける人物と5-4・ペット。

○内川 修一(うちかわ しゅういち)
 通称ウッチー。新卒一年目のニューフェイス警官。びみょうに遵法精神に欠けるところはあるがフレッシュなナイスガイ。
 たったの15%技能ポイントを振り込むだけで80%になる恐るべき身のこなしを誇るが、〈キック〉並みの基本ダメージを持つ〈武道(柔道)〉による投げ飛ばしも脅威のワザマエ。穴木とは逆に〈追跡〉〈ナビゲート〉といった追い詰める技能担当。
 特徴は3-7・俊敏と6-10・好意を寄せられている。

●吉良 星子(きら しょうこ)
 通称きらりん。にょわー
 デカァァァァァいッ説明不要!!
 人類の限界値に迫るどころか突破する巨女。ガタイがいいどころか巨人症の域に達しているせいか、心臓に負担がかかり非常に虚弱(CON6)。でもなんの〈武道〉の心得もないのに素殴りで1D3+1D6点のにょわー(物理)が飛んでいく
 彼女を見た人間はこう呟かざるを得ない、「人間でダメージ・ボーナス+1D6って行けるんだ……」
 ……非常に優れた〈応急手当〉〈薬学〉の腕前であるし、怖い話がつきものの病院勤めの常として〈オカルト〉にも強い、ちゃんと看護師の仕事はしているモヨフ。
 特徴は1-2・大きな体と2-6・アウトドア派。

 ご覧の通り、三人全員がダメージ・ボーナス(しかも一人は+1D6)、二人が〈武道〉所持者といういまだかつて見たことのない、恐ろしいほどの武闘派メンツです。しかもSIZが最も低いのが13の内川だったり……これだって平均的な数値で決して小さいわけではないんですが。これはクトゥルフの未知の領域を体験するセッションになるのではないか……っていうか物理攻撃で何とかならないシステムで、マトモに運行するのかコレという不安もあるのですが、さて(フラグその2)。

 2015年の冬、新宿三越にて画家・幡 斉市(はん せいいち)の個展が開催されていた。
 幡はかつて若手の画家として注目を集めた男で、中国の神仙やジークフリード、八尾比丘尼など、不老・不死をテーマにした独特の作風と玄妙な筆遣いが特徴であった。そのモチーフの大元は日中戦争時中国に渡っていた父からもたらされたものであり、生涯通して追及すべきものと常々語っていた。
 しかし現在で幡は既に忘れ去られた画家になっていた。
 神経質な芸術家にありがちな高慢な性格は画壇や画商と数々のトラブルを巻き起こし、さらに次第に暗く抽象的になっていった画風の変化に世間の評価も付いていけず、1990年代末を最後に、その名が上がることがなかった。
 それがほぼ15年ぶりの三越での個展、それも敏腕画商の柳川 喜毅(やながわ よしき)が開催しているとあって、久々に幡の作品に人々が集まることとなった。
 ただ、その個展には何かの曰くがありそうであった。個人的に柳川と交友のあった内川の元に、乱れた筆跡で奇怪な嘆願が書かれていたのだ。個展は私の意志で開いたんではないんだ。助けてくれ、このままでは幡に……。どうやら、一度柳川にあって直接問い質す必要がありそうだ。
 また看護師の吉良は、幡の助手と名乗る人物と些細な縁があった。苦しんでいる老人を助けた吉良は、医療職に勤めていることを伝えると、その老人は秋島と名乗り、「自分は画家の先生の助手をしているのだが、どうも最近先生の具合がおかしい。もしかすると先生のこともお願いすることもあるかもしれない」と告げていった。重そうなギリシャ語の辞書を抱えて老人は去っていき、その連絡先も定かではないが、雇い主の画家がくだんの幡であった。果たしてどんな画家であるか、その一端を知るために、まずはニュースになった個展を訪れることを考える。
 そして穴木はかつての幡の画風を好んでいたが、暗く沈んでいった後期の画風の変化を残念に思い、同じパフォーマーとして一言ガツンと言ってやらねばならない芸風がかぶってるしという理由で個展に足を運んだ。

 内川が柳川への面会を求めている間に、穴木が現れる。
穴木「あれ内川さんじゃん。YoYoこんな所でなにやってんの? チェケラッチョウ」
内川「君そんな方向性のダンサーだったんだ……いや、ちょっと主催の柳川さんと知り合いで話を聞きに来て」
吉良そこに中腰になって自動ドアをくぐってきます。立っていくと頭をつかえるんで」
KP「SIZ19だから、そりゃ普通サイズのドアじゃ頭ぶつけるよなぁ……空鬼とかムーン・ビースト並ですよ
 三人は新宿飲み仲間という設定。穴木は未成年なんだがまあそれはそれ。内川さんもいんだよ細けぇことはと言ってるし……ん? 警官がこれでいいのかな。
 呼び出しを内川が待っている間、穴木は絵を見て回り、せっかくだからと吉良も同行する。何かを察してか、内川は返事があるまで自由にしてていいですよというコメントにも「いや俺は待ってます」と断言した。実際それは正しかったのだが
 公開されている幡の絵は暗かった後期に輪をかけて暗く、描かれている作品も
・テーブル上の石に峻険な山、禍々しい空模様……『センティネル丘』
・ねじくれた灰色の樹木と作物のはびこる不健康な農場……『ガードナー農場』
・半魚人が海に向かって両手を広げ、祭礼を捧げる様……『夜刀浦』
・虹色の泡の集合体……『すべてにしてひとつのもの』
 といった、明らかに三越で展示するのは不釣り合いと言うか、社会風紀的にどうなのコレという内容であった(『 』内は作品タイトル。元ネタがワカった方はよりそのまずさが理解できるでしょう)。
 極めつけは最新作。干からびた老人が雑巾のようにねじくれ、絞り上げられ、悲痛と苦悶の叫びを上げている絵だった。闇の如き黒の中で目をきつく閉じ、裂けんばかりに口を開いたその姿は嫌悪感と戦慄を覚えさせながらも、何故か目を逸らすことができない、異様な写実性とこの世のものならざる迫力によって、その場に来客を釘付けにしていた。
KP「というわけで正気度を見ていたお二人は1点正気度を減らして下さい」
穴木&吉良「正気度判定もナシかい! てかそんなものを飾るな公共の場に!」
※リプレイでも正気度判定なく1点減らされていました。
 ややあって、内川の所に受付が「個人的に会いたいそうです」とやや慌てた様子で伝えに来た。何やら急いで通すように伝えられたようだ。休憩室へと通されたところに、「じゃあ失礼します」と穴木は堂々とついていき、吉良もなんとなく同行する。KPもいいのかと思ったが、内川を通して人が出払ってるのでまあいいか、となんとなく了承する。
 休憩室では、柳川が一人椅子の上で震えていた。内川の知る柳川は恰幅が良く豪放な人物で、気が大きくなることも多いが愛すべき人柄だった。それが今では何かに怯えるようにビクビクし、目元に落ちた暗い影が、げっそりとやつれた顔立ちにいっそうの疲労の色を加えている
内川「あのう、柳川さん? 相談があると仰っていたので……」
柳川「おお、内川君、来てくれたか! 実は……」
 内川(と、穴木のこんちゃーすという気安い挨拶)に柳川は席を蹴るようにして立ったが、その拍子に手から水筒が抜け落ちた。
 転がった水筒から、中に入った液体が零れたのだが、それはさながら水銀のような輝きと性質を持ち、床の上を転がって滑っていく。水筒からそんなものが落ちただけでも( ゚ω゚)なのに、柳川は血相を変えて床に飛びつき、なんとか手でかき集めようとし、それでも指から滑り落ちるものには直接唇をつけて吸おうとする
 あまりにも常軌を逸した行動に、内川は柳川を押さえつけ、穴木が〈精神分析〉で落ち着かせようと試みる。
穴木「えーとりあえず落ち着いてください……(出目を見て)やっぱりこの判定値ではねぇ」
 ……ちなみにこの時、〈心理学〉〈精神分析〉といったクトゥルフにおいて便利な技能全般に、マトモな判定値を持っている人がいないのにはじめて気付いたりする……。
 さておき。
 〈精神分析〉の間に転がった水銀らしき液体金属に穴木の服の袖が触れたのだが、その箇所は漂白されたように白くなり、カチカチに硬く変質していた
穴木「うわなんじゃこりゃ!? 水銀飲んでるだけでも大問題なのにコレ水銀じゃねえ!?」
 そして水銀から引き離された柳川は、狂ったように叫ぶ。
柳川「あ、あれを、あれを飲まないと私は……!」
 異変は、見る見るうちに進行していった。
 柳川の肌が病的な茶色に変わり、色つやが失われてカラカラに干からびていく。唇がめくれ上がって歯茎が露出し、眼窩が落ちくぼむのと同時に眼球が飛び出し、剥きだしになっていく。ひび割れだらけになった唇がかさかさと震え、空気の漏れるような音で、柳川はこう漏らした。
柳川「幡だ、幡の奴が水を……!」
 そのまま、柳川の体はくしゃりとくずおれた。さながら、老化現象とミイラ化を高速で再生したように、柳川は酷暑の砂漠で発見されたような乾燥死体に成り果てていた。
KP「当然ですが正気度チェックを4649。失敗すると1D6減ります」
吉良「いきなり一時的狂気圏内かい! ウギャアー失敗したぁ!」
 吉良の悲鳴を聞きつけたのを皮切りに、三越に救急車やパトカーが駆けつける大騒動となった。

 検死の結果であるが、一切毒物は検出されなかった。一見すると渇死のようであるが、死因はあくまでも老衰であり、死体の乾燥はそれから時間が経過した結果、であるらしい。無論、まるで数十年が過ぎたような乾燥であったわけだが……。
 例の液体金属は水筒には一滴も残っておらず、床に零れたものも穴木の服に付着したためか発見できない。穴木が服ごと提供して調べてもらうも、「水銀に近い性質のようだが、どうもそれだけではないらしい」という頼りない識別結果に終わる。
 ともかく柳川の死に無関係ということで解放された三人は行きつけの新宿の居酒屋で杯を交わす。
穴木「いやー酷い目に遭いましたねえ。あ、生大もうひとつ」
内川「君未成年じゃなかったっけ。まあいいか」
吉良「いいのか」
穴木「どうせ飲酒も18からOKって法令改正されるじゃないですか」
吉良いやアレ延期されたはずだよ! それはともかく、一体何だったろうね、あの死に様は」
内川「ああ、それに関しては個展を開いていた幡っていう画家が、何かを柳川さんにしていたとか、そんな手紙を受け取ってるんだが……」
穴木実は柳川さんの懐に妙な手紙があったんですけど
吉良なんか〈精神分析〉中にゴソゴソやってると思ったらそんなことを……ってか勝手に持ち出してたのか」
内川「元気があっていいことだ」
吉良「いいのか」
 手紙の内容は幡が柳川に一方的に個展の開催を要求しているもので、成功した画商に対して落ちぶれた画家が取るような態度ではない、超上から目線であった。これで何故柳川が開く気になったのか、さっぱり理解できない。
 手紙に記載されている住所はG県K市S郡K村(このレポートと同じ地域)大字銀鮒となっていた。
 吉良がG○○gleで検索すると、自動車なら国道12X号線から県道34X号線を抜け、電車なら特急R号よりA駅でW線に乗り換え、H駅からは徒歩で向かうことになる、W川と荒神山(あらかみさん)の間の地域であった。その地域一帯は銅山採掘と養蚕で一時は栄えていたが、閉山と生糸の需要減少で寂れていき、現在は一級河川W川での渓流釣りのスポットとなっている。
 ただ、現在は市町村合併が進んで、K市K町銀鮒に改められたはずであった
 幡も既に60を超えて老人の域に入っているから、つい間違えたのかも……と少々首をひねりながらも、まずは会って話を聞いてみねばならないと、内川は銀鮒に向かうことにする。幡本人は個展に来ておらず、自身のアトリエから絵だけを柳川に預けていったのだった。吉良は秋島に頼まれていた縁もあり、一度様子を見てみようと同行。穴木も個展に来てないと知って今度こそ幡本人にカツを入れてやるけんのう、と乗り込むハラであった。

 自動車で銀鮒までは辿り着いたのだが、住所を見せるとかなりの山の中、人里離れた僻地に構えられたアトリエであるという。車は旅館に停めさせてもらい(G県民は自動車が無いと死んぢゃう病に罹っており、どこでも駐車場所は事欠かないのである)、三人はワー○マンで山歩き用の道具を揃える。
吉良「そういえば私はアウトドア派なのだった。こういう時こそ私の素養が活かされる時!」
KP「おお山ガール! そういえばラブライブにもそんな女子がいましたな」
内川「車を停めさせてもらってるから、飯ぐらいは旅館で食っていこうか」
穴木「銀鮒って言うからにはフナ料理が名物だったりするんですか?」
KP「ありますよお客さん! ヘイ銀鮒名物一丁!」
 差し出されたのは、マブナの甘露煮。
一同「…………(気まずい空気)」
内川「……なんていうか……普通だな
穴木「いやちゃうねん、せっかく鮒なんだから焼くとかなんとか。なんだろうこのガッカリ感
KP「あいや待たれい、料理としては普通なんですけど、その器が一味違うんですよ
 店員さんに言われてみると、甘露煮が入っているのは金属製の器。甘露煮を食べていくと、底に書かれた五角形の印が見えてくる仕組みになっている。
吉良「なんか気になる印だなぁ。これ、なんか由来とかあるんですか?」
KP「そう言われると、店員さんはこんな話をしてくれますな」
 昔々、銀鮒が銀鮒と呼ばれていなかった頃。
 日照りが続いて作物が取れず、人々は飢えと病に苦しんでいた。
 そんな時、漁師が鏡のように輝く泉を見つけた。泉には鮒が沢山住んでおり、その鮒を食べた村人は寿命が延び、病を知らない体になった。
 だが、泉は本来仙人のものだったのだ。勝手に鮒を食べた村人は仙人の怒りを買い、全員沈められてしまった。
 以後、この地は“銀鮒”と呼ばれるようになったという。
内川「……ってことはこの鮒を食べるとまずいのか」
店員「そこは大丈夫。五角形は仙人の印で、銀鮒を食べる時の厄除けなんです。この印があれば仙人の許しを得ているので、食べても怒られないという寸法ですな」
吉良「これって金属製らしいけど、なんか変わった材質とか使ってるの?」
KP「いや、ごく普通の。腐食とかの対策のようですな」
穴木「……つまりそこらの土産物屋で売ってる工芸品だよね
店員「Exactly(そのとおりでございます)。というわけでお一つどうでしょう
内川「商売上手だなあ。そう言われたら、四個一セットで買うとしようか」
穴木「銅山とか養蚕が廃れてそういう方面で活路を見出すしかないんじゃないかな」
吉良「世知辛い話よな」
店員「いやあ、なかなかここまで来るお客さんは最近珍しくなってしまいましてねえ。色々大変ですよ」
内川「そういえば、柳川さんって人は来てませんでしたかね? 知り合いなんですが」
店員「……ああ、そんな方がいらしてましたねぇ。一、二ヶ月前から頻繁に訪れてましたよ」
 柳川の足跡の証言は掴めたが、幡を里で見た人間については皆無。そんな山中に画家が住んでいると知っている人間自体がいないようであった。ただ、元マタギの老人が「その辺で妙に愛想の悪い爺がいた」という目撃情報が。
 食事を済ませてから元マタギに道案内をしてもらいつつ、三人は山の中を進んでいく。場所によっては険しい道もあり、日中に出たにも関わらず、かなりの時間が経過していた。道すがら、銀鮒にまつわる昔話が元マタギの口から出る。大筋は店員さんに教えてもらったのと同じだが、結末が「怒った仙人が鮒を取れなくした」という、ちょっと変わったものだった。どうも、何らかの原型があったのが、人や場所によって変化していったらしい。
 元マタギは別の集落に用があるので、途中で別れることに。
元マタギ「じゃあ、わしはあっちに行くからな。あんた方はこのまままっすぐ行けばその小屋に着くはずだ。なんかあったら呼びに来てくれるとええ……と言っても、こっちに来るまでも1時間はかかるがな」
穴木「それってつまり何かあってもそう簡単に助けを呼べないってことですよね」
元マタギゲーム的に言うと〈ナビゲート〉判定が必要になるぐらいだ
吉良「ちなみにこの辺ってスマホは通じそう?」
KP「なんかつながりにくいっすね。場合によっては通話は難しいかも」
吉良「だよねえ……」
 一抹の不安を抱えながらも、進む一同。
 確かに踏み固められた道の上を歩いているという安心感はあるものの、寒さは次第に増していき、白いものまでチラついてきた。
穴木「うわ急ぎましょう! 雪の中のキャンプなんてイヤー!」
 慌てて速度を上げ、早くも薄く積もり始めた雪の上を、サクサクと音を立てて走り抜けていく三人。その周囲に、場違いなものが飛び交っていることに気付いた。既に日が落ちて薄闇となり、それも雪が降る寒さだというのに、アゲハチョウやトンボが羽ばたいている。彼らはその先にある泉を中心として回っているように見えた。そして、泉は薄暗い山中を、水面が放つ薄く白い光で照らしているのだ
 泉の側には少年のような小柄な人影がしゃがみ込み、水筒で水をすくっていた。
内川「こんな所に少年が? それに泉の水を汲んでるのか?」
穴木「ヘーイそこの少年ナニやってんの? ドンツクドンツク」
吉良「君そんな方向性のダンサーだったんだ……」
 その声に少年は顔を上げ、驚いた表情を作る。顔立ちの整った、美少年と言ってよい容姿である。
 彼はぱっと身を翻すと、泉の外周を回り、たちまち山の奥へと消えていく。
吉良「そりゃあんな声かけられたら逃げるけどさ」
内川「とは言え話の一つも聞かなきゃ始まらん! 〈追跡〉で追いかけるぞ!」
穴木「おう! と言いつつも技能ポイント振ってないんで失敗ですが」
吉良「っていうかさっきから十の位が80以上しか出てないんだけど」
 内川の正確な方向指示がなければ、木の薄くなった場所に出て空を飛ぶものを見ていたかもしれない。
 木々の間より、彼らの背後に向けて飛び立ったそれは鳥にしては大き過ぎ、なんとなく人型を連想させる体にコウモリのような翼、ねじくれた角、鉤状になった尻尾を持っていたが、何よりも怪異なのは、貌のあるべき場所がつるんとして、目鼻や口はおろかまったく凹凸のないことであった
 そして、少年が去った後あらためて目を向けると、泉に湛えられたその水は銀色に輝き、鏡の如く周囲の光景を映し出していた。それはまるで水銀のようだった

(つづく)

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