D&D5e余話#101~101回目だからこそ言いたいこともあるのだ~

 2015年、最も大きなヨロコビを与えてくれたTRPGといえば、これは5eをおいて他にあるまい
 コアルールブック三冊揃い踏みから今日に至るまで、実に楽しく遊ばせてもらっているし、他のプレイヤーからも評判はおおむね上々である。D&Dの新版としては十分成功したと言っていい手応えであろう。本格的なキャンペーンを早く始めてみたい。
 が、同時に2015年、最も大きな怒りを覚えたTRPGといえば、また5eであることも告白せねばなるまい。
 怒りの主原因はパック・タクティクス……ではない。あれもかなり腹が立ったが。キャラクター・クラスによって脅威度を算出されているようなNPCデータについてだ特にウィザード、クレリックのような呪文発動クラスに基づく場合
 DMGを見ればワカる通り、今回PCの脅威度というのはかなり低くなった。脅威度1のクリーチャーとの戦闘が1レベルキャラクター4人ぶんに対する「普通」の遭遇となると、逆算すれば1レベルキャラクターの脅威度は1/4前後となる
※追記。コメントのご指摘にもあったように、1レベルパーティ同士が戦った場合、全滅の可能性が50%なのだから、これはちょっと低過ぎ。DMGの遭遇枠の作り方に従うと50XPのクリーチャーが4体で200点、4体なんで2倍にして400点。「危険」な遭遇ではあるが、「危険」ピッタリでは全滅の可能性はそこまで高くない。もうちょっと色が付くべきか。訂正しておきます。
 これは相応であるような気もするし、そうでないような気もする。1レベルのPCがゴブリン1体(脅威度1/4)と戦うのと、1レベルPC1人と戦うのが同じ難易度の遭遇とは思えない。確かに直接の戦闘力では劣っていても、ゴブリンのニンブル・エスケイプはそれらの差を補って余りある危険性になりうる。が、それでもPC一人分の強さには及ぶまい。特に、呪文発動クラスは肉弾戦に劣る分、使えば劇的に戦局を変えられる呪文(スリープなど)を使えるだけに、その疲弊や彼我の距離など、脅威度は状況次第で大きく変わると言ってよい。
 まあ、こんな風に考えたところで、PCはクリーチャーと違って次の戦闘を想定しなければならないのだから、持ち得るリソースをその戦闘で全投入するわけにはいかない。ペース配分を考えると「普通」~「困難」XP閾値あたりが妥当かな、と思えるが、それでもリソースを投入した場合の強さの振れ幅が大きいから、やはり単純に割り出せるものではないだろう。キャラクター・クラスのレベルから算出される脅威度とは、D&Dに限らずデリケートな問題と言える(PFのNPC Codexでは、1レベルウィザードには種々のポーションやスクロール、1レベルファイターにはブレストプレートを装備させるなどマシマシで脅威度1/2相当)。

 ……にも関わらず、公式シナリオでは「単純に割り出した」ような脅威度に従ったレベルのNPCが、PCのレベルの低いうちからドカドカ登場している。その好例は前回のEncountersに登場したオレイオス6レベルのスペルキャスターでそれでいて脅威度2(経験点450点)。まあこいつは問題外というか1レベルPCに出したシナリオライターは市中引き回しの上牛裂きの刑その後墓石破壊のガトリングコンビネーションに処されるべきなので置いといて、別セッションで出会った某公式シナリオより引っ張ってきたというNPCも酷かった。7レベルのエルドリッチ・ナイトで、脅威度3。戦い方次第で納得できる脅威度だったかもしれないが、その戦法はミスティ・ステップで斬り込んで後方のACの低いPCを散々いたぶった後、前衛が追い付いてくると、呪文スロットは全部メイジ・アーマーに回して、それが尽きるまで延々金属鎧相手にショッキング・グラスプ(2d8[電撃]ダメージ)と武器攻撃を繰り返すだけというただただ効率を重視したお寒い戦法。事前に同じ脅威度のディスプレイサー・ビーストと戦って納得の強さであることを実感しただけに、この脅威度の不当表示感はいっそう強かった。いやこういう輩どもはハッキリと脅威度詐欺呼ばわりされるべきだろう。
 これが純粋な前衛クラスならまだ詐欺とまではいかなかったかもしれない。武器攻撃に頼る分、PCを上回る肉弾戦闘力を持つクリーチャーはザラにいるんだから、そこまで理不尽さは覚えまい。しかし、揃いも揃って出てくるNPCが呪文発動クラスというのがまたハラが立つ。ペース配分を気にせずリソース全投入できる(しかも回復しづらい呪文スロットを、な)敵NPCを、PCと同様にキャラクター・レベルから脅威度を算出するというのはちょっと考えればおかしいとワカるだろうに。一発で戦局を動かせる故に使いどころを考えさせられる呪文スロットを、敵であることをいいことにバンバン使いまくられるというのは心象としても良くない。というか物凄く悪い。また5eでは4レベルから先に至るのに急激に必要な経験点が上がる(3レベル呪文スロットを得るには6500点必要)。そうやって長い長い下積みを経て使えるようになるはずの上のレベルの呪文スロットを、それがNPCだとこっちのレベルが低いうちからポンポン使ってくるというのもまた印象悪い
 その上5eにはクリーチャー識別というシステムがないもんだから、次から次へと繰り出される呪文への対処法が無い。あったとしたら、せいぜいディスペル・マジックカウンター・スペルぐらいのもんか? 呪文ひとつひとつの呪文でなければできないちょっとした反則技、凶器攻撃ぶりが、NPCだからと後先考えず使いまくられることで、より際立って理不尽に思えてくる。クリーチャーでも反則技級の能力は色々あるけど、それはクリーチャー独自のもので、しかも個性や背景に合っているからこそ「アリかな」とプレイヤーを納得させる説得力になるのであるよ(だからどいつもこいつもパック・タクティクスを持たせるのには個性ではなく効率ばかりが先だって見える)。かつ、クリーチャーはデータ・ブロック形式で表記されてるから、そんなに沢山やばい能力を列挙しづらいしな、スペース的な問題で
 何よりも、こんだけ好き放題やられて経験点は4人で割ったらたったの100点ポッチだったりするのだから、これは脅威度詐欺以外のなにもんでもない。レベルが変われば違う印象になるよとフォローしてくれる人もいるかもしれない、その心遣いは嬉しいのであるが、筆者が出会ったのってみーんな1レベル~3レベルの間なのよね。無理のきかない期間に立て続けにムチャを味わわせるシナリオだったワケさ。

バリエーションが多岐に渡るPCに対処するためには、呪文のような手段も必要なのだ
 とデザイナーは言うかもしれない。それは正しい。が、あんだけ多様なクリーチャーを掲載してるモンスター・マニュアルの執筆者にケンカ売ってんのか。個性溢れるクリーチャーがD&Dの魅力のひとつなのだから、そちらを優先して登場させていった方がよりユーザを楽しませられるような気がするのだが。また、多様な戦術で変化を付けるならまだいいが、呪文の選択がどいつもこいつも似たりよったりなラインナップなのがまたつまらない。秘術呪文なら必ずと言っていいほどメイジ・アーマー(鎧を着られるならシールド)、マジック・ミサイルディスペル・マジックカウンター・スペルが並ぶ。物理攻撃を当てさせない、セーヴをさせない、呪文を唱えさせないの見事な3ない運動ぶりである(これがクレリックになるとスピリチュアル・ウェポンホールド・パースンになる)。プレイヤーを封殺させる戦い方が歓迎されないっていうのは、カウンターがの特権でそれでさえあんだけ嫌われてるのを、同じ社内のMtGを見て学習してないんだろうか。その上護衛が大抵ただ殴るだけのチンピラか、パック・タクティクスを持つチンピラばっかりというのがまたつまらなさに拍車をかける。
 前衛クラスならまだいいかも、と言いはしたが、実は前衛クラスに基づいたNPCデータも結構怪しい。あんだけ呪文発動クラスは気合を入れて効率最優先の割に、ファイター準拠と思われる脅威度5という難敵のデータはというとただ堅いだけ、ただ殴るだけで、特殊能力は追加アクションにhpが0になったら一時的hp20点で次のターンまで死なないぐらいのもん、という実に簡素な輩だったりしてよくわからない。ファイター準拠ならバトルマスターで戦術とか色々変化のつけようがありそうなもんだが(てか、エルドリッチ・ナイトのこだわりようはどこに行ったんだよ)。むしろこれだけ堅い奴を殴り続けた挙句「特殊能力で死にませーん」と言われたプレイヤーのゲンナリ顔が浮かぶようで、単純な上にやる気を削ぐ、手抜き以上に悪いんじゃねえかコレ。「俺はそう簡単には死なんぞー」とか吼えられても、「どうせクリーチャー識別できないんだから、知るかよ」と吐き捨てられて終わりそう。
 ちゅうかDMの負担を減らすためにクリーチャーを4eから引き継ぐブロック形式で管理するようにしてるのに、またもPHBの参照回数を増やす呪文メインにしてどうするよ。呪文を使うクリーチャーも少数存在してはいるが、少数であるのはそういう意図であると筆者は読み取ったのだが。それに呪文を使うクリーチャーでも、戦法や個性と噛み合っているから面白い遭遇になるもんだ。例えば以前紹介したフレイムスカルは肉弾戦闘力が極めて低いため、飛行移動速度を活かした爆撃戦法を主体とする。これに対し、いかに散開しつつhpを削り取るかが腕の見せ所。が、前述のエルドリッチ・ナイトなんかはただ殴りつけてくるだけなので、工夫もへったくれもない、ただd20を振って高い出目が出るまで耐える戦闘になっていた(なんか4e発売直後に同じような事言ってた気が……)。

 色々文句を言ってきたが、EncountersのシナリオもDM陣がテストプレイの結果「だめだこりゃ」ないかりや的評価を下してだいぶ手心を加えているそうであるし、3e時代からモンテ先生やスキップ先生、コーデル先生のシナリオの評判を聞くに、元からアメ公のシナリオなんてそんなもんかもしれない。それに、NPCクラス以外でも有利を持っているとクソみたいな追加ダメージ+パック・タクティクスのドラゴンクローとか、アンブッシュ・ドレイクとか面白みもなんもない、「ただ強いだけ」の追加モンスターを見ていると、これは5eというシステムの問題ではなく、ただ単にシナリオライターの腕前とセンスの有無であるような気もする。
 呪文を使うなと言ってるように取られたら困るけど、もうちょっと注意深くNPC、特にスペルキャスターのデータは扱うべきだ、とはデザイナー諸氏に言いたい。実プレイにおける上記のような問題もあるし、公式自らルールを逆手に取ったようなやり口は悪しき前例を作ることになる公式がやってるからって非常に便利なエクスキューズになるからな(「いや公式はもっと酷いんですよ」という言い訳をよく聞くが、どん底と比べてもそれは水位が上だってだけで、決して持ち上がることにはならんのですよ!)。そして何のためにモンスター・マニュアルの参照性と実用性に優れたデータ・ブロックを作ったんだか、って話である。でもこれからの5eの展開によってはバンバンPHBやDMGにまたがって参照させるようになるかもしれないから、そうなったらこっちが間違ってましたすいませんと謝るしかないのであるが。
 でもなんかこのままだと、勇躍5eに初参加したプレイヤーが、出会い頭のスリープで何もしないまま眠って、クリティカル・ヒットで即死して、ゲーム始まってから振ったd20がイニシアチブで終了、なんてことにもなりかねないからねえ。

Dungeon Master's Guide (D&D Core Rulebook)(2014/11/18)
Wizards RPG Team

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No title

いつも楽しく見させていただいております。

>脅威度1のクリーチャーとの戦闘が1レベルキャラクター4人ぶんに対する「普通」の遭遇となると、逆算すれば1レベルキャラクターの脅威度は1/4前後となる。

その計算は違うのではないかと。
それだと1レベルキャラクター4人の遭遇脅威度は1になってしまい、一行が無傷の状態で普通の遭遇を1回したら全滅の可能性が約50%となり、全滅し易すぎの勘定に思います。
考えるに、脅威度1の強さは1レベルPC1人分くらいで、適正な遭遇をした際にPCが勝つ確率は95%超えくらいを公式は想定してるんじゃないかと。

No title

ご指摘ありがとうございます。追記しておきました。
キャラクター・クラスはレベルや特殊能力によって変わり過ぎるところがあるんで、一定の基準で脅威度やXPを算出するのは難しく、色々な意見があると思います。
確かに脅威度1/4相当というのは計算が甘かった。それに、敵の場合はリソースを全投入してくるものと考えるのだから、実際の脅威度はもっと高くなるべきでしょう。
体感だと、1レベルPC1人でリソース全投入すると脅威度1とまではいかないけど、脅威度1/2というには強めかな、って感じですかなあ。
公式のNPC脅威度算出法のようけワカらん法則も聞いてみたい。
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