TRPGこぼれ話#243~TRPGにこそ試遊サービスを作るべきである!?~
アナログゲームショップのプレイスペースの一角で試遊サービスを見かけることがある。店員さんにお願いすると、店内の商品を直々に開示してくれ、場合によっては一緒に遊んで体験することも可能。そんな光景を目にしている。購買者からするとこれは大変ありがたきしあわせ。アナログゲーム全般はひとつひとつでルールも感触も全然違うし、ここ最近のアイデア勝負な新作群を見ていると、買って箱を開けてルールを読んで遊んで内容を把握して評価を下すまでの流れがかなり長い。故にパッケージや解説だけで購入を決意するのはなかなか度胸がいる。その点、実際に遊べるこのサービスはなるほど近道直行垂直落下式ブレーンバスター的説得力を持つ判断材料となる。
ホメちぎってはいるが筆者は利用したことはない。買うのがたいがいどうしようもないバカゲーで、初対面の店員さんと遊んで盛り上がれるかが果てしなく疑問であるからだ。ただでさえ身内で遊んでも気まずい空気になることがあるのに。気が弱いんで忙しそうな店員さんに時間を取らせるのは悪いなあ、という引け目も感じてしまうし。
この試遊サービスはボードゲームやカードゲームの利用が多いようだが、実はTRPGこそこのような事前リサーチが必要なのではないかとふと思った。
購入から評価を下すまでの時間が長いのはTRPGも同様。いやむしろTRPGの方が人を集め、スケジュールを調整し、会場を手配するなどの諸条件を考えるとこちらの方が長いとも言える。さらにTRPGはやってみなけりゃワカらないところが他種のゲームに比して極めて大きい。どんなに優れたシステムでも、卓の嗜好に合致せねばガッカリ扱いであるし(まあいいシステムは概して高評価を貰えるものですが)、ちょっとアレでも好みにマッチすれば受け容れてもらえちゃうなんてことは往々にしてあり得る。内容を知らずして、いや内容を知っていても一人の判断力で買うのはリスクが極めて大きい商品である。しかもルールブック一冊は安くない。買ったはいいがサークルの評判がイマイチで本棚に眠ることになったルールブックが一冊二冊で済まないのは、TRPGユーザなら等しく通った道だろう(涙)。前情報が少ない段階で踏み切らねばならないTRPG購入は、それ自体がかなりの出たとこ勝負行為だ。
筆者もここ最近、ミズテンでルールブックを買ったことは殆どない。一度遊んでみるか、ゲーム内容を把握できるまで情報を集めてから購入に踏み切るようにしている。表紙買いで失敗するのはエロ同人誌だけで十分学んだしな。例外はメタリックガーディアン。あの表紙の一発でどんなゲームか把握できる訴求力はスゴいからな。
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どんなゲームかデザイナーが何をやりたいか一目でワカる
少しでもこのハードルを下げ、スムーズに購入につなげるためにはあの試遊サービスがピッタリだと思うのだが。と、いっても客の要望に応えてバババッと店内からプレイヤーとGMが飛び出し、即座にセッションを開催してくれるとかムチャな贅沢を望んでいるわけではない。試遊というのは誤解を与えそうでいかんな。貸出の方が適切か。実際に遊べなくとも、ルールブックを読んで、キャラクターや簡単なシナリオを作るぐらいまででいい。それだけでも実際に触れてシステムを知るぶん、徒手空拳やサッと見よりはずっと明確に購買を考慮できるだろう。勿論プレイスペースとルールブック一冊を短くない時間利用するのであるから、タダではない。料金は1時間毎に500円、ワンドリンク付きとかでどうだろうか。ゆっくり座って未プレイのルールブックやサプリメントを確認できるなら、そのぐらい払ってもいいかなあ。サンプルキャラクターとソロプレイ用のシナリオを用意しておく、というのも手だな。スペースを取ったサークルにルールブックを貸し出すサービスをやっている所はあるが、これをもっと短時間で手軽に実行できるようにしたいワケです。
もちろん、ルールブックは貸出専用の一冊があり、必ずプレイスペースに入る時に渡して出る時に返してもらう。新品を誰もがいくらでも見られるというと不注意や無思慮による汚損で次々に売り物にならなくなる恐れがあるし、何より万引き被害に遭う怖れがあるから。ただでさえ書籍の万引きは大ダメージなのに、高額書籍のTRPGなら一大事でっせ(しかしTRPGも返本できるものなんだろうか? HJが関わってたD&Dは違ったらしいが)。
こうなると求められるのはプレイスペースのカフェ化であるが、プレイスペースは平日ならともかく、土日は物凄い勢いで埋まってしまう。とても一人の人間に提供する余裕はないだろう。試遊専用のスペースができるぐらいの広さを設けるのも必要な第一歩だ。
新作が発表されたり、未知のルールブックを目にする毎に、これは買うべきかなあ、どうかなあ、とウンウン唸りながら、こんな取るに足らないことを色々考えているのです。