D&D5e余話#78~さわりのさわり・チャンピオン~
で、そんなビギナーのために4eにスレイヤーが用意されていたように、初心者にも安心、本当にただ殴るだけのクラスとして、ファイターの“武勇の道”にチャンピオンが存在している。レベルが上がってもエルドリッチ・ナイトのように突如呪文を併用したりとか、バトルマスターのように戦術の取得や卓越ダイスのやりくりに頭を悩ませたり、とかはない。増えると言ったら戦闘スタイルぐらいのもんで、ひたすらに打撃を重ねていくクラス。まさに古典主義な清く正しいファイターである。ベーシック・ルールでもこの道が使用されているのも納得。
……ただ、筆者はこのチャンピオンにかなりシブい評価を今まで下してきた。
シンプルなのは大変結構であるが、あまりにも単純過ぎて、果たして2レベル以降魑魅魍魎と化していく他クラスと比べ、本当に打撃いっぽんで食っていけるのか、かなーり不安だ。なんせ3レベルで取れるのが“クリティカル強化”だけ。クリティカル領域に手が出るのはこれ以外殆ど存在しないものの、やはり地味な感は拭えない。また7レベルで得られる特徴も“卓越した運動選手”とこれまた微妙。戦闘以外で活躍の幅が増えるのは結構だが、7レベルまで耐えてこれはなあ、って感じだ。こういうもんは出来れば3レベルか5レベルぐらいにしてほしかった……(付記。これもバードの“なんでも屋”同様、イニシアチブに習熟ボーナスの半分を乗せられるレアな特徴ではある)。
しかし“クリティカル強化”はマジモンの稀有な存在、本当にこれ以外でクリティカル領域を広げられる能力はそうそう出てこない。10%の確率で界王拳二倍とはなかなかトキがムネめくものがある。また5eのクリティカルは「クリティカル・ヒット」、発生=自動命中(Q&Aより)。19振っても当たんない敵ってまず出てこない、むしろ出てきたら詰みだと思うが、それはそれとして覚えておいて損はない。15レベルではこれが15%に広がる。
チャンピオンが生きる道はこの“クリティカル強化”しかない、っていうか他にクラス特徴が無きに等しい路線故、これを最大級に活かすビルドを心掛けたい。で、“クリティカル強化”を活かす手っ取り早い方法は手数を増やす事。なんで1レベル時の戦闘スタイルは二刀流でほぼキマリだろう。ファイターはボーナス・アクションを使う機会が“底力”ぐらいなので、戦闘中はたいがい二回攻撃を気にせず行える。故に“怒涛のアクション”は序盤だとポーションを飲みながら斬りつける、など補助的な動作に収まりがち。攻撃回数が増えてから真価を発揮することになる。
またファイターは他クラスと比べて能力値増加のチャンスが多いので、特技での増強の幅が広い。《重装鎧の熟達者/Heavy Armor Master》は確定枠として、《二刀の振るい手/Dual Wielder》も【筋力】の上昇より優先してしまっていいと思う。“クリティカル強化”で生きる都合上、堅実な固定値1点の上昇よりはクリティカル・ヒットの大物食いを狙った方がコンセプトに合致している。
少々変化球になるが、《長柄武器の名人/Polearm Master》でも手数は増える。間合いに入ってきた敵を殴れるのを思えば、実質二刀流以上に攻撃の機会は多くなるだろう。戦闘スタイルを“二刀流”にこだわらなくてもよくなる。個人的には《重装鎧の熟達者/Heavy Armor Master》を取るまでは、《長柄武器の名人/Polearm Master》なら盾+クォータースタッフの安全路線を推奨。
手数を増やす以外に揃えたいのが、有利など振るd20を増やす手段。しかし、悲しいことにチャンピオンは搦め手が不得手故、自力で達成するのは無理な相談。これも特技で補填することになる。まあなんだ、黙って《幸運/Lucky》を取ればいいんじゃないだろうか。《戦術熟練者/Martial Adept》でフェイント攻撃を取るという手もある。この場合、小休憩ごとに使用回数は回復し、ダメージに1d6を足せるが1回きり。有利や不利を得るワケではないから、有利にさらにダイスを積める(はず)《幸運/Lucky》の方が特権ぽくて爆発力を期待できるか。
バーバリアンをマルチクラスで取得、2レベルまで成長させれば“無謀な攻撃”で手軽に有利を取れるようになる。しかしバーバリアンの特徴(“激怒”、“鎧わぬ守り”)とファイターの利点(重装鎧の習熟、防御術スタイル)は潰し合う事が多く、本当にお前3eやPFでマルチクラスの友だった仲か? と問い質したくなる。そうする場合は、最初から長期計画を立てた上でのビルドをしなければならないだろう。むしろバーバリアンが3レベルまでファイターを伸ばして(以下略)。“無謀な攻撃”に“直感回避”まで付いてくると思えば悪くはない選択肢だと思うが。
10レベルになった時の戦闘スタイルは、1レベルで二刀流を選んでいたら防御術以外に取るべきものはない。これでACも盾を持ったのと同等。攻守ともにこれでほぼ完成となる。
初心者向けと言いつつ二刀流主体と正統ファイターからはちょい外れた気がするけど、チャンピオンが戦い抜くあしたのためにその1は大体筆者的にはこんな感じ。筆者がチャンピオンに低い評価を下したのは、“クリティカル強化”が主体=出目勝負=自分の出目ほど信用できないものはないという情けない理由なので、実際に試してみたら印象も変わるかもしれない。でもプレイヤーの機会も限られておるし、長期のキャンペーンにチャンピオンで参加し続ける忍耐力にも自信が持てないので、やっぱ他の人の報告の方に期待しようと思います。情けない情けない。