THE SHOW MUST GO ON
![]() | THE SHOW MUST GO ON【初回生産限定盤】 (2014/10/08) 筋肉少女帯 商品詳細を見る |
このショーは女房質に入れてでも見にいかなあきまへんで!
という意味ではないらしいよこのタイトル!
ホントは「ショーは続けねばならない」(投げ出してはならない)という格言だそうで。よくこんな英語力で5eの原語版買ったな!
いやぁ予約してたアキバのタワレコに行ったら一位にランクインされてて驚いた。やっぱりみんな待ち望んでいたよね!
そして聞いてみてまた驚いた。
今回のアルバム、言うなればオーケン大旋風が吹き荒れてます。
なんか、サウンドにズガーンと打ちのめされるよりも、妙にしんみりとして感じ入ってしまう曲が多かった。こういう攻め方は卑怯だぞ!
それというのも、いつも以上に大槻さんのテイストが表に出ているからじゃないでしょうか。筋少のアルバムを聞いてるというよりは、のほほん学校の弾き語りのイメージ。時々アヴァンギャルド、時々のほほん、時々しんみりのオーケンワールドの支配力を見せつけられた気分。
そもそも『月に一度の天使(前編)(後編)』&『愛の賛歌』の三部作の時点でこのアルバム、勝ったも同然でしょう。娘を離婚相手に引き取られちゃったおじさんロッカーの、月に一度の娘との邂逅なんて、アラフィフでなおもラウドロックの第一線で戦い続けてる人以外に書けませんて。お父さんの押しつけがましくて、でも一途なところを見てるとつい『香菜、頭をよくしてあげよう』の語り手を思い出して、彼のアフターストーリーじゃないかな? とか勝手に想像してます。そして間に入ってる『愛の賛歌』の強烈さ。いきなりオーケンが「あなた~の燃える手で~……」と歌い出した時は、鷹の爪団の吉田の夢の歌かと思った。思わずその場違いっぷりに笑ってしまったけれど、『月に一度の天使』のおじさんロッカーが、小さなハコで歌っているかと思うと、なんか胸にクるんですよねぇ。それにオーケンの絶唱に超演奏が合わさって、聞けば聞くほどジーンと来てしまう。
また、歌い方という点でも今回は大槻さんにやられた感がある。『愛の賛歌』にせよ、『ゾロ目』にせよ、哀感を込めた歌唱が物凄くイイ。沁み入るような歌い方というか。これまた、伊達に橘高さんに「特撮で相当修行した」と言わしめていない。もしかしたら俺の中で最もググッと来たヴォーカルだったかも。
歌詞の猟奇路線という点でもビビらされた。大量殺人者というテーマでは特撮の『殺神』でもやっているが、それとは別方向のオドロオドロしさ、猟奇的な歌詞が『ムツオさん』にて発揮されている。21世紀に『ムツオさん』というタイトルのセンスも凄い。それハードロックバンドのつけるタイトルじゃない。内田さん作曲のあやしのプログレが重なると、なんというか激しいナゴム魂ないしは空バカ魂を感じる。『ニルヴァナ』の“バンギャ”“檀家”どっちも21世紀のロックバンドの言葉選びじゃねぇ! 釈迦を通り越して涅槃まで行っちゃったよ。
筋少のハードロック成分と言えばももクロのカヴァー、『労働賛歌』も忘れちゃいけねぇ。ご本人たちも自虐していたけど、50に手が届く、おいちゃんは50に達した、そんな人たちが全力で演奏しながら叫ぶ「労働のプライドを今こそ歌おうぜ! 全員で叫べば勝てるかもしれないぜ!」という言葉には、鬼気迫る壮絶さ凄絶さが宿っている。『ワインライダー・フォーエバー』以来のフルメンバーラップからの「働こう! 働こう!」の流れを聞いて、労働意欲を掻き立てられない人間、いないでしょう! あまりの違和感の無さに、「時間のねじれが発生して本来は筋少が先で、ももくろがこれをカヴァーしてしまったのではないか」と錯覚してしまうぐらい。これは21世紀の『労働者M』だ(テイストは『ヨギナクサレ』だけど)。
そしてそして、今回もおいちゃん曲にまんまとハマってしまったー。『気もそぞろ』、これが私の選ぶベストの一曲。ライブの後の一抹の寂しさを、『オーディエンス・イズ・ゴッド』『みんなの歌』と対比させる“感謝”を交えて歌ってみせる、まさに閉幕にふさわしい一曲(ラスト曲じゃありませんが!)。「子供の頃の誕生会」というフレーズから、ハッピーバースデートゥーユーを織り込むというアイデア、いや脱帽。「気もそぞろなのさ、照れ隠しじゃないか……」の転調には、確実に胸を詰まらせる何かがある。いかにも「おいちゃんだなぁ」「オーケンだなぁ」「筋少だなぁ」この全てを一度に味わえる、万感の名曲でした。本当に、次のショーがいつあるのかと気もそぞろ。
なお買うなら今からでも遅くない、初回生産限定盤を買うべし! できればタワレコで買うべし!
付属のDVDだけで値段分取った気になれるから。
アルバムに収録されている『ゾロ目』のPVからして必見である。「口パクをしなきゃいけないMV撮影が嫌なので、せめてやりとげた感が欲しくてヌンチャクを振り回し続けた」という大槻さんのコメント通り、ひたすらヌンチャクを振り回す姿を拝める。しかもメンバー全員のヌンチャクソロという超レア映像が。超カッコいい橘高さん作曲の演奏にオーケンの哀感たっぷりの歌声の前で、ヌンチャクソロが延々と続くというシュールレアリスムの世界が構築されている。『筋肉少女帯自伝』でブルース・リーを兄貴に教えられた世代だけあって、橘高さん決まってる。さらに振り回すヌンチャクがフライングVに変わり、背後で炸裂するd6という演出、これぞ演出家の面目躍如。
今までライブでやってこなかったレア曲づくしのライブ映像も見所。『ペテン』のかっこよさを再認識した。これからの定番曲になってもらいたい! 「レインボーのキル・ザ・キングに乗せて延々とよくわからないことを喋り続ける、何なのこの曲?」と作詞者本人も言っておられた『鉄道少年の憩』、語りに追いつけない大槻さんとエディのコーラスも見どころだ。
DVD一番のハイライトで俺が推すのは、『飼い犬が手を噛むので』。「素敵な審査員の皆さんを御紹介します!」からの「ギター、本城聡章おいちゃーん!」メンバー紹介に合わせて「殺ったれ!」コールが重なっていくのは必見。ライブで直に見てほしい!
ウッチーボーカルの『モコモコボンボン』、これもライブ以外ではそう聞けないハズ。一番面白いのは、ベースを買ったばかりのオーケンを、ツインギターが左右から挟んで演奏力を見せつけるという大槻さんイジメか。内田さんも素で笑ってるし。笑いと言えばサポートドラムの長谷川さん、本当にニッコニコ笑いながら叩きまくるなぁ。こっちもなんか元気出てくる。サンダーユーのコンサートで、ドラムソロで10分近くもたせた体力と技巧は今も目に焼き付いています。
タワレコで買うべし、と言ったのは、おいちゃんボーカルの『カーネーション・リインカネーション』DVDが付属するから。おいちゃんボーカルを聞ける、こいつぁレアだぜ。橘高さんの絶品アコースティックギターを聞けるという意味でも是非。
これほどの盛り沢山のショー、これを見逃すのは筋少ファンの名折れだぜ! 次のショーも、全員で叫べばあるかもしれないぜ!