We are Pathfinders!#176~PFキャンペーン『ザ・ペナルティメイト・トゥルース』第九話「呪術師」後篇~

 其は無よりも先に在りし者。
 宇宙の窮極の中心にて泡立つ原初の核。
 不浄の演奏と舞踊の中にて見出すであろう、その名を唱えよ!
 汝は、盲目にして白痴の王。
 そして我は、定命して唯一、その玉座に傅く呪術師なるぞ。

 -太古のウィザードの宣教文句より-

 悪魔的なデザインの門の先には、さらに狂った夢のような空間が広がっていた。
 天井から無数に伸びる金属製の爪に、熟れ過ぎて落ちる直前の果実を連想させる、肉質の物体がぶら下がっている。不規則な収縮と、各所に出ては消える凹凸する様は、まるで胎動を伴う子宮のようであった。
 薄く輝く皮膜の向こうからは、生物とも物体とも機械とも判断のつかぬ、可塑性を持つ不定形の混合物が透けて見える。時折目や耳の感覚器が生じることはあったが、それが四人の存在を悟っているのかは定かではない。爪の直下には水槽がしつらえてあり、重量に耐え切れず爪の離した肉塊が、ぼちゃん、と音を立てて蠢きながら沈んでいく。それらの水面は、頭上の果実を今か今かと待ち受けているかの如く、妖しくきらめいていた。
 それ以上に威圧感を持って存在するのは、ひときわ大きな水槽から突き出た、天井まで届かんという巨大な二本の柱のような物体だった。その表面は青い角質に包まれ、時折稲光を放っている。
 それらのオブジェを一望できる玉座から、ゆっくりとマルキサスは立ち上がり、芝居がかった仕草で両手を広げる。
マルキサス「へへ、へへ、へへへへへ! ようこそ、英雄諸君! このドロマー劇場の舞台裏へ!」
 アルカニスは四人に伝える、ここがドロマーの夢を実体化させる場所だと。ぶら下がっている物体は、ドロマーの夢の一部であり、島の構造物となる種子であると。ドロマーの夢見る憤怒、憎悪、殺意、そして復活への渇望を、マルキサスが現実化し、培養槽を通して陸上に放出され、島の一部となる…そのメカニズムの根幹がここ、ドリーム・ホールなのだ。
 何故マルキサスがそのような能力を持つのか?
マルキサス「ヒッヒヒヒ、それはなぁ…オレが“盲目にして白痴の王”の玉座に行ったことがあるからさ」
 往古の昔、マルキサスは“盲目にして白痴の王”アザトースを崇める呪術師だった。そして、アザトースへの崇拝のあまり、接触の儀式中、事故によって精神がアザトースの玉座へと送られてしまったのだ。
 アザトースの玉座は宇宙の窮極の中心、そこでは嗜好が現実化する世界だという
 かろうじて廃人になることは免れたマルキサスであったが、いかなる狂夢の気まぐれか、彼の頭の中には、“盲目にして白痴の王”の玉座が残っていた。宇宙の窮極の中心を宿す彼の精神は、現実化するようになったのだ。
 この世を支配することも可能な能力を得たマルキサスであったが、その代償は軽くなかった。絶え間ない玉座の光景のフラッシュバックから生じる恐怖、頭痛、吐き気、幻覚、幻聴……あらゆる精神的苦痛だけが、彼の精神のほとんどを占めるようになる。彼が実体化できるのは、破壊のヴィジョンだけになってしまった。

 その後、マルキサスは狂気と苦痛の伝道師として時代を超えた活動を続けてきたが、とある戦争にて敗北し、首を切り落とされた。首だけになったマルキサスはデリリウム近海へと落下。そこで悶々と悪夢を育むドロマーの精神を受信。それを実体化することで、夢の島デリリウムは誕生したのだ。
 首だけになっても死ぬような存在ではないが、痛みを感じないわけではない。しかも今の体は借り物であり、適合しないものを無理矢理行使しているため、すでに崩壊しかかっている。時々、苦しそうに喀血混じりの咳をするマルキサスの足元には、血管のように苦痛のイメージが浮かび上がっては消えていた。
 では、夢の実体化を司るのがマルキサスなら、彼を倒せばドロマーの野望も止まるかというと、そうでもないという
マルキサス「すでに“蒼い野獣”は出来上がってるんだよ。とっくに俺の制御も、ドロマー本来の力さえも超えちまった怪物に育っちまったのさ」
 “蒼い野獣”としてドロマーが夢見た姿は、実体化を終えていた。部屋にそそり立つ二本の柱は、ドロマーの折りたたまれた翼だったのだ。その巨体たるや、ドラゴンの成長限界を突破し、生物と呼べる規格ですらない。こんなものが解き放たれたとあれば、デリリウムというポータルはもちろん、物質界を超え、宇宙全体に破滅がバラ撒かれるのは間違いない。アルカニスの復活にマルキサスが大して興味を示さなかったのも無理はない、ただ待っているだけで、ドロマー復活という彼の勝利は九割九分決まっていたのだ。
 では、残りの一分である四人が、何故デリリウムに来ることができたのか?
マルキサス「笑っちまう話だが、ドロマーはかつての敗北で、骨身に染みて知ったのさ。悪しき力に対しては、必ず止めようとする、善なる者が現れるってことをな
 四人を導いたのは、己を誅さんとする善を演じさせるがため。そして、彼らが阻止のために必死にあがけばあがく程、ドロマーの止めることなき暴力はリアリティをもって現実化し、真の復活を迎えるのだ。
マルキサス「どうだい? 全てを諦めて、オレと世界の終わりを見たいってんなら、生かしてやってもいいが……」
 無論、それに乗る四人ではないが、自分の破局も隣り合わせの状況で、なおもそれを望む理由とは? マルキサスは冷笑で答える。
マルキサス「俺はもう一度見てみたいのさ…あの、“盲目にして白痴の王”の玉座を、宇宙の窮極の中心で、猛烈に沸騰しながら廻転する混沌の核! あれを現世に再現したいのよ。そして、俺が欲しいのは、ショーの観客だ!
 哄笑を上げるマルキサスのマントの下から、強烈な死臭と冷気が立ち上る。永劫の時を超えて、アザトースの呪術師にして死霊術を統べる不死者・リッチは今ここに蘇った。それに呼応して、角の陰から、のっそりと巨大な人型の生物が現れた。肘から先が二つに分かれ、それぞれに指と爪を備える腕と、垂直に分かれた口が特徴の不潔な巨人、夢の世界にも棲むと囁かれるガグであった。また、頭上の肉塊にも、何らかの存在が潜んでいるのを察する。

 戦闘開始と同時に、まずはマルキサスの呪文が火蓋を切る。
 マルキサスが「ファ」「」「」「ボー」「」…と一語ごとに指を一本立てていくと、その先端に火球が宿る。
ベベ「五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)じゃねーか!」
マルキサス「というわけで《呪文威力最大化》ファイアボールを喰らいな! ヒャーハハハァ!」
ゾーラ&カトーレ「ほ、ほげえええええ!!」
 この爆撃で、一挙60点ものダメージを削り取られ、二人とも重傷に。そこに長射程とタフネスのガグが腕を振り回しながら突進してくる。あわや二人轟沈か、というところを、またまたあの男・前線にいないはずの戦士ゾーラが体を張って阻止する。《踏み込み》で間合いの差を埋めつつ、盾と鎧と特技で固めに固めたACでガグの攻撃を寄せ付けず、ベベの協力もあって、なんとノーダメージで撃退してみせる。安打堅守がウリのファイターであることは知っていたが、こんなに安定するなんて……男ゾーラ・覚醒の瞬間です。……キャンペーンの最初から前線にいたならば、もっと被害も少なかったろうにね……。
 しかし一方、別の場所では違った惨事が巻き起こっていた。
 頭上に隠れる輩を相手にするため、肉塊に取りつき登るガルボ。その先にいたのは、ぐねぐねと絶え間なく変化し、霧か煙のように掴みどころがなく、どことなく獣か悪魔じみた輪郭を持つ存在だった。凄まじき創造力が吐き出す生ける悪夢・アニメイト・ドリームが、その鉤爪をガルボに伸ばす。
GM「アニメイト・ドリームの攻撃は接触なのだ。命中したらセーヴをしてくれたまえ」
ガルボ「今さら接触攻撃を回避できるとは思ってないが、うーむセーヴ失敗しちまった」
GM「じゃあ【判断力】-1d4。吸収なんで治らんよ」
ガルボ「721!?」
GM「ん、あとなんか書いてあるな……対象は疲労状態になる?
 GMも見落としていたのだが、これによってガルボの激怒が封じられてしまう。思わぬ形で、パーティ中最大の火力が沈黙することに。敵の正体が割れていれば、接触ACが高いベベが向かうという選択も出来たろう。が、生憎開幕時点で〈知識〉ロールを落としていたため、判断しようがなかった。結果、最悪の相性ができあがってしまった
 流石のガルボも、激怒なしで非実体クリ―チャーを倒しきるには火力が足りない。その間に、執拗な接触が襲いかかり、6d8というダメージ量に、見る見るうちにhpを失っていく。
 また、マルキサスはブーツ・オヴ・レヴィテーションで肉塊に飛び乗って接近を避けつつ、呪文を飛ばす。
マルキサス「まずはクラウドキルを撒いておくか。即死はなくとも1d4【耐久力】だからな」
ゾーラ&ベベ&カトーレ「うおおー耐える耐える!」
マルキサス「ちっ、しかしまた通常版のファイアーボールがあるぞ」
ゾーラ&カトーレ「またかよ! ぬおおー回復したhpがまた減っていく!」
マルキサス「そこのモンクはさっきから反応セーヴを落とさんな。それなら軽減不可の《呪文高速化》マジック・ミサイルだ、うっとうしいんだよォ!」
ベベ「って私何もしてないじゃねーか!」
マルキサス「そしてお前にゃやっぱレイ・オヴ・エンフィーブルメントだな。おっ出目最大」
ゾーラ「まだセーヴ成功しても【筋力】-5かよ!」
 ごっそり戦力を削られながらも、カトーレ必死の手当によって、なんとか気絶は免れる一同。また、ガルボは死亡まで残り1点という瀬戸際で昏倒するが、ガグを仕留めてやっとのこと到着したベベが後を引き受け、最悪の事態は回避された。
 残すところはマルキサス。爪同士を連結したパイプの上を走って奴の元に辿り着こうとするが、マルキサスも逃げ回りながらあの手この手の呪文をぶつけ続ける。ウェイヴズ・オヴ・ファティーヴでベベ、カトーレも疲労状態となり、マトモな戦力を維持しているキャラクターは一人もおらず。さらにカトーレ姉者から衝撃の告白
カトーレ……回復呪文が尽きた。“勇気鼓舞の呪芸”ももう持続時間終わり
 回復手段が各自の持つポーションのみという超緊迫の戦局に。しかしマルキサスも、決め手となる呪文を使い切っていた。スコーチング・レイの連射もマジック・ミサイルもハラを括った四人を止めるにはあたわず、ついにゾーラがマルキサスの眼前に立つ。
 絶え間ない呪文の連撃を潜り抜けた戦士に、マルキサスも飛びかかっていった。放たれた掌はゾーラの喉笛を捉え、不浄の力を秘めた指を食い込ませる。
マルキサス「なあ、何で死なねえ? ここまでやって、人間なら死ななきゃおかしいだろ? 面白ぇなぁ…お前ら、面白いよ!」
 リッチの持つ、永続した麻痺の接触にも、ゾーラは止まらない。生命力を根こそぎ奪われながら、マルキサスの体をズタズタに斬り裂いていく。そして、ゾーラに続いて到着したベベの渾身の鉄拳によって、マルキサスの首はブチブチと音を立てて、かりそめの肉体から千切れ飛んだのだった
 “経箱”を破壊しなければ死ねないリッチのマルキサスは、首だけになってもまだ生きていた。
マルキサス「ククッ……苦痛だけは人間並みとはまいったぜ。なあ頼むよ、いい加減殺してくれよ」
 わめき続けるマルキサスをどうしていいかわからず、ともかくその首級を確保する。
 しかし、肉体を失うことによって、辛うじて維持されていた精神のバランスは崩壊。つながりを断たれた要塞は、崩落を始めた。
 同時に、ドロマーの翼も床を突き破ってきた。生まれたばかりの瑞々しい碧鱗を震わせながら、その巨躯はゆっくりと外界へと現出しようとしていた。
 要塞から逃げようとする四人の前に、ルートが現れて案内する。マルキサスが倒れ、夢の終りが近付くにつれて、アルカニスの意識も力も戻りつつある。ルートはその力を使って非常階段を作り、要塞の外へと導いた。
 非常階段は、ヘシオドスの近辺、ハゲワシ海岸へとつながっていた。視界一面を、“雲の壁”が覆っていた。“雲の壁”はすでに砂浜まで到達し、慣れ親しんだ海の色、空の色さえ閉ざしている。そして、前進する“雲の壁”に触れる者は、砂も石も全てが黒コゲとなり、分解していく
マルキサス「ヒャハハハ、見ろ見ろ、もうすぐ最高の舞台が幕を開けるんだ! 世界のすべてが宇宙の窮極の中心と同じ、ひとつの燃え上がる回転流となるんだ! 畜生、しかしそいつを見るまで精神を保ってられるか自信がねぇ…おいおい、何するんだよ。チッ、これから一番いいところだってのによぉ……」
 狂喜し、喚き続けるマルキサスの首は“雲の壁”に投げつけられると、瞬時に稲光に包まれ、消失した。果たして奴が死んだかどうかはともかく、“雲の壁”の威力を知るには十分だった。
 あと1時間もすればヘシオドスはチリと消え、数時間もあれば全てが“雲の壁”に押し潰されるであろう。
 残された解決策はただひとつ、ドロマーの精神そのものを止めることだ。
 今の四人にも、アルカニスにも、“蒼い野獣”と化したドロマーを止める力はない。しかし、“蒼い野獣”とはドロマーの創造物、ドロマーであってドロマーに非ず。ドロマー本来の精神を“蒼い野獣”と一体化させる必要がある。そのためには、今、ドロマーの精神は極めて接触しやすい形で表出しているはず。その居所を突き止めれば、アルカニスの力で四人を送り込むことも可能かもしれない。
 しかし、それが最後の手段なのは、ドロマーの夢を終わらせる……デリリウムの全てが、砂と消えることでもあるためだった

 ……つづく。



マジック:ザ・ギャザリング 【英語】 【ストロングホールド】ドリーム・ホール/Dream Hallsマジック:ザ・ギャザリング 【英語】 【ストロングホールド】ドリーム・ホール/Dream Halls
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マジック:ザ・ギャザリング

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