We are Pathfinders!#175~PFキャンペーン『ザ・ペナルティメイト・トゥルース』第九話「呪術師」前篇~
泥と肉と鋼で作った塔の奥
世界を壊せと叫んでいるのさ
ついに四人は、“蒼ざめた月”の本拠地、マルキサスの要塞へ辿り着いた。
一刻も早くドロマーの夢の実体化を止めなければ、デリリウムは“雲の壁”に覆い尽くされ、雷によって消し炭となってしまう。いや、事態はもっと悪い方向に転がる可能性もありうる。アルカニスによれば、デリリウム一帯は現実と夢の狭間、一種のポータルになっている。物質界の上にできた小さな泡のような別世界。それが弾けたとあれば、隣接している物質界そのものにも災厄が及ぶかもしれないのだ。
四人が踏み込んだ部屋は、細い橋が渡され、その下は一面の水。どうやら下は海にそのままつながっているようでだ。橋が交差する場所には半球型の屋根つきのベンチがあり、一見するとのどかなプールのような雰囲気である。
しかし、その水中に動く黒い影を見逃してはいなかった。……超大型だから、そりゃ遮蔽を貰ってもバレますよねぇ。水面を断ち割って飛び出てきたのは、鋭い牙を備えた爬虫類独特の長い口に、それを支える長大な首。二匹のエラスモサウルスが四人に向けて鎌首を振り回してきた。さらに前方の戸口が開くと、金属細工の牛のような巨躯が鼻を鳴らしながら突進してくる。石化のブレスで恐れられる魔獣ゴルゴンも戦闘に参加してきた。
エラスモサウルスの長射程に、狭い足場で四人は機会攻撃を覚悟しながらの戦いを余議なくされる。なんせ驚異の射程20フィート。カトーレも呪文を使おうとしようもんなら、容赦なく噛みつかれます。まずは石化のブレスを何とかせねば、と回り込もうとしたガルボの目の前に、プールの水が飛び出し、塊となって壁となる。水中に潜んでいたのはエラスモサウルスだけでない、ウンディーネの“水の歌い手”…水の形状を操るバードが、この水上庭園の管理者なのである。
ゴルゴンへの接敵を阻んだウンディーネは、続けてゴルゴンの前の水を固めて足場を作る。橋を回らず前進できたゴルゴンは、早速石化のブレスをばぶーと発射。エラスモサウルスは水中にいるので喰らわない親切設計だ(ゝω・)vキャピ 誰もセーヴを落とした者はいなかったが、エラスモサウルスとウンディーネの足止めがあれば、第二弾を発射するにはそう労を要しまい。
隣接しにくい上に、水中の遮蔽付きのエラスモサウルスに絡まれ、さらには水の壁が移動を阻む。戦線が膠着したかと思った時、またも珍しくあの男が最前線に立つ。
ゾーラ「あの壺って持続時間残ってる?」
GM「順調に海中トンネルを攻略したからあると思いますよ」
ゾーラ「んじゃ、それを使って水に潜るわ」
フルプレートの重戦士が、それも前線にいないことで定評のあるゾーラが、なんと単身プールの中へダイブ。エラスモサウルスとタイマンを張る。射程と遮蔽で優位を取っていただけに、エラスモサウルスのアドバンテージはこの吶喊で消滅。じわじわとUSAソードに切り刻まれていく。
一匹をゾーラが、もう一匹を間合い武器持ちのベベが引きつけている間にガルボは日向君ばりの強引なドリブルでゴルゴンへと襲いかかる。前回も言った通り、接近戦の鬼であるこのメンツにAC20程度で正面から挑みかかってはいけない。二発目のブレスを吹く間を与えられず、背中を断ち割られて轟沈。ゾーラもエラスモサウルスを一対一で仕留め、さらにベベと協力してもう一匹を始末。前衛を失ったんじゃウンディーネの水使いもただの宴会芸です。エラスモサウルスもろとも文字通り血の海に沈む。
次のフロアに入った途端に、胸の悪くなる青臭さが鼻をついた。不自然にねじ曲げられ、歪められた植物が鬱蒼と生い茂り、不浄な暗緑色に空間を彩っている。天井に届くほどの大樹もあれば、草木の中で奇形の生物が飛び回っていたりする。マルキサスの実験材料を育成している庭園だった。
丈の高い草の中、刈り取って地肌を露出させることで順路が示されている。そこに沿って歩いている間に、右手の草むらが静かに動いた。ダイア・タイガーが潜み、奇襲の機会を窺っていたのだ。また、室内に聳える巨木も注意深く見れば、首吊りの輪のような奇怪な蔦を持ち、しかもそれが震えている。絞首植物、ハングマン・ツリーもまた侵入者を待ち受けていた。
意図していなかったのだが、隊列からすると四人の横っ腹を狙う位置で戦闘開始となってしまう。こりゃーアンフェアかなぁ、と思っていたらイニシアチブをベベが先取したため一安心。
と、思いきや、
ベベ「んじゃ、まずはハングマン・ツリーから行こうか」
ゾーラ「一番近いしそれがいいんじゃない?」
GM「アレ? ダイア・タイガーの前に立たないでいいんですか?」
カトーレ「ん? 大丈夫でしょ」
後で聞いたところ、丈の高い草を示すために引いたラインを、壁と勘違いしていたそうな。
まあ、本人がいいって言ってるんだからそれでいいかー、と遠慮なくダイア・タイガーをカトーレに突撃される。
爪爪引っかき引っかき噛みつきが炸裂。当たり前ですけどカトーレのACだと外せという方が無理あります。一挙80点ものダメージを奪い取る。
カトーレ「ほ、ほげえええええ!!」
なお悪いことに、ダイア・タイガーの噛みつきは“つかみ”付き。瀕死のカトーレがオレサマオマエマルカジリという最悪も最悪の危機を迎えるハメに。
カトーレ「ヒィイーとにかくhpを回復させねば! つかまれてると精神集中のDC上がるんだっけ?」
GM「相手の戦技ボーナスが乗りますけど…えーと、ダイアタイガーの場合だと+19」
カトーレ「成功するわけねーだろ! 脱出できる見込みもないし、ううう私のバカバカ! と頭をキュアのワンドでポカポカ叩いて回復させつつ、“勇気鼓舞の呪芸”発動!」
出た! カトーレ姉者の顔芸だぁ!
前々回に続いて組みつかれながらの呪芸、それも前衛の打撃が間に合わなければ咀嚼されて昇天確定の局面でこの判断力、並の役者にできる芸当ではありません。いやほんと、「組みつかれて瀕死になりながら呪芸を発動し続け、歌の終わりと共に死ぬような最期」という予言がついに的中したかGMに覚悟させるキャンペーン中最大のクライシスです。
ベベ「やべっ姉者がどえらいことに! 木の相手なんかしてる場合じゃないよ!」
GM「おっと、その前にハングマン・ツリーの“催眠花粉”に耐えてもらおうか!」
説明しよう、ハングマン・ツリーは自分を無害な木、場合によってはトレントなど友好的な植物クリ―チャーと思わせる花粉を飛ばせるのだ! これを浴びた者はハングマン・ツリーへ攻撃することを拒絶するようになってしまい、まんまと首吊りの蔦の餌食となるのである。
なんとパーティ中ほとんどがこのセーヴを落とす。
おかげで、
ベベ「姉者、助けに行くぞー!」
↓
(機会攻撃を受けて引きずられる)
ベベ「ぐわっ! な、何じゃこの木はー!?」
他一同(アイツただの木相手に何やってんだろう…? それはそれとして姉者助けに行かないと)
↓
(機会攻撃を受けて引きずられる)
という危機的状況にも関わらずそこはかとなく間の抜けたループに陥る。
幸いハングマン・ツリーの射程外にいたゾーラが急行したおかげでカトーレが突撃お前が晩御飯になるのは避けられたものの、庭園の管理人の出現で、場はさらに混乱する。ナイトメアに跨った痩せぎすの老婆、ナイト・ハグは上空から飛来すると、耳障りな哄笑を上げる。
ナイト・ハグ「ほぉ~ほっほっほ、この悪夢の庭園で私に挑もうとは愚かな奴よ。ドロマー以上の醒めない悪夢へと導いてくれよう!」
一同「うるせー今それどころじゃねー!」
ナイト・ハグ「……とでかい口を叩いたが、私の呪文ってあんまり大技ないのう。とりあえずレイ・オヴ・エンフィーブルメントでも撃っとくわ」
ゾーラ「接触呪文をかわせるわけねーだろ! でもセーヴには成功したぞ」
ナイト・ハグ「ちっ、でも出目は最大だぞ。えっと術者レベル2ごとに+1点だから…10点。セーヴ成功したから【筋力】-5」
ゾーラ「何じゃそりゃー!」
これ、無限回で撃てていいんですかねぇ。
全員がこれで衰弱死するまで撃ち続けるのが一番効率がいい気もしたのだが、面白みがないというか流石に気が咎めたので、瀕死のカトーレにマジック・ミサイルを撃ち込んだり、ディープ・スランバーを仕掛けたりに抑える。
カトーレ「抵抗不可で4d4+4って全然優しくねえええ!」
ガルボ「この乱戦の中で眠るのって死と同義じゃね……ンゴースピーネムネム」
しかも地上では攻撃されて+4のボーナスを得ながら、“催眠花粉”からなかなか目覚めない。つかみから脱出して助けに行くぞ!→機会攻撃で引き戻され、のループが続き、しかも蔦のダメージが低いためじわじわとなぶり殺し状態。ついにカトーレが射程に入り、再び姉者の飲み込みカーニバル開催かという事態に。
と思っていたら、飲み込みを喰らったのはゾーラの方だった。すわ前線崩壊かと思われたが、純正ファイターのゾーラにとって、腹の中を斬り破るなんて朝飯前。しかも軽い斬撃武器とは思えないダメージを与え、ハングマン・ツリーを内部から崩壊させた。
やっと自由になったところで、ガルボとベベは虎の子のフライのポーションを服用して、ナイト・ハグに空中戦を挑む。高レベルになったら、飛行敵への対処法のひとつは用意しておきたいものですよね。前衛のアイコニック・キャラクターも大体フライのポーションは所持しているし。あと飲み込み・組みつき対策の片手武器も。
ガルボがディープ・スランバーで落下する、ベベにレイ・オヴ・エンフィーブルメント炸裂というトラブルもあったが、流石に接近戦を挑んで負けるメンツではない。ベベがナイトメアの機会攻撃を受けない、さらに高空からの滝沢キックでナイト・ハグを粉砕した。
受けた能力値ダメージをポーションやらなんやらを使いまくって回復させた後、一同は巨大な両開きの門を前にした。門には悪魔的な意匠が施され、各所に生物の如き蠢動が確認できる。震える箇所に手を触れるや、苦痛、憎悪、悲哀…様々な負のイメージが伝わってくる。それは、間違いなくこの奥にマルキサスが……夢を、思考を実体化させる狂気の呪術師が控えるという証であった。
……つづく。
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