クトゥルフ神話TRPGヨタ話#50~クトゥルーの解説書の思い出~

 図書館で見つけたので手に取ってみた『図解クトゥルフ神話』

図解 クトゥルフ神話 (F‐Files No.002)図解 クトゥルフ神話 (F‐Files No.002)
(2005/11/21)
森瀬 繚

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 こんなもん図書館に置いとくなよと言いたいが、クトゥルフ関連書籍だからこそ図書館にあるべきか。ちなみに内容はライト・ファン向けなので正気度が減少するような心配はない。
 サイズが小さめなのであんまり期待していなかったのだけれど、思ってたよりずっといい内容でビックリ。「図解」と銘打ってあるだけに、見開きの左側は解説文、右は図象や年表などになっている。解説文は1Pビッシリ埋めてあるので、サイズの割に情報不足は感じさせない。そして何より右ページの出来が素晴らしいあの読みづらくてこんがらがったラヴクラフト先生の話が、年表形式でまとめるだけで、こんなにワカりやすくなるなんて!  これから難解な小説を読む時には見習おうと思います。
 ライト・ファン向けの通り、コアな方々には読み物としてはちょっと物足りないかもしれない。作品情報を俯瞰的に見たい時に図解ページは重宝するので、そっち目的で買うのがオススメ。ライト向けと見せかけて“妖蛆の秘密”が何故「ようしゅ」と読むようになったのかなど、不意打ちでマニア向けコラムを載せたりするので油断できないぞ
 残念なのはトピックごとの出典が掲載されていないこと。こいつぁ致命的だ! 「へーこんな話何に出てたっけ?」という興味から新しい作品に触れる人もいるから、ここは疎かにしてほしくねいんですよ。あと、個人的に速水螺旋人氏と吉井徹氏の絵は、デフォルメが味だと思っているので、ちょっと合わなかったかなあ、という気がする。

 にしてもなんか知らない間にクトゥルー解説書がドバッと増えた。中にはコンビニで手に入るものまであるんだから恐れ入る。一体ナニがそんなにクトゥルー押しの流れを作ったんかいのう。オレがクトゥルフに触れた頃なんて、本屋で『ラヴクラフト全集』を集めるのにも難儀していたぐらいなのに(当時はまだ6巻出てなかった気がする)。
 システムの革命とネタにしやすさで一大旋風を巻き起こした『クトゥルフの呼び声TRPG』がブームの先駆けだったのは間違いない。それ以前からTRPGユーザなら大体「バケモンと遭遇して発狂するゲーム」として知ってたと思う。が、それ以上の認識を持てた人ってどんだけいたんだろう?? オラは『ラヴクラフト全集1』を読んでやっと「あーただ狂うだけの話じゃねえんだな」って確認できたぐれぇさ。数十年の歴史を持つジャンルだから、ファン層も広くて不思議ではないものの、発生や認知度を考えると、やはりカルト止まりだったのは否めない。
 それが一挙、相変わらずオタクをターゲットにしてるのは変わりないと思うけど…一般書店にまで関連書籍が出回ってる程の露出に至った原因とは何であるか。人によっては『デモンベイン』や『ニャル子』だというが、アレでここまでの規模に広がるんなら『ウルトラマンティガ』でガタノゾーアが出てきた時もっと騒がれてよかったんじゃないの。それは違う話か。
 ポンチ頭で一生懸命考えたところ、多分、ニコニコ動画の卓上ゲーム動画(アイドルマスターとか東方とか)の影響が大なんじゃないかという結論に至った。クトゥルフって盛り上がる所がコンボとか燃えるロールプレイではなく、狂気に陥った時の乱れっぷりや、神話的生物に対するトンデモな対処だから、システムやTRPGを知らない人でも面白がれるんよね。明確に「あ、これ変だ」と理解できるというか。その「変」が独り歩きできるシステムなわけだから、これ程動画としてネタにしやすいタイトルってありませんよ。部外者を巻き込める強みと言うのは、TRPG全般に欠けていることであったし。アイマスとかの人気キャラがその「変」をやってるなら、尚更話題になろうて。
 そういう胡散臭さと、元からカルトであったクトゥルフ神話、それにちょっとアングラな雰囲気の動画サイトが化学反応を起こして、動画サイトブームに乗じてオタク界隈に飛び火していったんじゃないかな~、と私は分析した。某所で開かれたクトゥルフ初心者会にも、「動画で知りました」という人がかなりいたらしい。
 こういう話をするとニコニコ動画への嫌悪感を露骨に表わす人もいるようだが。存在としての好き嫌いはさておいて(私はデザインが変わるごとに使い勝手が悪くなること、「歌ってみた」「歌わせてみた」が頻繁に検索に出ることを除けば、特に感想はない)、卓上動画、特にTRPG動画って厳密にはリプレイですらないからね。システムとキャラクターを借り物にした、架空リプレイとでも言うか…『番長学園!!』でやってたな。すげえ! 寺田先生、10年時代を先取りしてたよ!
 故に、あのノリを期待されながら卓に入ってこられても、先住民として困っちゃうなあという心理はよくワカる。というか実際問題も起きてるそうな。私は余所でセッションをほとんどしない人間だから会ったことはないが。あと人気コンテンツを未だに「アイマス」「東方」としているところが時代遅れ感だだ漏れで恥ずかしい。
 ともあれ、TRPGはコミュニケーションのゲームなんだから、誤解は解いて理解は深め合おう、初心者もベテランも仲良くね!

 だいぶ話が逸れてしまった。BRP版を手に入れて遊び込めるようになったもんで、最近の解説書はあんまり読んでないが、発売前の一時期はセッションの代替え品としてちょこちょこ目を通していた。
 一番最初に読んだのは朱鷺田佑介氏の『クトゥルフ神話ガイドブック』だったかな。

クトゥルフ神話ガイドブック―20世紀の恐怖神話クトゥルフ神話ガイドブック―20世紀の恐怖神話
(2004/07)
朱鷺田 祐介

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 槻城ゆう子氏のイラストがすげーグロくて美しい。
 肝心の内容については、作品解釈が一様な感じであんまり面白くない。具体的に言うとダーレスへの切り込み方とか。朱鷺田色が強過ぎて解説本としては( ゜ω ゜) ? って感じ。合間合間の謎小説とかカルト色はぶっちぎりなのだがね。

 内容の濃さなら『エンサイクロペディア・クトゥルフ』を呼ぼう。これはマジモンの辞典

エンサイクロペディア・クトゥルフエンサイクロペディア・クトゥルフ
(2007/02/23)
ダニエル ハームズ

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 マイナー神格に小道具まで何でもござれ、網羅した情報の数と分析で肩を並べられる本はそうない。それこそ適当に選んだ単語を組み合わせていくだけでシナリオができるぐらい。
 問題としてはほんとに「辞典」なので、関連作品への解説などはまったく無し。「読んだだけで作品を知った気になれる」ようなお手軽解説書ではないっちゅーこと。一度はクトゥルー作品を読んだことがあるか、シナリオにじっくりクトゥルー色を練り込みたいという人以外には、国語辞典とかと一緒に棚の中でホコリかぶることになる。あとダーレスに対してかなり攻撃色が強いんでダーレス派の人は注意ね。「ダーレスの死とクトゥルフ神話の人気増大は関連があるか議論される所である」…ってわざわざ書いてる時点で、「ある」って言ってるようなもんじゃんよ! ただし、ダーレスの考案した「クトゥルフ神話」という単語について、「わざわざ一般的に使われていて、誰の感情も害さない用語を何故変えなくてはならない」と、頑迷な原理主義者をバッサリする公平さは評価されるべきだろう。
 TRPGに登場させる場合のデータまであるのは、「正気度損失が1d6/2d6で〈クトゥルフ神話〉+9%とか自惚れ過ぎじゃねーの」などと無粋なこと言わず、お遊びとして笑ってあげたい。まあ正気度1d6はちょっと誇大表示かな。斜め読みしたけど正気度が減った覚えはないし。アイデアロールに失敗しただけ?

 BRP版自体も解説書としては相当優秀。冒頭に『クトゥルフの呼び声』も掲載されてるから、これを読んでおけば「ケッ原作も読んだこともねえニワカ野郎が!」などと小うるさいファンを黙らせるには十分であろう。いやファンだからこそ言うけど先生の文章ってファンじゃなきゃ一作品読むだけで十分だと思いますよ。もっともラヴクラフト原理主義が濃いせいでダーレス的解釈への考察はすっごく浅いんだけど。d20版はそこらへんに理解があり、アメリカ社会情勢などもサポートした懐の広さが魅力なものの、あまりにもバーリ・トゥード(なんでもあり)過ぎてちょっとついていけん。あともう売ってねぇ

 バランスを考えると東雅夫氏の『クトゥルー神話辞典』が一番いいのではないかという結論に達した。

クトゥルー神話事典 第四版 (学研M文庫)クトゥルー神話事典 第四版 (学研M文庫)
(2013/04/09)
東 雅夫

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 解説してくれる作品は和洋問わず幅広く、ラヴクラフト-ダーレスに関わらず、諸説どこにも偏ることがない。用語辞典の使い勝手も『エンサイクロペディア』ほど濃密ではないが十分に良好。何と言っても、安易な神話的小道具の拝借がいかにリスペクトの欠如した行為か、という苦言は特筆してもし足りない。これからクトゥルー神話を執筆しようというプロ・アマ作家(およびKP)にとって拝聴すべき警鐘であり、なおかつクトゥルー神話に対する作者の誠実さの顕れといってよいだろう(何でもかんでもニャルラトホテプのせいにすればいいと思ってる作家陣は百遍読み直してほしい)。
 筆者が初めて見たのはハードカバー、実際に買ったのは第三版の文庫。今では第四版を手に入れられる。いい作品には長い需要が付いてくるんだねぇ。
 作品評価については、当たり障りないとも取れるけどね。基本的に「こらぁいかがなものか」とは言わず、ほめるスタンスなので。ところでダーレスに関してはどの作者もデリケートな扱いをしているのが笑いどころか『図解クトゥルフ神話』で「永劫の探求シリーズは日本でも人気」という一文を見てひっくり返ったもんなぁ。本当に人気あったら俺は目玉くりぬいて銀紙貼り付けるほどいたたまれなくなるが。
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