読んだ本#14~国産SF短編集~

 2013年がTRPGの年であったのはいつも通りだけど、国産SF短編小説の年でもあったと言えよう。
 何故今国産SFで短編の年だったのか!?
 理由はふたつある。
 ひとつは、昨年みょうに国産SF短編復古の動きがあったから。『日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー 日本SF短篇50』シリーズ発売や、筒井康隆編の『60年代 日本SFベスト集成』の復刊で、なんだか一時に本棚がSF短編で賑やかになった気がします。そうそう復刻ばかりじゃない、書き下ろしSF短編の『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』も出てますね。
 まあもっと素直に言うと「SFと付けると売れないからミステリってカテゴリにしとくべ」という姑息な手がつかわれた時代を知る身としては、「フン、なんでい今更どのツラ下げて!」という気がしなくもないのだが。ともかくSFに憧れながら生まれた時にはすでにSFブームの波がとっくに退いた後、細々とうらぶれた波打ち際でSF愛を育てなければならなかった潮干狩り的SF者としては嬉しいものですよ。
 ふたつ目の理由はただ単に長編だとくたびれるから。SF愛を語るぶんざいでSF的、というか科学知識がまるっきし欠如している故、ムズカシイ話になると付き合うのがかなりしんどくなってくる。グレッグ・イーガンの『宇宙消失』を読んであらためて「ハードSFとゆうやつは科学知識がない人間にはわからん」と当たり前のような感想を抱いたもんだ。要するに「誰も見てない所で起きることなんて誰にもわかんねーよ、何が起きても不思議じゃねーよ」という物語でよかったのかな。私はどっちかってーとディティールの方で楽しんでいた、これってN◎VAのサイコ・アプリじゃねーか? とか。
 単につまらない話だった場合、長編だと敗北感が物凄いというのもある。2013年最も面白かったSF的発言は知人氏の「『○宙の戦士』を読んだ時、オレはもうSFを読むのをやめようかと思った」でした。爆笑した。

 筆者の実家には『'73年 日本SFベスト集成』があって、当時活字ギライだったので漫画ぐらいしか読んでなかったのですが、『不安の立像』(諸星大二郎)、『霧にむせぶ夜』(増村博)どっちもしっこちびりそうな恐怖短編でトラウマンガになったものです。諸星大二郎氏の解説の「作品数は少いにもかかわらず~」というくだりに時代を感じる。それと、増村博氏は後に『アタゴオル』や『銀河鉄道の夜』で猫漫画を開花させたますむらひろしその人。猫の毛一本一本を書き込む緻密な作画と独特な猫世界による猫会議は、他所じゃ絶対食えねぇ味わいを覚えたサ。ガルガル(机を引っ掻く音)

日本SFベスト集成〈1973〉 (1979年)日本SFベスト集成〈1973〉 (1979年)
(1979/11)
筒井 康隆

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 高円寺の合同古本市(『バンパイヤ』を買った時)に、この一冊が他の『日本SFベスト集成』と並んでいるのを見て、思わず「おおっ君は…」とガニマタ気味でにじり寄りました。一冊200円というありえない安値…確かに見事に赤焼けしているが…だったので60年代、'71~'75まとめて買ってぐふぐふ笑いをした。


60年代日本SFベスト集成 (ちくま文庫)60年代日本SFベスト集成 (ちくま文庫)
(2013/03/06)
筒井 康隆

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 さて復刊された『60年代 日本SFベスト集成』は曲者の筒井氏が編者だけあって一筋縄ではいかないという印象だった。第一、氏の『色眼鏡の狂詩曲』からしてなんじゃいこりゃ、な一作。『ニンジャスレイヤー』を数十年先駆けておる。漫画はもちろんのこと、他愛ない麻雀話(半村良『H氏のSF』)まで含めちゃうところに氏の懐の広さと悪戯心がうかがえる。
 にしてもなんちゅうか薄暗い話が多いな。平井和正氏の『レオノーラ』は生臭いバイオレンスが際立ち「ぐえー」となること必至だし。『X電車で行こう』(山野浩一)のブキミさは、鉄ちゃんが読んだらたまんないんでないかな。小松左京氏の『終りなき負債』は救いがないんだけどザマミロ&スカッとサワヤカな復讐劇。流石はSFの大家と拍手がしたくなる。
 さっきハードSFはわからんと言ったが『大いなる正午』(荒巻義雄)はホントにわからん。解説を読んだら筒井氏もよくわかってなかったようで安心した。
 最も良かったのは『機関車、草原に』(河野典生)。デゴイチという響きを知る人なら忘れられまい、機関車にかける老人の意地と熱意が荒廃した日本を駆ける。グッドエンドでないのに希望溢れるラストの力強さが沁みます


日本SF短篇50 III: 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫JA)日本SF短篇50 III: 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫JA)
(2013/06/06)
日本SF作家クラブ

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 『日本SF短篇50 Ⅲ』では久々に椎名誠氏のSF『引綱軽便鉄道』を読んだ。一時期集中的に読んだ思い入れをさっぴいても、シーナ・ワールドと呼称される、このSF世界はもっと研究されるべきだと思う。また『夢の樹が接げたなら』(森岡浩之)はこれまたN◎VA野郎ならニタニタできる脳内アプリケーションの話。1992年の段階でこんな発送があったんですねー。
 この中では草上仁氏の『ゆっくりと南へ』がいい。ものすごーくいい。氏の短編集の表題作になったのも納得です。こういう優しくてアットホームなお話にそっとSF心が添えてあるお話って大好きさ


日本SF短篇50 II (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)日本SF短篇50 II (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)
(2013/04/10)
山野浩一、眉村卓 他

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 『日本SF短篇50 Ⅱ』では『名残の雪』(眉村卓)を推す。いわゆるイフもの、歴史を変えちゃったよ話と見せかけて、イントロから漂わせていた違和感がスーッと落ちる。あとは山野浩一氏の『メシメリ街道』が「なんじゃこりゃ」感が凄い怪作。


日本SF短篇50 IV 1993-2002―日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫 JA)日本SF短篇50 IV 1993-2002―日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫 JA)
(2013/08/05)
日本SF作家クラブ、大槻 ケンヂ 他

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 お、『日本SF短篇50 Ⅳ』の冒頭は大槻ケンヂ氏の『くるぐる使い』だ。星雲賞を取ったこの話、やっぱり氏が語り手の名手なんだなあって思わされる、猟奇とやるせなさと恋が交差するオーケン節の真骨頂ですな。
 一番印象に残ってるのは『操作手(マニピュレーター)』(篠田節子)。介護疲れの身内の非人間性と、介護ロボットに抱く幻想…人間とロボットを巡る構図は様々なモチーフで描かれているが、本作ではそれに加えて老婆の「女」の部分が抉り出されて突きつけられ、「ぐえー」となれる。田中啓文氏の『嘔吐した宇宙飛行士』はもっと違う意味で「ぐえー」となれるバカSF。どっちも食事時に読むのはオススメしません
 独特の世界、という点では『永遠の森』(菅浩江)を推す。高度発達した未来社会の学芸集団、というなんかおハイソな空気がしますネ。あ、これもケツの青い若造がいきがって、期待通り痛い目に遭ってザマミロ&スカッとサワヤカな話だ……。


てのひらの宇宙 (星雲賞短編SF傑作選) (創元SF文庫)てのひらの宇宙 (星雲賞短編SF傑作選) (創元SF文庫)
(2013/03/21)
大森 望

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 星雲賞といえば『てのひらの宇宙 (星雲賞短編SF傑作選)』もこれやっ、という一冊。
 SF者の投票で選ばれる星雲賞だけあって、よりすぐりの名SF短編集となっております。全体的にちょっとライトな雰囲気なのも私好み。『火星鉄道一九』(谷甲州)とかね。
 それにしても、筒井康隆氏はここでも『フル・ネルソン』で気を吐いている。氏のスラップスティック小説の縦横無尽さは凄まじいの一言に尽きる。それでいてどれも面白いんだからいや恐れ入ります。ラノベに参入したと聞いてもあんまり違和感なかったもんなぁ。
 筆者のお気に入りは再び草上仁氏の『ダイエットの方程式』。『ゆっくりと南へ』もそうだったけど、ダイエットでSF? という一見ズレたところからSF話に持ち込む卓抜な寝技話。「男にはわからない」とかステロな例えでくくれない女の体重に関する執念、それに比べて男の無頓着さが浮き彫りになるオチに至るまでの流れも完璧。


イマジネーションの戦争 (コレクション 戦争×文学)イマジネーションの戦争 (コレクション 戦争×文学)
(2011/09/05)
星野 智幸、伊藤 計劃 他

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 短編といえば根気のないオレでも読み通せるとか失礼なことをゆってるが、これは相当腰を据えていかないと読み通せなかった、『イマジネーションの戦争 (コレクション 戦争×文学) 』。
 扱うテーマがテーマだけに、本の分厚さも内容もハードでド・シリアス。いや、ただ単に星新一の『白い服の男』が読みたくて、収録されてる本が図書館だとコレしかなかったんで軽い気持ちで手に取ったんですが…もう序盤の伊藤計劃氏の『The Indifference Engine』で「ぐえー」となれた。いや「ぐえー」どころではなくオシシ仮面風に「グエーッ」という感じである。
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 赤川次郎氏の『悪夢の果て』も、徹頭徹尾ドンヨリとした暗い雰囲気で、「えっこのまま終わるの!?」と思ったら本当にどん底で終わり、という直下型ブレーンバスターから毒針エルボーみたいな「グエーッ」話。軽佻浮薄に生きてる筆者には及びもつかぬ、重厚な世界に触れることの意義というものを考えさせられた。
 もっとも重苦しい戦争の惨たらしさばかりでなく、芥川龍之介による毒のある新解釈『桃太郎』があったり、筒井康隆氏はここでも『通いの軍隊』でブラックユーモアに走ったり、ちゃんと短編集としてのバラエティも整っている。というか俺も一冊欲しい面白さだっちゃ。
 中も秋山瑞人氏の『おれはミサイル』がエンターテイメント作として断然良い空中戦がずっと続いて、地上というものを見た者がいない世界ってだけでもドキワクするのに、無人飛行機とミサイルの一機と一発のの物語は不謹慎ながら血が滾る。
 一部の人…というかネット上の一部では山本弘氏の『リトルガールふたたび』にご立腹のようだった。筆者もだいぶ偏見入ってるなーとは思ったが、くそまじめに糾弾するよかまあバカSFなんだからねーあるかもねー、ぐらいに笑って流せる余裕をいつまでも持ち続けたいと思う。

 さてこれまで読んだ中で、2013年最も良かった作品は『日本SF短篇50 I』収録の『魔法つかいの夏』(石川喬司)。
 終戦間際の予知能力を持った少年の話なんだけど、もう全編ものすごく気持ち悪い話。軍の化学工場の青いプールに浮かんで、紙の服が溶けていくくだりとか、東條英機の絞首刑を予感させるラストとか、もうやめてくれってぐらい気持ち悪い
 なんだけど、こういう気持ち悪い話って私大好きだったりする。

日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)
(2013/02/22)
光瀬龍、豊田有恒 他

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テーマ : SF
ジャンル : 小説・文学

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