ようこそ“悪魔憑き”#15~パラサイトブラッドセッションレポート「鉄の旋律」後編~

紀世「エイジはさあ、こんな所にいるべきじゃないと思うよ」
 影二郎をそう呼ぶ少女は、隣のシートに座る時、よくそう言った。
 春日紀世(かすが・ともよ)は別段、不良と付き合うような娘ではなかった。影二郎から見ても普通の少女と思える。ただ、荒れる若者の側にいたがるという、その不思議な一点を除けば。
 むしろそんな性格だからこそ、影二郎と付き合っていたのかもしれない。どこかしら力を持て余し、それでいて空虚で暴れることしか知らない、そんな漠然とした心境を見透かす感受性を持っている娘なのだ。
 結局紀世は、影二郎が愛車のシート以外の席に着く様を見ることはなかった。
 最後の走りとなった、あの自動車事故でこの世を去ったのだ。
 影二郎も、隣に座っている紀世の姿が生前の彼女の見納めとなった。
 次に目覚めた時はベッドの上で、既に彼女の身体は病院から移されていた。
 葬儀の席に訪れた時も、紀世の両親に拒否され、遺体を拝むことすら許されなかった。

 X-1の仲間にさえ見せたことがないであろう、悪鬼のような形相で、影二郎は文字通り奔走していた。
 一葉が部活を休んだのは、部員に迷惑が及ぶのを恐れてのことだ。影二郎に見送られ、真っ直ぐ自宅に帰って外出も控えている。いや、一葉だけの問題ではない。双葉も牙峰丸から忠告され、できる限り家にいるようにしている。
 全力で向かった鉄家、その付近で果たして影二郎は熊沢を発見した。虚ろな目つきの男たちに、派手な化粧の女を侍らせている。
 影二郎の声を聞くと、熊沢は即座に敵意を剥き出しにする。事故以来、影二郎が抜けたために、熊沢のチームは弱体化して、ストリートギャングに吸収されて下っ端扱いを受けてきた。自分だけが日常に戻り、学生生活を謳歌している影二郎が、今更どのツラを下げて熊沢たちの前に現れたものか。
熊沢「たかが女一人事故って死なせたぐらいでフヌケやがってよぅ。ヌケヌケと新しい女まで作ってなぁ! だが、もうあの時の俺たちじゃねぇ。俺たちは、てめぇに負けない力を与えられてんだよ!」
 熊沢と共にいた連中が、スレイブ化する。しかし、影二郎は即座に最下層のスレイブであると見破っていた。下っ端の彼らに与えられるスレイブなどたかが知れている、それも熊沢に至っては“悪魔寄生体”すら与えられていない、下っ端の中の下っ端なのだ。スレイブに乗っ取られておらず、自我があるからこそリーダー面をしているが、普段はスレイブ化した奴らに使われる立場なのだろう。
 今や戦い慣れした影二郎には、“悪魔化”の必要すらなかった。瞬く間に捻り潰した影二郎に、たちまち熊沢の表情が失われ、次には脂汗を浮かべた作り笑顔になった。
熊沢「じょ…冗談だよ! ちょっとばかし昔みてえにバカやろうとしただけさ! そ、そんなに入れ込んでるとは思わなかったんだよ! こ、こいつが襲えって言ったんだよ! 最近部で新顔の癖に調子に乗ってるから、痛い目に遭わせてやれって!」
西野「ちょっ…ちょっと、何言い出すのよアンタ!?」
 急に罪を擦り付けられた女が狼狽する。よく見てみれば、化粧でわかりづらくなってはいるが、陸上部の女子だった。普段から一葉の陰口を叩き、そして部活を休むようになってからはあからさまに罵るようになった女だった。
熊沢「な、なぁ、いいじゃねえかよ、一緒に暴れてた仲じゃねえか、たかが女一人…そ、それともまだアイツのこと引きずってんのか?」
 真っ白になるほど握り締めた拳が、熊沢の顔面を打ち抜いた
 久しく味わっていなかった、生身の人間を殴った感触だった。
 無様に転がった熊沢は、恐怖の悲鳴を上げた。西野は初めて見た影二郎の本気の怒りに、呆然としていた。
 そこに、麻里亞が気を利かせて呼び出したパトカーが急行してきた。引っ立てられた熊沢は、これ以上暴行される心配がないとわかるや、影二郎に向かって声を荒げて喚き散らす。
熊沢「忘れるんじゃねえぞ! お前がやってきたことが、消えるわけじゃねえんだからな!!」
 悄然と立ち尽くす影二郎は、去っていくパトカーを見つめながら、ポツリと呟いた。
影二郎「……忘れられるわけねぇよ」

 三条の尋問で、やっと暁と<アレス>を結ぶパイプが見えてきた。
 暁のジムを去った後の挙動であるが、何をするでもなく自堕落な生活を送っていた。そんな中、街をフラフラとさまよっている時に売られたケンカで、腕利きのゴロツキを叩きのめしてしまった。
 リングの上では決して振るえなかった本気の拳が、自暴自棄の生活でやっと握れるようになったのだ
 話を聞きつけた荒くれどもの誘いのままに、暁は転々としながら用心棒稼業をして日々をつないでいた。その噂を聞きつけた三条が、<アレス>の試作型AAS搭乗員としてスカウトしたのである
 折しも咲坂市の暁の実家では、父が病気で倒れていた。ジム除籍後、判然としない息子の有様が心労にこたえての病だった。それこそ一生に見るか見ないかの金額の手術費を必要としていた暁は、自分の身体と引き換えに、危険な搭乗員を引き受けることにした。
 また、三条は“葉隠”のためのデータ素材集めの協力者でもあった。“悪魔憑き”のデータを大量に欲するエドワードの求めに応じて、三条はスレイブ化させたストリートギャングを、特に強力な者を選別して提供していった。自殺命令さえ厭わないスレイブなのだから、まさにレギオンの三条にとってはうってつけの仕事である。勿論、エドワードの求めとは悟られないよう、<アレス>を通しての仕事の偽装済みである。ストリートギャングは、暁が咲坂市に戻ってきたと聞いて、仲間に入れればさらに組織は強化されると思い込んで、次々と戦いに赴いていたのだ。
 西御寺の事情を知っていたのは、資金援助の窓口役を任されていたからである。西御寺からの資金を三条に通して窓口を変えることで、関与を隠蔽していたのだ。また、<ドミニオン>からの資金も同様に扱っていたという。
 <DUST>に戻ると、珠美は出迎えた暁の頬を張り飛ばした。その一撃で、暁は大方の事情を察したようであった。元から三条絡みの事件に出動したことで、覚悟はできているようだった。
「……ボクサー時代は結果を残せなかったくせに、チンピラに落ちぶれた途端に本気になれた。その結果が親父の入院だ。ツケを払うために今の仕事をやってる……そんなカッコ悪いこと、お前に話せるかよ」
珠美「私だからこそ、話してほしかったんだよ!」
 珠美の叫びに、暁は目を伏せるだけだった。

 残る問題はエドワードである。
 三条の証言によってエドワードの<ドミニオン>との関係や、行方不明事件の関与は見えてきているが、いずれも背後には大きな組織が動いている。訴えようにも、必ず横槍が入るに違いない。エドワード本人を直接叩かなければ、この事件は終わらない
 エドワードは現在、アリサを連れて自分のラボに移っていた。最早暁には何の興味も持たないような口ぶりだったらしい。
 エドワードのラボは舟形山の一角にあった。あの生物研究所と同じく、西御寺グループ傘下の施設である。隠れて研究をするには、うってつけの場所だ
 駆けつけたX-1の前に、アリサが立つ。エドワードは現在研究の大詰めにある、誰も近寄らせはしない、と戦闘態勢を取る。しかし、本心から戦いを望んでいるとは思えなかった。それに、アリサとの対峙を予想して同行した暁を前にして、さらに迷いは深まっているように見える。
 そのことを指摘されると、
アリサ「エディは私の命の恩人です。逆らうことはできません…でも、暁を危険に晒してまでやろうとしていることが正しいのか、わからなくなる時があります」
 と、苦渋の答えを返す。
 本当に大切に思うべき人なら、他人を犠牲にするようなマネはしないという影二郎の叫び、さらに牙峰丸の「犬好きに悪い奴はいないぞ、お前は悪い奴ではあるまい」という…いささかこの場にそぐわないかもしれないが…少女の気持ちを的確に押す一言で、アリサも決意を固めた。地下へのエレベーターを開き、自分もエディの真意を見届ける、と宣言する。

 エレベーターの降下した先は、カタコンベを連想させる、“悪魔憑き”の保管室だった壁一面に並べられた円筒管の中、三条の作り出したスレイブや、彼らに敗北した“悪魔憑き”が浮かんでいる。中には実験台として生きている者もあるのかもしれないが、大半は正常な日常に戻れるとは思えない様子だった。
 最深部、“葉隠”を前に調整をしているエドワードは、X-1とアリサを見ると一瞬表情を歪めるが、すぐに元の神経質な細面に戻った。
エドワード「…まさかアリサ、お前が彼らを通すとは。それに三条が吐いたのだな? まあいい…既に“葉隠”は完成した。どのみち、あいつも搭乗員も用済みだったからな」
 エドワードが大量の“悪魔憑き”のデータを必要としていた理由…それは、AASを超えた発明のためであった
 “悪魔憑き”を倒すために始めたAAS開発であったが、エドワードの研究者の血は、次第に“悪魔憑き”に惹かれていった。生物に寄生しなければ生きていけないほどの微小で脆弱な存在でありながら、寄生した者を怪物じみた戦闘マシンに変えるアンバランスな生態。さらにその先、[暴走]を引き起こす潜在能力。まさに悪魔か…もしくは、神でなければ想像できない生物だ
 そして、エドワードは気づいた。自分の開発しているAAS、これは極めて“悪魔寄生体”に近い存在ではないか。電力負荷による一時的なパワー増強、電磁障壁による法外な耐久性、搭乗員がなければ起動せず、兵器足り得ない。
 もしも、“悪魔憑き”とまったく同じ性質を持つAASを作り出せたなら…それは、自分が造物主、神になるも等しい電子的な“悪魔憑き”を作り出し、自らが神の席に座る、それこそがエドワードの真の目的であった
 アリサはそのための実験台だった。人工的に作り出された脅威の戦闘力に、危機的状況にのみ機能する“補助脳”、すなわち[暴走]を引き出す機関。そして、それらの技術の結集は、“葉隠”という形で成就した。
エドワード「そう、“葉隠”の完成と共に私は神となる! そして、この技術と引き換えに、“総督”は私に“賢者の石”(フィロソファーズ・ストーン)の地位を約束されたのだ!
 ついに、エドワード本人の口から“異郷”の関与が明かされる。<ネフスタント>を全滅に追いやり、シルバや黒耀山を操ってきた首魁…“総督”が背後にいたのだ。
エドワード「最早<アレス>に従う必要も、ましてや貴様ら<DUST>と手を組む必要もない! さあアリサ、そいつらを殺せ! お前の力を引き出せば、殲滅などたやすいことだ! そうすれば、ここまで連れてきたことは許してやろう」
 しかしアリサはX-1と暁の隣で、逡巡していた。
エドワード「どうしたのだアリサ? お前が私に反抗することなどあり得ないはずだ。何故なら私はお前を愛している。だからお前も私を愛するべきだ。いや、愛さなければおかしいのだ!」
影二郎「ふざけんじゃねぇ! 彼女が今こうして苦しんでるのを見てわからねぇのかよ! そんなことで愛してると言えるわけがないだろうが!」
 影二郎の咆哮に、アリサの瞳が揺れた。信じられないものを見ているようなエドワードであったが、やがてその顔が醜く歪むと、ひきつった哄笑を上げ始める。
エドワード「そうかそうか、所詮は未完成の人形か、人の情にほだされて主を見失うとは…いいだろう、私には“葉隠”があればそれで十分だ。それではアリサ、最期の仕事をしてもらおう。その男を連れてこい!」
 エドワードが懐の端末を操作すると、アリサの“補助脳”を遠隔操作する。アリサが悲鳴を上げながら戦闘形態となるのを見て、珠美は暁の前に走る。エドワードの狙いは、“葉隠”搭乗員の暁だ。もしも暁を奪われたら、[暴走]状態となり敵として戦わねばならない――それだけは、止めなければならなかった。
 しかし、起動しているのはアリサだけではなかった。
 エドワードの背後から、ぬうっと立ち上がる漆黒の影があった。黒いボディに真っ赤な瞳の禍々しいフォルムは、今や両手を広げ、未だに陶酔した笑みを浮かべるエドワードにのしかかっていった。
エドワード「ひっ……!? な、何だとぉ!?」
 驚愕する隊員の表情に気づいて、振り向いた時にはもう遅かった。獣の顎のように胸部を開いた“葉隠”が、息を呑む間もなくエドワードを飲み込んでいった。
エドワード「がっ! ウゲッ! ぎ、ぎゃあああああ!!!」
 肉と骨の爆ぜる生々しい音が響いた直後、“葉隠”の胴体から、どさり、と、生々しい赤と白の交じり合う物体が吐き出された。それが、ついさっきまで己を神と自称していたAAS開発者であると気づくのは至難の業であった。
 皮肉なことに、“葉隠”はエドワードの望んだ完成体以上に進んでいたのだ。真に“悪魔寄生体”であるように、寄生先を探して自律行動をする。“葉隠”は完全過ぎる程の、電子的な“悪魔寄生体”の完成形と化していた。膨大なデータの集積と高度な技術は、知らず知らずのうちに“悪魔寄生体”となって、“葉隠”のプログラムに寄生していたのである。そして、エドワードの身体はAAS搭乗者ほど鍛えられてもいなければ、暁用に調整されたサイズにフィットすることもなかった。
 眼前で起きた惨劇に、アリサが絶叫を上げた。同時に“スワロウ”と“ヘイト”が切り離され、周囲一帯を放電の嵐に巻き込んでいく。“葉隠”も“悪魔寄生体”の本能…強力な宿主を探す習性に従って、X-1隊員へと目を付けていた。“葉隠”のブーツがエドワードだった肉体を踏み潰したその音が、戦闘開始の合図となった。

 “葉隠”の押さえには影二郎と片那が向い、アリサと“スワロウ”“ヘイト”には牙峰丸の背後から珠美、そして麻里亞が回復の要として陣形の中心に位置する。
 “葉隠”は[暴走]状態で防御を捨てて猛然と襲いかかる。暁搭乗時のような無駄のない動きではなく、スピードと破壊力に任せた強打、それに搭載された火器が壁のカプセルを破壊し、溶液を撒き散らす。影二郎の《連続攻撃》に、HPを《吸熱転嫁》で回復できる片那としては相性の良い敵と言えるが、この破壊力には麻里亞の《治癒領域》を信じるしかない。
 また、同じく[暴走]状態のアリサであるが、いくら危険でも手を出すには忍びない。それも犬好きとあらば尚更である。牙峰丸は《殺戮の輪舞》で一挙にドローンの体力を削り取り、そこを珠美が撃ち落としてく。珠美の《属性擊》はドローンにとって弱点属性、“スワロウ”と“ヘイト”にとっては致命傷である。たちまち、二機のドローンは動きを止めて地に落ちる。
 “葉隠”の方も、レーヴァテインで強化された肉弾攻撃を連撃で喰らい、それにソウルイーターの乗った超火力を打ち込まれていっては、さしもの暴走AASも耐えられるものではない。やがて、その瞳の光が落ちると、単なる無人のAASのように崩れ落ちていった。
 “葉隠”の停止に合わせて、アリサもぶつり、と動きを止めて、腰を落とす。これまでの無表情は全て消え失せ、声をかけても、何の反応もない。あまりのショックと負荷の大きさに、彼女の頭脳の大半は焼き切れていたのであった
 <DUST>の技術班を呼びに影二郎が外へ飛び出したその先で、待っている人物がいた
 ボロボロのコートを羽織って顔を隠しているが、影二郎の全身を貫く嫌悪感、存在してはならないものと相対しているような肌の粟立ち、その全てが“悪魔寄生体”の発する警告であると理解すると同時に、知った――こいつが、“総督”だ
総督「エドワードと“葉隠”が敗れたか…やはり人工の悪魔憑きなど使い物にならんな。戦いは“悪魔寄生体”に秘められた力を引き出せるかどうかだ…え? 君もそう思うだろう、北影二郎」
 その声はひどく懐かしいような、馴染み深いような響きと共に…目が眩むほどの拒絶感をもって、影二郎の耳朶を打ってくる。
影二郎「秘められた力なんて、俺にはそんなものねぇよ…」
 やっと絞り出したその声に、“総督”は確信を持って首を振る。
総督「君は気づいていないだけだ。そして私は信じているよ。君がその力に目覚めることを…その時また会おう」
 コートを翻して、“総督”は去っていった。
 強烈な頭痛と吐き気に悩まされながら、影二郎は<DUST>をコールし…同時に、“総督”のコートが、DUSTコートそっくりだと、ぼんやりと考えていた

 “葉隠”は結局、並のAASとなって回収された。
 テスト搭乗員の役目は途中で終わったわけだが、どこからか多額の資金援助によって、暁の父の出術費は工面された。<アレス>から<DUST>への迷惑料らしい、城島司令が口を利いてくれたのだ。
 行方不明者の多数は既にラボで命を落としており、止むなく事故死という形で決着をつけるしかなかった。
 アリサは必要最低限の機能だけは復旧したものの、元の人格を取り戻すには多くの時間を要しそうだった。そのリハビリには、暁が適任と選出された。
 暁自身は、“葉隠”と共に<DUST>への臨時隊員として残ることになった。“葉隠”のバックアップには自然と珠美が就くことになり、麻里亞も支部長も反対しなかった。
「知ってるか? <DUST>って副業が許されてるんだ」
 暁は父親の家業の手伝いをしながら、<DUST>の活動を続けるつもりだ、という。高校在籍時から、父の仕事を継ぐのが望みであり、結局収まる所に収まったことになる。また、<DUST>への協力は、それがせめてもの罪滅ぼしであり、同時に珠美と共に働けるのは本懐だった
「せめて、拳を汚した分と、助けてもらった分ぐらいは命懸けで人のために働かなきゃな…それにな、俺、今度こそ本当に正義の味方になれるかもしれないんだな」
 感慨深げに呟く暁に、せいぜいこき使ってやるわよ、と珠美はのたまう。
 一葉は、部活動に復帰した
 朝練のために早出した通学路で、一葉は隣にいる影二郎に、小さな声で漏らした。
一葉「……あたしみたいな奴だって、真面目に学校に行ったり、部活したりしたっていいよな……」
 影二郎は、無言で頷いて、一葉の肩を叩いた。
 体を震わせて頷く一葉であるが、影二郎の心に晴れたものはなかった。
 その脳裏には、“総督”の影が焼印のように刻まれ、一時たりとも離れていなかった。

(つづく)



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