ひらく夢などあるじゃなし~三上寛怨歌集~

 ひらく夢などあるじゃなし

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 今や額を問わなきゃ(大抵)何でもあるウドの街な具合のネット世界ですが、非効率的と笑われても筆者はやっぱり自分の足と目で探すのが好き。そして見つけた時の喜びはひとしお。中野王国民でよかった(兼高円寺名誉住人)。
 三上寛の曲は昨年のオーケン名曲喫茶で紹介されていた。ゲストの水戸華之介が選んだのが『おど』だった(よりにもよってなんでこの曲なの水戸さん!)。筆者はベスト・アルバムで何度も聞いていたから多少耐性が出来ていたのだが、お客さんは「おど――!」という絶叫に堪えきれず笑いを漏らしていた。オーケンがこの反応に「笑っちゃうってことは、それだけ我々が薄くなっているってことだよね」とコメントしていたことが、記憶に新しい。本当に衝撃的な物事を前に、人とは笑うしかないとエッセイでも書いていたっけ。
 ベスト・アルバム収録の『ピストル魔の少年』は発表当時問題になったと聞く。死刑囚・永山則夫を歌ったものだからだそうだ。しかしこのアルバムはもうそういう問題を超えている。『夢は夜ひらく』は放送禁止指定されたけど、そもそもこのアルバムに収録されてる曲のどれひとつでも公共の電波に乗せるか否か、という判断が働くこと自体がまずおかしい男に刺されて死にたくない、早く逃げて巡査が来る、死にたくないと交互に叫ぶ瀕死の女の歌、隣村の村長に体を売った母の歌、恋を性欲という形でしか表現できず、女を襲った少年の歌、何を流したって放送事故どころじゃありませんよ、もうこれは事故ではなく放送テロだ。『スター誕生!』でうっかり勘違いをして『あなたもスターになれる』を流しちゃったりしたら、抗議殺到ツイッターは炎上番組打ち切り獄門もあり得る。解説を書いている田口トモロヲさん(この選抜も最高。ばちかぶりのコンセプトが「三上寛がバンドになったら!?」だったとは)も唖然とし、爆笑した、つまりあのトモロヲさんでさえ我々とまったく同じ反応を示したというのも納得である。
 街角で呼び止められて暗がりに引きずり込まれて突然三人ミュージシャンを挙げろ、と問われたら、確実に筆者は三上寛の名前を挙げるだろう(ほか二人はオーケンと山本正之先生かな)。できれば十年早く出会いたかった二十年早く出会っていたら、人生が変わっていたかもしれない。そのぐらいのパワーをこのアルバムは秘めている。
 このアルバムに収められているような曲を聞いて、気持ち悪いとか半笑いで狂ってるとか、単純な反応が出来る人がいたら、それは自分の幸運に感謝するべきだろう。何故なら、つつがなく人生を送れているという証左だからだ。こういう曲を聞いて共感してしまう当たり前の人生を送れなかった筆者は、そういう人が憤ろしいほど妬ましい。世間に理解してくれとは言わないし、理解してもらえるとはこれっぽっちも思ってないが、こんな音楽にしか救いを求められない人達だっているんだ、ってことだけは心の片隅に留めておいてほしいもんだ。規制規制で耳触りの良い言葉ばかりが取り残されているけれど、『昭和の大飢饉予告編』(このタイトルで既にしびれる)で歌われているように、正しい言葉で励まされたって、元気で明るく皆と一緒に生きて行こうと言ったところで何になる!? と吠えたくなる人の代弁者もいなければ、ゲージツなんかに何の価値があろう。
 世界中のなんもかんも死んじまえ、というのはあまりにも幼稚な憤りではあるけれど、こういう幼稚なルサンチマンを心の何処かに留めていなければ、創作において良いモノというのは絶対に出来ないと常々思う。そして、ルサンチマンを作品に昇華するというのは、このぐらいやって初めて言えるのではないか、と身の竦む思いで聞いた。
 と、言うか、正直パワーと狂気があまりにも凄過ぎて、ちょっと引いた。「母ちゃん泣かないで、(ジャーン)気が狂いそうだよ――!」って、それはこっちのセリフじゃー! 多少マイルドなベスト・アルバムの方を私は好き嫌いと言う尺度なら推したい。アルバムの中でも比較的穏やかな(といってもこれも相当やばいけど)『誰を怨めばいいのでございましょうか』が筆者は狂おしく好き。最もパワフルなのは『ひびけ電気釜!!』か。「買い物カゴにひと山いくらの堕胎児が」というフレーズに、誰が振り向かずにいられよう!? 前述した刺された女の『一人の女のフィナーレ』もすんばらごい。生で聞いてオーディエンスと一緒に「死にたくない死にたくない」と連呼したい。ついでに三上寛の中で一番はというならベスト・アルバムの先頭打者に選ばれた『馬鹿ぶし』、これは人生歌にしてもいい。「故郷を出る時抱いていた意地さえネオンに散らしたか」「やりたいことの半分もできれば青春それまでか」この二節は心にグッサグッサ刺さる。次が『夢でよかった』。『夢は夜ひらく』の次にコレが待っているという発想が恐ろしい。小林旭のカヴァー『ギターを持った渡り鳥』は本家より好きだ。


三上寛の世界(紙ジャケット仕様)三上寛の世界(紙ジャケット仕様)
(2007/11/21)
三上寛

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テーマ : フォークソング
ジャンル : 音楽

TRPGこぼれ話#254~訳語のもんだいいろいろ~

 界隈で散々ネタにされているんで今更触れることでもないが、洋楽のアルバムが詰め込まれている棚を見て素直に感じたことを書く。
 往年の洋楽アルバムの邦訳ってほんとにだせえな。
 『A Hard Day's Night』がどうして『ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!』になるんだ。当時の業界の世相を顧みるに、恐らく命名者はお薬をヤッていたに違いない。え、噂によると名付け親は水野晴郎先生ですって? いや、その、何でもないっす。お願いですからシベリア送り超特急はカンベンして下さい。
 橘高文彦さんやナカジマノブさんもオススメ、「バカだも~ん」こと『Bark at the moon』が『月に吠える』だったのも、なかなかのズッコケであった。『月に吠える』というタイトルそのものに文句はないし、語感は非常に美しい。が、しかし、何故よりにもよってオジーのアルバムの邦訳に萩原朔太郎を引っ張ってくるのだ。ブラック菩薩が純情小曲集になってしまったではないか。
 ピンクフロイドの『吹けよ風、呼べよ嵐』はイイ。ださいかそうでないかだとださいが、ウォーの『世界はゲットーだ!』も捨て難いなぁ。
 洋楽に限らず、洋画のタイトルを邦訳すると、妙に“愛”という単語が連発されるこっぱずかしい現象がある。これは、カップルに金を落とさせるためという話。金を払って映画館に通ってくれるのは今やカップルが中心で、そういう層には“愛”という文句が実に効果的なんだとか。つまり内容を伝えるよりイチャつく場所としての広告効果を期待してってことですけ。タハー
 でも洋楽は洋楽で内容を訳すとすっげえくだらないことを語ってたりするので、これはこれでどっちもどっちなのかもしれない。使用言語が違う我々には聞いても伝わってこないけれど。洋楽・洋画・洋ゲー、舶来モンは全部良し、和製は全部ダメ! という洋モノ信仰って、違う言語や文化=よくわからない、よくわからないからカッコいい気がするというしょーもないマヤカシが根底で働いてるのかもしれない(「よくわからないものをカッコイイと言える俺カッコイイ!」てな自己陶酔は言うに及ばずね)。
 往年のSF邦題はヒネってかつ美しいものが多く、この辺センスが先鋭化されていた時代っちゅうものを感じて頭が下がる。『渚にて(On the Beach)』(新版の人類最後の日は余計だなー)、『月は無慈悲な夜の女王(The Moon Is a Harsh Mistress)』、見よこの日本語の美しさと英単語の配列の見事なゆうごう。ディック先生のフェミニストマジギレ短編『The Pre-Persons』は傑作選の『人間以前』より『まだ人間じゃない』が断然(・∀・)イイ!!
 アナログゲームの翻訳のセンスではMTGが群を抜いて素晴らしい。カード名、キーワード能力に収まらず、フレーバー・テキストまでキメにキメキメなのはこれぞ日本語と翻訳者の力ってカ・ン・ジ。原語の洒落っ気あってなのは当然のこととして、ニヤリとさせられる名訳をよくもまあ次から次へとポンポン生み出してくれるものです。愛しいけれど憎いお方。《最後の言葉/Last Word》はフレーバー・テキストのカッコよさもさることながら、エウレカセブンの初期OPとひっかけて「最初の嘘、最後の言葉、最後の言葉は打ち消されない」というネタが内輪でひっそりと流行った。
 中山てい子先生はMTGだけでなくクトゥルフの翻訳にも関わっており、邦訳センス決定戦はもうてい子無双(2016年KOEIから発売予定)ってカンジだ。定番ながら“名状し難きもの”なんてのは響きだけでゾクゾクする。個人的にはチャウグナー=フォーンが登場する『The Horror from the Hills』は、神格の二つ名と同じ“丘より来たる恐怖”がいい。『恐怖の山』だと『狂気の山脈にて』とカブるのであるよ(真ク・リトル・リトル神話体系の全然関係ない『夜歩く石像』もあれはあれで好きだが)。
 同じくWoCで地続きの3e以降のD&Dもよぉー大統領! と囃子の一つも入れたくなる傑作訳ぞろい。原語ではシンプルな単語の並びを、よくぞあそこまで雰囲気を壊さずかつ冗長にならず仕上げてくれたものです(“悪を討つ一撃”なんて“Smite Evil”だもんな)。残念ながら5eの翻訳は今の所動きナシであるが、これだけの蓄積あらば、自力訳の際のネーミングに困らなくて済む。
 そうか、ダサい翻訳が罷り通る業界は名作SFとアナログゲームを参考にすればいいんだな!
 5eの特技に関しては、今の所原語verをカタカナ表記にするのが一般的のようだ。独自の和名を当てはめている例は少ない。早い所特技の和名化ブームが来てほしいものですが自力でひねくり出した自前の和名を使っているが、これはどうなのか客観的な判断に困っている身としてはもっとオーディナリーなセンスを知りたい。

テーマ : TRPG
ジャンル : ゲーム

おまけのいちにち(闘いの日々)

 弾き語りイベントの時、「人間椅子とコラボしていたのが遠い昔のようだ」と大槻さんが呟いていた。
 気付けばニューアルバム発売からこうして記事にするにも、とっくに一ヶ月も過ぎていたり。初回限定盤で買ったのにな。

 おまけのいちにち(闘いの日々)

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テーマ : 筋肉少女帯
ジャンル : 音楽

はっきり言ってやるぞ、お前のパーマは失敗だ

 今やネット通販でたいがいのものは手に入ってしまう世の中だけど、今でも私は店頭であれはないかこれはないかと直に探すのが好き。
 半年ほど前もそうして歩いていたらレア盤『勉強』(電車)を発見して喜びに浸ったのであるが、今度は同店で『電車トーマソ』(と、『GO! リュウケンドー』のマキシシングル)と遭遇。ハチミツを目にしたグリズルの如くニヤピクしながらベタ足鞭毛歩行で即行確保してきた。だから好きさこの地域って。中野王国民でヨカッタ(筆者は高円寺には名誉住人という肩書きで所属を許されている)。
 一番聞きたかった『パーマのブルース』はケース裏面を見るとPart2しか書いておらず、ラジカセ(いや正確にはCDラジオか)にかけても隠しトラックは1つしかない。ってことはPart1かPart3はライブ盤の『電車英雄』収録か? と首を捻っていたら、最後にPart1とPart3がいっぺんに入っていた。なあんだ。1と3の間にかなり長い無音が挟まっているので、疑いのひとときを耐える羽目になったが一安心。空手バカボンのナゴムコレクションほど長い無音じゃないしな。
 一枚目がこのアルバムってのは色々凄い。『勉強』もかなりアングラ色強かったけど、コレに比べるとまだキャッチーに思えてくる。オーケンをして元たまの石川浩二さんは「間違ってもこの人を紅白に出しちゃいけない」と言われていたが、電車もMステに出したりしてはいけない。タモさんに呼ばれて演奏した曲が『お別れの背景』とかならまだいいが、『喰らわれた女の歌』とかおっぱじめられたらお茶の間が凍り付きますよ。結婚式場で『船頭小唄』を披露するぐらいまずいしかも三上寛ver。お~れ~は~河原~の~枯れす~す~き~お~な~じ~お~前も~枯れす~す~き~ど~お~せ~二人~は~この世で~は~は~な~の~咲かな~い~枯れす~す~き~♪(すすり泣くような声で)
 まあ表現活動なんかやる人の勝手なんでええですけどね。むしろマイノリティにこそ称賛されるような表現活動はずんずん推奨したい。そういうところに惹かれるひねくれモンだしねぇ。
 さて電車のアルバムで残すところは『電車英雄』だけとなったが、果たして現物を目にすることはあるだろうか。『電車トーマソ』も来世までに手に入るだろうかと思っていたらこうして買えたんだから、いつか出会うこともあると思いますが。その日までまた界隈をブラブラしよう。

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

勘違いして覚えていた歌詞・うろ覚えの歌詞

 『島本和彦のマンガチックにいこう!』で『勘違いして覚えてた歌詞特集』という回があった。その中でパーソナリティ島本先生、アシスタントのモナミン、としてリスナーを爆笑の渦に巻き込んだのが、『メルモちゃんガモってる事件』であろう。『ふしぎなメルモ』の主題歌で「メルモちゃんが持ってる♪」という部分、「メルモちゃん」と「が持ってる」が分離していて、「ガモってる」という動詞と勘違いしているというネタであった(多分、その前に「メルモちゃん」を連呼しているのがよくない)。
 言われてみるとこういう勘違いやうろ覚えの歌詞って多い。少年期には自由にできる金がなくて、歌詞カードのついているレコードやCDが手に入らず、ネットで調べることもできないから、歌詞を覚えるには流れている番組にじーっと耳を澄ませるしかないのだが。でも、手軽にネットで調べられる今でさえ曖昧な歌詞って存在する
 個人的に勘違い・うろ覚え歌詞の俺の中の帝王は『とべ! グレンダイザー』。「おそれを知らぬエネルギー」が、何度も聞いて歌詞を見てなお「おそれを嫌がるエネルギー」に聞こえる。かれこれ二十年以上聞いてるはずなのだが、いまだに「おそれを嫌がるエネルギー」なんだよなあ。
 アニソンの定番は『スペースコブラ』の『コブラ』(『スペースコブラ』なのに主題歌は『コブラ』なんだ)。英語パートを放送だけで認識できた人は相当の手練れだ正確には「Leaving me blue」「Missing you true」「Only few memories after you」ね。英語歌詞というと、『CAT'S EYE』も難易度高い。ひとつひとつの単語はワカりやすいんだけど、ちゃんと順番通り覚えている人はあんまりいないんじゃないでしょうか。「町はきらめくpassion fruit」は『番長学園!!』の怪盗道三のセリフ「儂はきらめくパッションフルーツ♪」で間違いなく覚えていたんですけど(追加キャラがアレだった時点で、『番長学園!! 大吟醸』は再版として非常に良かった)、辛うじて記憶にあった「月明かり浴びて we get you」の後、「mysterious girl」を「mysterious eye's」と思ってました……。
 『覚悟完了!』に並ぶ熱血ソング、『勝利のマシンロボ』は「友よ一緒に腕を組め」なのか「友よ一緒に腕を振れ」なのか判断に困る。後の「そして明日の戦いへ」に、どっちでも繋がってしまうのがまた。調べたら「腕を組め」が正解でした。
 ファンである筋肉少女帯、その中でも屈指の名曲だと思っている『くるくる少女』でも、「星巡りした」の部が「○○○~し~よ~」と言ってるようだった。これは歌詞を読んだり、公式セルフカバーを聞いたりすると、ちゃんと「星巡りした」と聞こえますな。『サンフランシスコ10イヤーズ・アフター』の「サンフランシスコ10イヤーズ・アフター」が、「サンフランシスコってやだった」と聞こえるのは、当時のオーケンの精神状況を考えると、ワカってやってたんでしょうなあ。特撮の『パティー・サワディー』の「過去は過ぎ去りもう無い、未来来たらずまだ無い」は特攻服にも書かれている名フレーズですが、「未来来たらつまらない」とどーしても聞こえてしまう。オーケンの言語能力を思い返すと、ダブルミーニングと思えちゃうのが心憎い。
 パンクはハードコアの隆盛もあって、なんて言ってるのか聞き取れない場合が多かった。その中でじゃがたらは聞き取りやすい方だが、『スーパースター』は「おお偉大なるスーパースター」が「おいらなるんだスーパースターに」、「ホモの英雄」が「ほんもんの英雄」に聞こえる。テーマとしても合ってるし、もしかしたらその意図もあるんじゃないかなあ、と思えてしまう。
 この手の歌詞を知って「ああそうだったのか! ユリーカ! デカルチャー!」と目覚めるのは歌詞カードと並んでカラオケが定番ですけど、「そこが知りたいんだよ!」という箇所が表示されず切歯扼腕するのは、これまたよくあるって話ですなー。

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

筋肉少女帯人間椅子

 

 僕のトレーディングカードはおいちゃんとナカジマノブさんでした。濃過ぎ。

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テーマ : 筋肉少女帯
ジャンル : 音楽

AVガレージで古いCDを買って 高円寺古本市で古書を買って…

 作者に還元されないから悪いなあ、と思いつつ、古本屋と中古CDショップは利用している。
 本はやっぱり出版された当時のサイズ、できればハードカバーで読みたい派だが、昔の本だったりすると絶望的に手に入らないので、そういう場合は地道に古本屋めぐりをするしかない。本そのものは我慢すれば文庫で読める場合もあるが、昔のCDとなるともっと絶望的になる。運よくデジタルリマスター化や紙ジャケットとかで再版されたりしなければ、探偵ナイトスクープばりの捜査能力を要求される(DL販売というのはこういう入手しづらいタイトル、それもインディーズ時代もサポートしてくれるからありがたい)。
 この間中野のブロードウェイを巡っていたら『機甲猟兵メロウリンク』のサントラを発見し、ムヒョップと小躍りしながら買ったついでにディスクユニオンに寄ると、これまた来世まで手に入らないとも覚悟していた電車の『勉強』を発見、あやうくうれションするところであった。いや近所というのは歩いてみるものですな。
 また、先日セッションに参加後足を運んだ古本屋で、文庫版すらなかなか見つからん『みるなの木』のハードカバーを発見。シーナ・ワールドの中で最も好きなこのタイトルを2015年にもなって、10年以上の時を経て入手できるとはいや僥倖僥倖。
 セッションは後で考えてみたらイニシアチブと死亡セーヴしか振ってねえ! というだめなアーキタイプを選んだシャドウランみたいな驚愕の結果でした(別にシナリオに失敗したわけではない)が、全体で見てよい日であった。



みるなの木みるなの木
(1996/12)
椎名 誠

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テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

ONLY YOU~唯一人~

 作業中、大槻さんカヴァーの『とん平のヘイ・ユウ・ブルース』を聞いていたら、ギターソロで「ん?」と思った。聞き覚えのあるギターさばきに、『ONLY YOU』のブックレットで確認してみたら、やっぱり橘高文彦さんでニヤリとした。なお、私は音楽センスが悲しい程欠けているため、こういう経験は皆無に等しい。それに橘高さんのギターは筋少アルバムで散々聞いてるんだからわかるのが当たり前か。
 ニヤリとした理由は、筋少ファンの方なら多くを語るまでもないでしょう。この曲、筋少でカヴァーしようとしたら橘高さんが「これをやるんだったら俺は筋少をやめる!」と言い出したという因縁の歌なのである。後に次のアルバムで何を入れようか、カヴァーがいいんじゃないか、という話になったら橘高さんが「とん平のヘイ・ユウ・ブルースにしようぜ(笑)」と言ってオーケンが怒った、というくだりをオールナイトニッポンで喋っていたが、いつものホラ話かもしれないので真偽はわからない。あと、それから橘高さんのノイローゼがどんどん悪化して、『UFOと恋人』の頃にホントに脱退騒ぎに発展すると思うとあんまり笑えない。
 そんな風にブックレットをパラパラ見ていたらオラぶったまげただこんなに豪華なアルバムだったの?
 『ONLY YOU』は大槻さんのソロ・ワークス第一弾で、オーケンが影響の受けた楽曲のカヴァー・アルバム。ザ・スターリンやじゃがたら、INU、有頂天、頭脳警察のPANTAさん、遠藤賢司さん、往年の名パンク・名ロックからの珠玉のオーケンセレクトが並んでおり、それも本家本元の方々が参加しておるではないですか。『ロマンチスト』では遠藤ミチロウさんが、『屋根の上の猫』ではPANTAさんがボーカルに参加。『カレーライス』には遠藤賢司さん本人のアコースティック・ギター、『とん平のヘイ・ユウ・ブルース』では左とん平さんご本人入魂の「ヘイユウ!? ヘイユウワッチュアネ―――ム!」が収録されている。ちなみに空手バカボンからも一曲あるのでこれはセルフカヴァーと言えるか。
 そんでゲストの方々も凄い、『メシ喰うな』(INU)には人間椅子のワジーこと和嶋愼治さんだし、女性ボーカルはGO-BANG'Sの森若香織さんだ(事務所が一緒だった縁かな? ラジオに出た時、たいへん可愛らしい声だった)。特に『もうがまんできない』(じゃがたら)が凄い、前述の遠藤ミチロウさんにPANTAさん、遠藤賢司さん、森若香織さん、またウッチーもいれば、おーデーモン閣下まで!? こんな歴々による大合唱という大盤振る舞いだったとは。アルバム買ったのはまだ筋少ファンになりたての頃、あんまり大槻さん周辺の音楽を知らなかったから気付かなかったけど、ありえないぐらいのぜいたく品だったんですね。大槻さんと同年代のアングラパンク・ロックに染まった方々にはたまらない一枚でしょうなぁ。恥ずかしながらようやっと最近になって大槻さん作詞の元ネタを知ることが多くなっております。『GO GO スターリン』を聞いて「あっこれ『ゴスロリちゃん綱渡りから落下す』だ!」と飛び起きるとかね
 第二弾『I STAND HERE FOR YOU』やUGSレーベルでも踏襲される、大槻さんによる曲解説も見どころの一つですな。曲に関する薀蓄や大槻さんの思い出など、ひとつのエッセイとしても読めてかつロック史の勉強になる。『タンゴ』をやるにあたって、おいちゃんから「この歌はお前には十年早い」と言われたそうで、言うなぁおいちゃん。じゃがたらと親交があったおいちゃんだからこその発言なんでしょうけど。『とん平のヘイ・ユウ・ブルース』の解説は、恐らく世界一的確で鋭いヘイ・ユウ・ブルース評です。
 色々いい曲はあるんだけど、絶対外せない出色の一曲と言えばばちかぶりの『オンリー・ユー』。原曲は『only you(唯一人』。田口トモロヲというと八割の人は『プロジェクトX』と答えるであろう……いや六割ぐらいだろうか…最近のヤングは『プロジェクトX』を知らない人も多いだろうし…で、残り一割は『仮面ライダー THE NEXT』のシザーズジャガー。が、パンクバンド・ばちかぶり(ガガーリンというバンドもやってた)のメンバーとして活動していた時期もありまして、ナゴムレコードだから初期筋少と同時期か。ナゴム総決起集会の時の『only you(唯一人』、これがまた渾身の逸品で、ジャパニーズ・パンクというか、表現者というのはかくあるべし、だなあ、と思い知らされた気がします。このバージョンで商品化してほしい。
 原曲だとトモロヲさんのシャウトのパンクっぷりにかき消されて気付きづらいが、歌詞はド直球の青春歌でめちゃくちゃ恥ずかしい。こんなにダサくて恥ずかしくて直球で胸にくる歌詞は、銀杏BOYSの『BABY BABY』でもなきゃ匹敵できまい。それが、ボーカルが大槻さんに、曲調は正統派ロックテイストにチェンジ(ギターにジュンスカの森純太さんが。ボヨヨンロックもやってましたよね?)したことで、よりこっぱずかしさと切なさが炸裂。大槻さんの泣き叫ぶような、感傷的な歌声がたまらなくハマっている。泣き所は「君が好きだ、本当だ……」の語りであろうけど、私はその後の「新宿三丁目の、あの狭いディスコティックで、僕らはよく始発電車が動くまで語り合ったもんさ、人間って一体なんだろうって!」の「なんだろうって!」の部分で声が少し上ずるのにググッと胸を裂かれるような気持になります。
 現在でも、『オンリー・ユー』は大槻さんの持ち歌としてイベントで耳にすることができる。曲の都合上、ソロの場合はアコースティックverが中心だが、20thバンドなどの場合はロックverもやってくれて嬉しい。NESS×オーケンの高円寺フォークNESS村の折、三浦俊一さんの「オンリー!」がものすごくトモロヲさんっぽくてびっくりした
 セールスとしては、「まったく売れなかった」らしい。発売時期(95年)からすると、世間が求めていたのはミュージシャンの大槻さん一個人ではなく、筋肉少女帯の大槻ケンヂだったのかなぁー、とかいろいろ考えちゃいますが……。「これからロックをやろう、バンドをやろうって人が唄い継がなければならない曲がたくさんあるんです」という意図通り、筆者のようにこのアルバムをきっかけに本家の曲を聞き始めた人間もいるわけですし、その思いはきちんと成就されたことでしょう(ザ・スターリンいいなぁ)。それに、かつて影響を与えられた方々の曲を、それもご本人たちと一緒に収録できたというのは、奇跡的であり、かつものすごく幸福なアルバムだったんではないかなぁ、と思います。



オンリー・ユーオンリー・ユー
(1995/03/08)
大槻ケンヂ

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テーマ : 筋肉少女帯
ジャンル : 音楽

筋少握手会に行ってきた

 握手会に行ってきた。
 著名人に間近で会った機会なんてごくわずかであるし、これからもそうであろうから特大の字で書いておこう。ちなみにそのごくわずかな経験とは、河嶋陶一郎氏のGMで迷キンをやったことぐらい。発表されたばかりの巨怪ルールのあまりの大人げなさに、割と半ギレになってしまった。あの時は大人気なかった、この際だから謝っておきます、すいませんでした。でもあの時のシナリオの容赦なさには頭を下げないよ!
 で、そんな私が何の因果か『THE SHOW MUST GO ON』に応募券のついていた、筋少握手会に当選した。こんなBIGチャンスにヒットしたのは3eのビホルダー様水晶像が当たった時以来だな。まぁあれは単に応募数が少なかっただけかも。ガンダムで異様に武器を壊しまくり爆発しまくったのも、仕事の〆切直前にPCが壊れたのも、全てはこの時のために運を充填していたからなのか。『命』を『運ぶ』と書いて『運命』! フフ……よくぞ言ったものだ。会場は牛込にある箪笥区民ホールでした。筋肉少女帯牛込町箪笥区民ホールという単語が化学反応しそうでしない響きであるが、それっぽいと言えなくもないかな。
 世間でいろいろ言われてる握手会という企画だが、正直握手会という特典がなくても、あのクオリティのアルバムなら売れたと思いますよ。っちゅーか数年越しのニューアルバムなら、筋少ファンみんな買ったでしょうし。実際、足を運んだ方々も生粋の筋少ファンという感じで、目の前に座っている人がクレヨンを弾倉のように体に巻き、背中におもちゃの刀を背負っていて、一体この人はなんぞ? と思っていたら、『ムツオさん』のモデル、津山三十人殺しの都井睦雄のコスプレと悟って納得した。ラウドロックの闇は深い。あと、前にも書いたけど四半世紀を超えて活動している、アラフィフロッカーとの握手会というのは、それは人生の侘び寂びというものではないかな。
 直前まで「もしかしておいちゃんと橘高さんがガチャピンとピカチュウの着ぐるみで登場するんじゃないのか」と危惧していた(でもスゲー見たい)が、流石に接客ということでバシッとステージ衣装で登場。大槻さんだけは普段着で、「一人だけ普段着ですいません」と謝っていたのがおかしい。あと、内田さんが黒いマスクを着用でギョッとした。直前で風邪気味になってしまい、お客さんにうつしてはイカン! と思っての処置だそうですが、黒マスクとグラサンの組み合わせが、まるで『特高の拓』か『カメレオン』に出てきそうな面相に。他のメンバーからも「V系みたい」と言われていた。
 さて握手会というものに参加したのは初めてだが、わかったことは、結構ヒマなのであるな。自分の番が来るまでは、目の前で人が流れているのをボケーッと見ているだけなんだから、ほんとやることがない。あまりのヒマさを慮ったのか、大槻さんが「スマホとかいじってていいですからね」と発言したぐらい。他の握手会もこんなゆるい感じなんかな? いや多分違うと思う。徳間ジャパンの司会の方もファンキーだったし。妙に長谷川浩二さんの登場が待ち望まれ、司会の人にまでフッて困られていたなぁ。
 筋少ファンの錬度を思い知ったというか、見ていて非常にスムーズに人が流れていくのも印象的でした。俗に言う困ったちゃんが全然いない。「会場のケツが決まってるんで速やかにいきましょう」という発言が効いたのか、はたまたコワモテのボディガードさんが配置されていた(確かに『オーケンのこのエッセイは手書きです』にあった、サイン会護身術がシャレになんないご時世だもんな)ためか、予定されていた時間を大幅に残してすんなり終了。おかげで半分以上がトークショウに。これはこれで良い。
 終えた後のコメントで、「こういう時話せることって限られるよね」とおっしゃっていた通り、確かに自分の番が来るまでに何かメンバーの方に伝える言葉を考えないとなー、と思ったけど、長い時間喋っては迷惑になるし、そんなに語れるような因縁があるわけでもないしなぁ、と結局当たり障りのない一言になってしまった。
 でもメンバーそれぞれの対応の違いが間近で見られたのは嬉しかったですよ。おいちゃんは生誕50周年を迎え、その記念Tシャツを着ていたのでそれを伝えたところ、いつものニコニコ笑顔のままガッシリ握手し、なかなか離さなかったのでちょっとうろたえてしまった。内田さんはホントに風邪で苦しそうだったので、わざわざこんな時にまでありがとうございます、という気持ちを込めて「お大事に」と言いつつ握手。橘高さんには「元気を貰ってます」と言うと、実に良い微笑みを見せてくれた。矛盾した言葉になるけど橘高さんの笑顔からは「誠意のある営業スマイル」を感じた。ファンの前ではいつでもイイ顔を見せようという徹底したプロ意識、これも客商売の家庭の育ちがなせる技でしょうか。大槻さんには「23日のワンマンも行きます」と言ったが、いつもの低温ボソボソ声が仇になって聞き返されてしまうハメに。でも二度目は「ありがとう、また会いましょう!」としっかりレスポンスを貰えたのでこれでいいのだ。
 実はこのようなイベントを行ったのは二度目で、20年前の『レティクル座妄想』の時にサイン会? として、似たような催しだったという。その時もオリコンTOP10入り、『THE SHOW MUST GO ON』で20年越しに達成されたという。「なんか、こういうイベントをやるとオリコン入りするみたいになるんじゃないかなぁ」と複雑そうだったけど、ファンとのふれあいの機会を作れるというならそれはワガママな望みだけど是非やってほしいです。サイン会があったなら、『UFOと恋人』『ステーシーの美術』『最後の聖戦』『新人』のどれかにお願いしたい。
せっかくだから出前演奏とかやろうか」「希望する人の家に行って、『ブルドッグ』を歌うの」「終わったらゴム紐をプレゼント
 という発言に、のほほん学校と筋少ライブに行った人は覚えているであろう、筋少メンバーがゲスト参加した回、皆でカラオケでフォーリーブスの『ブルドッグ』を熱唱、ゴム紐パフォーマンスを真似するナニコレ珍百景があり(大槻さんが全然ゴムさばきに追いつけていない)、その映像がよりにもよってライブ中の告知、『THE SHOW MUST GO ON』製作中! がバァ-z_ンと出るべきところに流される物凄い二段オチがあったのだ(内田さんが「フルで流しやがって」と呟いていたのをよく覚えている)。……出前とは言わないから、あの映像DVD化しないかな。
 20年前のイベントは全然覚えておらず、やったかどうか会場のお客さんに確認するぐらいであったという。ちなみに、その場にいた人が今回当選していたので言質は取れた。凄い偶然と幸運。20年を超える筋少愛に拍手拍手。今回のイベントも本当にあったかどうか、12/23のライブで確認しようか、と冗談めかしていたけど、こうして証人がここにおりますよ
 人生の中のビッグイベントというにはなんだかゆるーくあっという間に終わってしまった、ほんとに夢のようながら忘れ難くて得難い体験だったのは事実。時々当選ハガキを眺めては思い起こし、ニヤニヤしようと思います。いつまでも間近で見られたような、元気なお姿でバンドを続けられることを祈っております。



THE SHOW MUST GO ON【通常盤】THE SHOW MUST GO ON【通常盤】
(2014/10/08)
筋肉少女帯

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テーマ : 筋肉少女帯
ジャンル : 音楽

そうだ、電車聞いた

 筋少ニューアルバムは相当前のライブで告知されていたので知ってたけど、電車再結成は大槻ケンヂさんのブログで知って、慌ててセッション前にディスクユニオンに駆け込んで確保してきました

〜再度運転〜「そうだ、電車聞こう」〜再度運転〜「そうだ、電車聞こう」
(2014/11/05)
電車

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 結成からして、日比谷の野音で何かやろうと言われて大槻さんが女囚さそりのコスプレして参加したらイイ感じだったので続けようという話になり、最初は“野球”という名前だったのにいつの間にか“電車”になっていたワケのワカらないバンドなのですが。そして大槻ケンヂさんの脱退理由がこれまたケッサクで、「メンバーのダジャレが嫌になったから」。ロック史を紐解いても空前絶後の脱退理由である。そして10年越しの再結成となったワケだが、大槻さんこれでいくつのバンドをかけもちしてるんだろう。筋少に特撮、大槻ケンヂ&20Thバンド、ケンヂ浩司、NESS村にもお邪魔してるしFOKでソロの弾き語りもやってる、この精力さは凄いな。こんなにエネルギッシュなアラフィフもなかなかいない。オレもd20の出目に一喜一憂するような40代でありたいでもアラフォーになるまで周りにTRPG遊んでくれる人がいるかな~!? いたら最高だと思うけど、それはそれで怖い気もする
 またベラサン、サトケンさん、小畑ポンプさんにしても、御自分のバンドがあるのに10年越しの再結成をするのは、心の底から音楽が好きなんだ伝わってくる。メジャーだろーがインディーズだろーが武道館満員だろーがただ一人相手だろーがプライドを持ってやればいいのだ、という大槻さんの主張を実践してる方々だ、流石はダチだよとシャッポを脱ぐグッレイト(ケロッグ)。
 して、結成とメンバー脱退の経緯に負けず劣らずワケのワカらない音楽だ昭和歌謡っぽい音楽をやろう、というコンセプトだけに、2010年代にもなってこんなノスタルジーな音色を耳にできるとは。また大槻さんの歌詞が、筋少や特撮とも空バカとも違う、暗く淀んだドロドロを感じる。まだ人権意識とかが薄かった頃、もう何でもやったるでぇという音楽が反体制の象徴だった時代を彷彿とさせる凶器攻撃が炸裂しておる。……実は電車が活動していた時期って2000年代だから、その頃にこんな音楽と歌詞のバンドが存在してたってのも凄い話だな。
 いやほんと、聞いた感想は全曲通して
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 であった。繰り返して言うけど、2014年、セカンドイソパクトが来年という年にこんな音楽を耳にできるっていうのは、あらためて音楽の自由さと可能性を思い知らされましたよ。ダークでムーディな旋律から、いきなり「お前のパーマは失敗だー人生みたいに失敗だー」だもんなぁ(ハッキリ言ってやるぞ、お前のパーマは、失敗だ!! が無かったのはチョト残念)。オーケボーマンの敵役『生まれてビックリ団』の出だしはてっきり必殺仕事人かと……『星屑と赤い闇のブルース』なんて、「プログレかよ!?」って重々しい曲調に乗せて、大槻さんが延々トミーなる男のように夢を見ろ、と語り続けるとか。
 流行りのJ-POPではなく、歌謡曲で育った私には勿論ばっちりハマった。私もアウトサイダーぶりたい日陰者だから、絶対カラオケに入らないような曲を好きになっちゃいますしね。三上寛の『夢でよかった』とか絶唱したいのに。退かれると思うけど。
 ラストに『お別れの背景』を持ってきたのには、拍手喝采。私も、コレを聞きたいがためにアルバムを買ったようなものです。大槻さんのサウンドストリート21で一度聞いてどハマリし、どうしても聞きたかったんだけど、とっくにアルバムは廃盤で……ヤフォークとか行けばまだ残ってるかしら。
 この曲が印象的なのは、電車の方々による昭和歌謡テイストの演奏と、オーケニズムが最も激しく化学反応を起こしているからだろうこの歌のやるせなさは物凄い。別れ歌に明るい曲調という食い合わせからして一層物悲しい(大槻さん曰く、明るい歌には悲しい歌詞を、だそうです)が、皆に称賛される男がかつて人殺しという最も重い罪を犯し、皆から追い詰められる罪人がかつて人を愛するという最も美しい営みをしていたという対比、ここに大槻さんの常々語ってきたテーマが抉り出されている。「人は生まれた時は皆裸で同じ」「それなのに世間や社会や組織から勝手に値打ちをつけられてしまう」「好きで辛い思いをしてるワケじゃないのに」「一体、人に値段があるとしたら誰がつけるんだ?」そんな怒りや悲しみを、ふんわりとした優しい音色で包み込む。
 何よりも、最も大槻さんのセンスが発揮されているのが、「だけどもう、いいじゃないか…」という一言。罪を背負った英雄も、人を愛した咎人も、そして恋をした女性の心も、全てを赦して背を向け去っていく。これ。これなのだ。慰めは無いが赦しはある、この距離感こそが、大槻さんのマイノリティに向ける優しい目線なのだと思う。
 10年越しの再結成も、「だけどもう、いいじゃないか」といういろんなことへの“お別れの背景”を済ませ、そして10年の月日は流れて別れの先にある新しい何かが見えたから、もう一度バンドを組んでやってみようという決意になったんじゃないでしょうか。ちょっと931こと言っちゃったかな……gff……。
 そういえば再結成ということはニューアルバムもあり得るということか。昭和歌謡愛好家として期待しちゃいますよ! カラオケに絶対入らないような曲を、2010年代でももっと聞きたい!

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