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D&D5e余話#196~これから出そうな、というか出ません? 特技~

 えらく間が空いた5e記事だ。
 5eはいい具合にカスタマイズの余地がたくさん配置されたシステムなだけに、ハウスルールで特技を追加したり、改良したりしている声をよく聞く。その中で、そーいや無かったなーと思ったのが、「前提条件に特技を含む」「特定のクラスを前提とする」特技。
 前者は、特技の取得タイミングが非常に限られるため、そうそう選んでられない(俺もまず主要能力値を20まで伸ばすことを優先する)ためそんなもん用意できっかと言われたらそりゃあそうである。PHBに収録するのもどうかなあと思う。どちらかとゆうと、特技のチューンよりもクラス特徴で強さを立たせるのが5eの方針であることだし(その辺はファイターの特権)。
 しかし3eに4e、いやさ数々のTRPGでずんずん特技を積み重ねてきた身としては、1つの特技にもまた尖った存在感を求めたがるのが渡世人の辛い所でして、早速考えてみた。

《二刀の旋風》
前提条件:《二刀の使い手》
・君は左右の手でそれぞれ1つずつの近接武器を使用している際、ACに+1のボーナスを得る(このボーナスは《二刀の使い手》と重複する)。
・君は別の手に持っている片手近接武器が“軽武器”でなくても、二刀流におけるボーナス・アクションとしての1回の近接武器攻撃を行える(つまり、軽武器でない片手近接武器二本で二刀流が可能)。
・1体の目標に攻撃アクションとして行った近接武器攻撃と、二刀流のボーナス・アクションとして行った近接武器攻撃の両方がヒットした場合、2d6点の追加ダメージを与える。このダメージの種別は、君が手に持っているいずれかの武器と同じであり、好きな方を選んでよい。

 《二刀の使い手》をベースに強化しつつ、《二刀のかきむしり》が好きだったのでそれをイメージした特典を付与した。序盤の火力としては頼もしいが、意外とダメージに伸び悩む二刀流の底上げになってくれるだろう。
 二刀流の手数の多さを特化し「ボーナス・アクションを使用せずに逆手の攻撃を行える」という特典を考えた人もいる。これだと追加攻撃を抜きにしても、3回の攻撃(通常のボーナス・アクションを二刀流に費やせば)が行える。手数の増加はしょっちゅうやばい結果を生むから、人間ヴァリアントを採用して最速で4レベルでこれというのはちょっとやり過ぎかもしれない。前提条件にレベル(8レベル以上)を追加するとか、あるいは戦闘スタイル:二刀流を付与するのはどうだろう? レンジャーやファイターを筆頭とした、特定のクラスのみが発揮できる上級特技、これもなかなか面白いのでは。

《いなしの決闘術》

前提条件:【敏捷力】13以上、《守りの決闘術》
・“妙技”特性を持った(君の習熟している)武器を使用している時に【敏捷力】セーヴィング・スローをするなら、君はリアクションを用いてセーヴィング・スローに武器のダメージ・ダイスに等しいダイスを加えることができる。セーヴィング・スローの出目を見てから使用してもよいが、成功か失敗か確定する前でなければならない。
・君が《守りの決闘術》を使用し、攻撃がミスしたなら、君は攻撃してきた目標に1回の近接武器攻撃を行ってもよい。
・“妙技”特性を持った(君の習熟している)武器を使用している時に君が回避アクションを取る際、君の次のターンの開始時まで、君が受ける武器攻撃のダメージを君の習熟ボーナスぶん軽減する。

 限界を超えた剣捌きは、ついに炎や稲妻でさえいなすに至ったッ!(マジシャンズ・レッドの炎を切り裂くチャリオッツ風味)  ただし、これを使ってしまうと《守りの決闘術》のACアップが使えないのが悩みどころ。また妙技武器はだいたいがダメージ・ダイスが小さい(レイピアのd8が限度)ので、過信は禁物だ。最初は習熟ボーナスにしようかと思ったが、【敏捷力】セーヴィング・スローに習熟していると二倍取りになってしまうのでこうなった。ダメージ・ダイスの小ささや《守りの決闘術》との兼ね合いなど、なかなかよくできたと自負に鼻の穴を膨らませている。
 もうひとつはスワッシュバックラーで言うところの野送り。少しは攻撃的な要素を混ぜないと特技2個埋めたろうという意欲を喚起できるか不安だったので。この攻撃は該当するアクションが存在しないが、強いて言うならリアクションの一環だろう。
 最後は回避アクションを取った際のオマケ。飛んでくる武器を次々払い落とすような姿を思い浮かべていただきたい。

 特定のクラスを前提とする特技については、あんまり強い、いや必須レベルだと「じゃあそういうのは基本のクラス特徴に入れておけコノヤロウ」と言われるのが難しいところ(俺もよく言ってたし)。強さよりは、戦い方を拡張する方が適切だろう。そういや上記の戦闘スタイルを前提条件に含む案も、間接的にクラスを前提としていると言えるか。
 こういうのはクラス特徴にまで絞って考えれば無数に思いつくのだけれど、あんまりごしゃごしゃデータを取りそろえるタイプのタイトルではないから、公式で扱うとは考えづらい。

《得意な敵追加》
前提条件:“得意な敵/Favored Enemy”
・君の“得意な敵”に1種類のクリーチャー種別を追加する。もしも“上級得意な敵/Greater Favored Enemy”を君が得ていたなら、“上級得意な敵”のリストから選択してもよい。

 いやほんと、こういう能力こそ特技で拡張できるようにしてほしいっすよ。パスファインダーでもね。それでも複数回取得はできないので、ドカドカ増やすというわけにもいかない。あとUAレンジャーを想定してるからね。生レンジャーの得意な敵感がまるでない得意な敵の場合、特技枠を費やしてまで拡張しようとする人はおるまい(いてもいいけど)。
 この手の拡張タイプでは、“習熟強化”に技能1つを追加、もあってよさそうだ。

《聖邪退散》
前提条件:“神性伝導:アンデッド退散”
・君はアンデッド退散の効果を、フィーンドとセレスチャルにも使用することができる。1回の“神性伝導”で退散させることができるのは、1種類の種別だけである。
・君のアンデッド退散に対する【判断力】セーヴィング・スローには、不利が与えられる。

 5eになってグッと信頼性の上がったアンデッド退散の対象を拡張。それだけではパンチ力が弱いので、退散の効果自体も強化した。元から相手を選ぶ能力であるし、このぐらい底上げがあってもいいだろう。どうしてもボスが退散させられるのが嫌なら伝説的抵抗か完全耐性:退散と書いとこう。

《秘術攪乱》
前提条件:ウィザード1レベル
・君は呪文に対するセーヴィング・スローを行う時、セーヴィング・スローの種類に関わらず【知力】セーヴィング・スローを使用することができる。この効果は一度使用したら小休憩か大休憩を終えるまで再度使用できない。君が“秘術の学派”で防御術系統を選択しているなら、この効果を使用したセーヴィング・スローに有利を得る。
・君の発動した呪文は、対象の“魔法抵抗”を無視する。

 とにかく使わない使わないと言われる【知力】セーヴ、しかも主要能力値が【知力】ということでクラス特徴こそ恵まれているがじゃっかんやるせないツラをしていたウィザードに防御策を追加。呪文のスペシャリストであるウィザードならではの攪乱術、才能や契約任せで呪文を振り回す連中とは違うのです。我々は賢いので。
 せっかく防御的な特技なのだから、防御術系統専門には特別なボーナスを付け加えた。もっとも防御術系統でなくても有益なのは間違いない。
 もう1つは《抵抗破り》。有利打ち消しはかなり強力だが、逆に魔法抵抗をどうにかする手段が全然ない(っつーかイーブンにするのが限界)。ソーサラーの呪文セーヴ妨害ぐらいなのだ。また、相手に不利を与えるのではなく、無視するだけなのが隠し味。魔法抵抗以外に有利を乗せる手段があれば、これを逃れることも可能だ。この辺でノーコストである利点を大き過ぎないものにしたい。
 特技は意外と術者、特にウィザードが取ってうれしいものが少なかったので、ウィザードをフューチャーした特技は是非書いておきたかった。

 5eの特技は特定の状況下でのみ発揮する効果だけに限らず、別の能力を持たせたり、能力値を伸ばしたりして腐らせないというコンセプトを感じる。特技を取れる機会が一般的なタイトルと比べて限られているのもあるのだろうが、なかなか参考になる姿勢である。5eの中でも新規データを期待できる要素だけに、ザナサーに続いたサプリでの拡張が待たれる。武器特技とか正式採用してほしいし。

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テーマ : TRPG
ジャンル : ゲーム

We are Pathfinders!#291~パスファインダー協会日本支部奮闘ノ記inTRPGフェス~

 熱海に朝夕のバイキングを食いに行ってきました。

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テーマ : TRPG
ジャンル : ゲーム

We are Pathfinders!#290~パスファインダーRPG2nd テストプレイ版DL開始~

 結局先月もロクに更新せぬまま終わった(この言い訳もういいか)が、今月は今日という日はこれを告知せねばならない!
 パスファインダーRPG2nd、テストプレイ版ダウンロード開始!
Rulebook_01.jpg
 Starfinderの時みたいにDLが朝までかかる、なんてことはないから安心だ。
 ルールブック単体でDL可能なほか、Bestiaryやフリップマット、シナリオまで同梱してあるセット版もDLできる。
 ろくにまだ読み込んじゃいないのだが、ハッキリ言えることは、パスファインダーRPGがD&D3.75eだった時代は終わる。D&Dから派生したゲームであることに違いはないが、これからはパスファインダー独自の道を歩むことになるだろう。もっともStarfinderの影響は大きいし、もっと言えば5eから大いに影響を受けた雰囲気はあるけどね。
 そしてもう一つ、新たなパスファインダーRPGがどうなるのか目が離せない、この楽しみも間違いないぜ! パスファインダー協会員ならばPaizoのページに飛んでダウンロードのボタンを押してくるのだ! 別にユーザー登録しなくても(たぶん)DLできるからまあ面倒がらずやってくれや。あとゴブリンがPC種族にいるのはともかく、《強打》がファイター専用になってると聞いてしっこちびったりするなよ!

テーマ : TRPG
ジャンル : ゲーム

We are Pathfinders!#289~答え合わせ~

 またも一ヶ月更新してへんぞワーレー広告が出てしまうほど放置してしまいましたが、おかげさまというかなんというかR&R誌のパスファインダー連載が忙しくて毎月机に突っ伏して泣いている日々でして。アンケートの評判もよろしいようで大変嬉しいことです、ありがとうございます。お気に入り頂けましたら、是非ビギナー・ボックスやコア・ルールブックも買ってくんねぇ。
 それはそれとして毎号の記事には何らかの小ネタを織り込むのを勝手な課題としているのですが、いまんところそっちに関してはノーリアクションです。だからといって何だというワケでもありませんし、自分で自分のギャグを解説するのはゴムの伸びたパンツぐらい虚しいのですが、誰にも言及されないのは悔しいので、泥水をすするような気持ちで敢えてここで解説していきます。

●Vo.162
・平凡パンチが最も恐ろしい武器になる→対戦ホットギミック

 必殺技「平凡パンチ」は麻雀対戦ホットギミックの対人戦の時に使われるネタ。一人プレイの時は「連打開始ッス!」で知ってる人は知ってるギャルにやらしいおしおきをする、まあ脱衣麻雀の範疇に入る(ストーリーが「全ての問題は麻雀で解決できる気がする。っていうか、しろ」とかなんか色々おかしいのだが)のだが、対人戦になると何故かシリーズ伝統で実写のむさくるしいおっさんがコスプレをしてどつきあう猟奇的光景が繰り広げられる。一生に一度使うかどうかわからんが対人戦はジャンファイトモードと呼ばれ、コスプレおっさんらはジャンファイターと呼ばれる。
 そのジャンファイトモードで、どのシリーズか失念してしまったのだが、「平凡パンチ」の名のもとに単なる拳を繰り出す必殺技演出を筆者は大いに気に入り、「平凡パンチ」を通常攻撃の意味で使用するようになった。
 なお、シリーズの開発元である今は亡き彩京はゲームの登場人物にやたら性的倒錯者を含める傾向があり、脱衣麻雀なのに隠しキャラにマッチョな野郎(しかもホモ)がいた。

・悪そうな奴はだいたい為政者→DragonAshの『Greatful days』より「悪そうな奴は大体友達」

 実のところ、元ネタより『労働参加』の「へこんでるやつらは大体友達」、それも筋少バージョンの方がなじみ深いです。


●Vol163
・「オラは神格になっちまっただ」→ザ・フォーク・クルセダーズの『帰ってきたヨッパライ』

 これは文中でも言及してますが、「オラは死んじまっただ~」のフレーズは知っていても「帰ってきたヨッパライ」を知らない人は多いんではないでしょうか。

●Vol.164
・アナーキー・イン・ヴァリシア→セックス・ピストルズの『アナーキー・イン・ザ・UK』

 言わずと知れたセックス・ピストルズのキラーチューン。
 最初は元ネタに従って「アナーキー・イン・・ヴァリシア」と書いたのですが、ヴァリシアの場合定冠詞は不要なのでは、とかなり真剣に悩みました。

●Vol.165
・エイローデン已に死す→三国志の黄巾族のスローガン、「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉」

 身内で使ったネタですがその時はあんまり反応が良くなかった。

・「時はまさに聖○魔Ⅱ」→ヘヴィメタルバンドの聖飢魔Ⅱ

 多分怒られないとは思ったけど、閣下本人よりも各方面へ遠慮して念のため伏字にしました。


・尋問者の影→ジーン=ウルフの『拷問者の影』

 ジーン=ウルフのSF小説『新しい太陽の書』五部作の一冊目。筆者は未読。響きが気に入ったので。

・ディストピア小説『1984年』→ジョージ=オーウェルの『1984年』

 ディストピア小説の金字塔。ディストピアものに影響を与えまくった。実際読んでいてパロりたくなるネタが満載かつ読んでると死にたくなってくる。ビッグ・ブラザーはお前を見ている。
 以前EncountersのPCで使ったゴールドスタインの元ネタもこれ。

・なのにあなたは帝都にゆくの→チェリッシュの『なのにあなたは京都へゆくの』

 2004年版鉄人28号の『京都燃ゆ』で知りました。大好きな曲なので是非使いたかったのと、Chelish(シェリアックスの~)とチェリッシュをかけた渾身のダブルミーニングだったのですが、まったく反応が無かった。これが一番ダメージ大きかったです。あと今見たら「なのにあなたは帝都“”ゆくの」じゃなきゃいけねえじゃん、と気付いてクリティカル2倍ダメージを食らったので今日はもう不貞寝します。

 というワケで、内海地域のあやしい話と変な小ネタでお送りするR&R連載記事をどうかよろしくね。

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TRPGこぼれ話#308~カードランカー遊んできた~

 ここ最近すっかり5e&パスファインダーRPGブログと化していたっていうか更新頻度が壊滅的になっていたけど、いろいろTRPGを遊んでいるのは変わってませんよ!
 てなわけで筆者が一番好きなサイフィク『カードランカー』を遊んできた久々のレポートだ!

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テーマ : TRPG
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We are Pathfinders!#288~ゲームマーケット春お疲れ様でした~

 事後報告になりますが、ゲームマーケット春にてTRPGフレッシュフェスに、パスファインダーRPGのGMとしてちょっとだけ協力してきました。
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参加者ではなく開催サイドで来るのはえらく久しぶり
 下の写真はお勤めを終えた後、会場の外のベンチに座ってヨレヨレになりながら撮影した物。
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 身内以外でパスファインダーRPGの自作シナリオを回すのは初めてでした。拙いGMでしたが楽しんでいただけましたらこの上ない幸いです。この機会を与えて下さった全ての人々と、卓に参加して下さった人々に精一杯の感謝を。
 そしてみんな『ビギナー・ボックス』買ってパスファインダーRPGを遊んでNE!(あとRole&Rollの連載もyrsk)

テーマ : TRPG
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We are Pathfinders!#287~PFことはじめ記・いつかパスファインダー協会員になるために レンジャー後編~

 レンジャーは技能職であるがローグ程色濃くはなく、良好な攻撃ボーナスや武器・防具の習熟を見ればわかるように、戦闘職としての傾向も兼ねている。一方で戦闘職ではあるが、ファイターやバーバリアンのように、ただ前線でガンガン殴り合っても真価は発揮しづらい。戦闘スタイルや“得意な敵”が噛み合ってこその実力であり、また技能職としての仕事も両立するためには、立ち回りのみならずビルドの段階から考えねばならないことが多い。

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テーマ : TRPG
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We are Pathfinders!#286~PFことはじめ記・いつかパスファインダー協会員になるために レンジャー前編~

 5e以上にえらい間が空いてるけど、こっちも地道に再開していきます。

レンジャー

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好きな漫画#57~野望の王国~


 機会あって一気読みした、いやはやすごい漫画もあったもんだ。
 その異名と数コマは聞き及んでいたのだが、聞きしに勝るとはこの事である。
 ふた昔前の漫画を取り上げて「昭和はやばい」とネタにする風潮を見るに、「それは昭和がやばかったんじゃなくて梶原一騎がやばかったんじゃないか」とツッこんでいたのだが、今度からはそれに雁屋哲の名前も加えようと思う。
 この漫画、『野望の王国』のテーマは「暴力」である
 暴力を取り上げた創作、というと自衛や復讐の是非などといった哲学的方向性を想起するかもしれないが、『野望の王国』における暴力という概念はそんな小難しいもんでも繊細なもんでもない。
 主人公・橘征五郎とその相棒・片岡仁の二人は東大法学部にて主席を争い合った期待の新星。しかし、この二人が東大法学部に籍を置いて政治学を修めていたのは想像を絶する目的のためだった。彼らが政治学から掴み取ろうとしていたのは、人が人を支配するための仕組み、権力を掴むための方法。社会の権力構造のカラクリを研究し尽くし、己のための王国を築くための下準備だったのだ
 そして、征五郎と片岡が辿り着いた解とは、それ即ち「暴力」!
 そう、征五郎は神奈川県最大の暴力団・橘組組長の妾腹の子であった。征五郎は己の野望のために橘組を利用し、表裏あらゆる暴力を駆使して日本を裏から支配する野望のために、戦いの荒野にその身を晒すのであった!
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 ……この時点で、一文脈につき数えきれないほどのツッコミどころが地雷の如く埋まっているけど、この程度でついていけなくなったら橘組の存在する川崎に在住はしてられない。それに島本和彦先生も『無謀キャプテン』で「非常識な目的が常識的な手段で達成されるわけがない」と仰っていたように、この漫画の常識は我々の常識と異なる次元で組み立てられているので、我々の価値観でツッコミを入れるというのは野暮なものだ。そうでないとツッコミが忙し過ぎて過呼吸に陥る。
 まずそもそも日本を裏から支配するのに暴力団を利用するという発想、確かにレッガーが社会戦を仕掛けるのは間違いではない。しかしいくら適性があると言っても、たかだかヤクザ、それも最大とは言えシマを神奈川県下に限られる暴力団がクロマクやエグゼク相手に社会戦は無謀ではあるめえか、という指摘はごもっともである。が、その順当な判断が征五郎&片岡言うところの支配される側の思想に染まっているのだ。
 『野望の王国』におけるヤクザとは、単なるチンピラではない。N◎VAにおけるレッガー然としたならず者でもなければ、亜俠のようなボンクラ鉄砲玉でもない。ヤクザという名の、なんか強力強大ななんかだ。その技術力はNASAに匹敵し、戦闘力はプロの殺し屋を凌駕、影響力は政治家・公安に及び、あらゆる犯罪に証拠を残さぬ手際の良さを誇る。逮捕された組長を救出するために連続爆破事件と鉄道事故、それに暴動を発生させるぐらいやっちゃうのだ。正直言って、広く見積もっても関東一円最強の暴力団でこんだけのことができるなら、別に公権力を掌握しなくても日本を支配できそうな気がするのだが。そういえば(真正面から橘組と対立する立場にある警察はともかく)本作で一番しょぼい権力者が、本来一番の大敵になりそうな現役政治家であった。だいたい冷や汗を流して利用されるか暗殺爆殺されるかの二択である。
 さらに征五郎と片岡を筆頭に、暗躍するどいつもこいつもが悪魔的頭脳の持ち主であるものだから、なおのこと本気を出したヤクザを止められる者はいない。いくらなんでもそりゃ無茶でっせ! とアストロ球団風に異議を差し挟みたくても、『野望の王国』の暴力団に不可能はない、そんな組織を運用しているヤクザが世界の法則なんだからもうしょうがないのだ。二十そこそこ、しかも学ラン姿の征五郎と片岡に権力者たちがいいように翻弄されるのは実にシュールな図柄だが、なんせ東大法学部主席卒業という肩書と、由起賢二先生の画筆によるぶっとい眉毛と剣鬼の如き眼光には黙るしかない(恐らく征五郎のキーはカリスマだろう)。
 全編に渡って『野望の王国』はツッコミどころに溢れている…というかツッコミどころだけで出来ている漫画なのだが、そこで交わされる人間ドラマは本物の濃厚さというせいで、読み進めていくともう目が離せない離れない。時代ならではのツッコミどころを笑いつつ、そこに込められたドラマの熱さを素直に楽しむというのが昔の漫画の二重に美味しい味わい方であるが、『野望の王国』は両方が突き抜け過ぎていて、もうたまんない。たまらない、などとお上品な表現をしている余裕もない。たまんないのだ。タマ姉たまんねえと同じようなニュアンスを読み取っていただきたい。
 征五郎は野望のために全てを利用するハラを決めており、そのために最愛の異母兄・征二郎を犠牲にすることも厭わない。片岡も征五郎の異母妹の文子と恋仲にあり、野望と彼女の間の板挟みとなる。若き獅子達の氷のような判断力と実行力、その一方で捨てきれない人情に煩悶する姿が大きな見所ながら、ドラマの大半を占めるのは先述の橘征二郎、そして最大の敵・柿崎憲と言っても異論は少ないだろう。
 橘征二郎は人格・統率力・人望全てにおいて征五郎を凌駕し、征五郎が最も敬愛し、かつ最大の敵として認識している男。
 唯一征五郎が上回る点といえば、それは胸に秘めたる野望の大きさで、征二郎はあくまでも昔気質のヤクザ。家族と組員を愛し、橘組の存続と面子を第一に考える。加えてなまじっか優秀過ぎるばかりに征五郎が自分を利用していることに早期から気付いており、弟への愛情と組長としての立場(征五郎の策略でさせられたんだけど)のせめぎ合いに、征五郎以上に悶え苦しむことになる。
  『野望の王国』のバイオレンスなガワからすると想像がつかないかもしれないけど、作中では「」も大きなウェイトを占めている。中でも、征二郎の抱えた愛は一際重い。弟征五郎や文子、それに妻と難病を抱えた息子、そして組員、征二郎の守らなければならない、愛を注ぐ相手は登場人物の中でも特に多い。反面、その気になれば軍隊顔負けの組織力を発揮する暴力団の組長という立場上、愛を犠牲にしなければならない場面もまた、特に多い。征二郎の苦悩の深さは『野望の王国』の大きな見所のひとつだ。
 同時に、いざ事が起きると征五郎でさえ青ざめる程の非情さを発揮する人物で、ただ人情派のヤクザというだけではない。兄弟間の跡目争いが発生するや否や、空爆に走られたら流石の征五郎とてそりゃ真っ青だ。手下も手下で、「お前(征五郎)にとっての片岡と同じ」と全幅の信頼を寄せられている赤星は、窮地の征二郎を救うために、“川崎騒乱”(連続爆破・鉄道事故・暴動がコレ)を実行するほどの心酔ぶり。政界の元老との戦争の際にも、組からの離反者は一人も出なかった。いろんな意味で作中最大にして、最強の人物である。
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同一人物です。
 一方、橘征二郎が征五郎にとってポジの最大の敵であるから、柿崎憲はネガの最大の敵だ。
 征五郎と同じく東大法学部を主席卒業でエリート街道を超スピードで突き進み、30歳で警察署長という異例の昇進を果たすが、それすらも柿崎にとっては腰掛に過ぎない。大蔵省に入らず警察庁を選んだのも、警察という日本最大の暴力機構を利用するため、つまり征五郎と片岡と同じく、暴力による日本支配を目的とする男なのだ。彼の野心に己らと似た臭いを感じた征五郎と片岡は協力体制に入り、征二郎と柿崎を相争わせ、ゆくゆくは共倒れになったところで漁夫の利を狙うことを画策。しかし征二郎は柿崎の一歩先をゆき、ついに征五郎と片岡も柿崎を切り捨てることを決意。警察署長から一転して犯罪者となり、柿崎は逃亡生活に陥る。
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これでも警察官なんです。
 全てを失った柿崎であったが、ここからが『野望の王国』最大の敵として本当の物語が始まる
 署長のポストの喪失があったにも関わらず、柿崎は警官時代に渡りをつけていた裏の世界を頼り、橘組への復讐を実行に移す。それも失敗するとなると、征五郎らの抹殺部隊をかわしつつ、名を変え姿を変え用心棒として政界の黒幕に引き合わされ、腹心に取り立てられるという強運を発揮する。
 征五郎と片岡を筆頭に、『野望の王国』の登場人物は己の野望のためにあらゆる力を注ぐ筋金入りの、ある意味主張の通った奴らであるが、柿崎の魅力はその中ですべてを私益、そして橘組への復讐に注ぐ自己中心性だ。何度打ちのめされても強運と実力を武器に這い上がり、征五郎と征二郎への復讐を決して諦めず、全力を尽くすことを厭わない。柿崎に襲いかかる逆境は征五郎以上であり、彼が掴んだ権力の座は全て失われている、にも関わらず一匹狼になってさえ復讐の機会を狙うこの執念、気質だけを考えれば主人公かと見誤ってもおかしくない。それでいて目的は100%私利私欲のため。天より高いプライドの持ち主ながら、権力者の助力を得るためなら靴を舐めることぐらい平気でやってのける。非情と愛情のジレンマを描くこの作品には珍しい、一辺の人間らしさを感じさせないあたりが実に清々しいヒールである。
 柿崎の恐ろしさを示す例として、征五郎と征二郎の縁者は大半を柿崎に殺されているのだが、殺人が実行に移されたのはほとんど柿崎の失脚後ということだ。後ろ盾を失ってなおこのキルマーク、柿崎のサバイバビリティと戦闘力を物語る好例である。そういえば戦闘力も作中最強であった。
 『野望の王国』の戦いは、征二郎と柿崎の骨肉の争い、その陰で暗躍する征五郎・片岡の三つ巴の構図となるワケであるが、いかんせん征二郎と柿崎のキャラが濃過ぎて、征五郎片岡コンビが薄味と感じざるを得ない。というのは、征二郎・柿崎が正面切って相争う故、ドラマもまた正面切って描けたから、であろう。征五郎・片岡の役目は黒子の役目であり、表舞台で活動するわけにはいかない。黒幕が黒幕たりうるのは影から事態を操られるからで、表に出てきた瞬間に隙が出来ると征二郎が指摘していた通りであり、これは立場上止むを得ない。また征五郎と片岡の秘めたる野望のために、社会的な地位を全て失うような大きな失敗は許されない。迷いは捨てて、粛々と野望達成のために邁進しなければならない。
 対して、征二郎は背負わされたとは言え適性抜群の橘組の組長、求められる決断と責任の重さが段違いである。最初から最後まで征二郎は組長の地位と、征五郎への愛情に苦しめられ続けてきた。また柿崎は征五郎に許されなかった、社会的地位を失う大失態を何度となく演じ、その度に絶望的な逆境からの再起するという、ドラマの上で極めて美味しい役割を得るに至った。
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作中一番酷い目に遭ってるのは間違いなくこの人。
 柿崎の最期にしても、征五郎は柿崎抹殺の作戦に参加こそするものの、決着は征二郎と柿崎の壮絶なステゴロタイマンの殴り合い。一種本作を象徴するような対決である。その最中、柿崎に盾にされた征二郎は、征五郎の謀略を全て呑み込んだ上で征五郎を次期組長に任命し、柿崎ごと射殺される。征五郎への愛情、橘組組長の地位を両立した見事な最期である。結局、最後の最後まで征二郎は征五郎にとって最大の敵であり、また超えることのできない壁だったのである。役者が違う、とはかくあるべし。
 これまた『無謀キャプテン』より引用すると、男はどうしていいかわからん時が一番面白い。その、一番面白いどうしていいかわからん時のメインを主人公が担当できんのだから、征二郎と柿崎に作品の印象を持っていかれたのは、物語の構造が落度とまではいかなくとも仇となったと言っても正当な指摘だろう。ために、征二郎が撃たれたのを目撃して茫然自失となるあたりから、一気に征五郎の魅力も出てくるのであるけれど。また片岡が文子との結婚を機に、野望を捨てて征二郎の下に着くことを提案された際に見せた征五郎の憤怒は、彼の苦悩の深さがついに噴出した素顔であり、本心からの絶叫は征二郎・柿崎にも匹敵して読者の心を震わせる。この素顔がもっと見られていれば……と思う。この時、普段征二郎への愛ゆえに判断を鈍らせがちな征五郎の押さえに回る、冷静な片岡がまた愛ゆえに和解を切り出す構図も素晴らしい。片岡とはまた違った、征五郎の愛ゆえの苦労が浮き彫りになった名シーンだ。
 物語は征二郎・柿崎の死後も続き、宗教団体救国教団の打倒をもって完結するのであるが、いかんせんあの二人の後とあっては格落ち感が否めない。片岡との別離という最後の男泣きイベントのためではあるものの(それに救国教団と教祖の息子・白川天聖の存在感も強烈)、ラストに持ってくるのは征二郎と柿崎との決着、そして征二郎から征五郎への命懸けの襲名……の方が劇的な幕切れだったのではないだろうか。そのぐらい征二郎と柿崎の対決は、凄まじくかつ目が離せない勝負。
 余談ながら、柿崎もまた征二郎に勝てないまでも、幾度も痛手を負わせている。激怒した征二郎は柿崎をガキ呼ばわりするのだが、征二郎は年下だったりする。て、29歳? あんな29歳嫌過ぎる。ランバ=ラル以上に歳不相応な貫禄だ。
 濃過ぎるキャラクターと言えば、サブキャラ筆頭の疋矢さんこと疋矢繁に触れておかねばなるまい。関西から来た若頭で、バイザー着用のコワモテながら、作中の萌えを一手に引き受ける。外見に似合わず無類の犬好き、何かあるとウイスキーをラッパ飲み、嬉しい時には頭から酒を被るなど妙に愛嬌のあるキャラで、それでいて有能、土壇場にも強く、柿崎さえも煙に巻いて見せる。その度胸は、いつしか征五郎と片岡にとってもかけがえのない味方になっていた。『野望の王国』の中で屈指の人気キャラという評価(オレ調べ)も納得である。
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たぶん一番有名な疋矢さんの画像
 最愛の兄さえも犠牲にして厭わない主人公が象徴するように、利用し利用されがモットーの登場人物が多い中、征五郎と片岡の野心に惚れ込み、利用されることを納得した上で、それに甘んじるという点でもなかなか珍しいキャラクターだった。決して裏切らず、最期は柿崎から征五郎らを守るためにその身を張り、今際の際には男泣きを持って見送られている。これほどの征五郎と片岡への疑うこと無き忠誠心、そして惜しまれての死は、初期からの手下トクぐらいしか匹敵する者はない(片岡は文子との結婚を前に征五郎と決裂しかけたし、征五郎はよく自分自身を裏切りかける)。そういえばトクも一介のチンピラにしては軍人顔負けの手下を揃える謎の人物であった。
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この危ない笑いからは想像もつかない程の忠臣
 由起賢二先生の画力もまた、外せない魅力である。元から動物画を得意とされるだけに写実的描写に長け、しかも漫画的な白と黒の表現に見事に落とし込んでいるのだから恐れ入る。特に、背景の美しさは絶品。流れる雲と朱に染まる夕暮れがモノクロで描かれる様は、息をのむほどの美しさ。川崎騒乱シーンはその白眉も白眉たるもので、爆発する工場、激突する車両の超絶書き込みを見よ。息が詰まるほどの人間ドラマは、渾身の原作に渾身の作画がスウィングしてこそなのだ。どう見てもダイナマイト数本じゃあり得ない破壊力の爆発シーンも、この画力を目にしたらそんな疑問は些細な事だ。
 原作者曰く「三十代の頃、コレが書けた勢いを取り戻したい」とのこと。確かにこういう漫画が無くちゃならないがふたつとあったら割と困ると思う。そのぐらいの凄まじい熱量を放つ漫画故、読む価値ありと断言はできるがとにかく疲れる漫画でもある。スーパーマーケットの紙袋の中からコンクリートブロックとかツッコミどころに笑っていられるぐらい体力のある若いうちに読むことをオススメする。
 それにしても、こんなドッタンバッタン大騒ぎが目前で起きてるのに、割と日常生活を送っている『野望の王国』の住民のタフさには恐れ入る。一種主要な登場人物以上に図太い。ゴルゴムの襲来で退去した『仮面ライダーBLACK』の日本人より頑健なのは間違いない。

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

クトゥルフ神話TRPGヨタ話#88~11年目のキーパーテクニック(後編)~

 11年目の再評価ぐらい大目に見ろよ
 11年前だって評価されたクオリティだと思いますけど。
 さあ内山先生直伝のキーパーテクニック後編だ! 実践に話題が移るにつれて、胸が痛くなる体験談もますます増えていくゆえ、ちょいと心臓の悪い読者は早く卒塔婆に墨入れな!

4.情報提供の流れを工夫する
 前回の記事に倣って
・インパクトのある事件で興味を引き
・探索者だけしか知らない情報で自発的に動いてもらい
・情報収集は多様なNPCで演出する
 てな流れが出来てきたところで注意されているのが、「調査方法に選択肢を複数用意すること」。
 つまり一本道シナリオはイカンということでしょう、耳にタコができるほど聞いてますよ俺らならそんな初歩的なミスあり得ないっすよ小指でひねってやりますよマジで、とマジン調に息巻くところだが、よく読んでみよう。内山先生曰く、ここで言う一本道のシナリオとは、最善の行動選択肢が簡単にひとつに絞られてしまうシナリオのこと。ゲームの目的が謎を解くことであれば、その最善の行動をしないことは、ほぼあり得ない。ならば、それは行動選択肢がないことと同じではないか?
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 ちょっとお見苦しい所をお見せしましたがだだだ大丈夫、探索者は次々イベントに遭遇しているんだから退屈しない……という甘い幻想は「そんなに驚ける新鮮なイベントなんて思い付くもんじゃないし、だんだんとプレイヤーは考えることに飽きて、想像力を失ってしまう。それはシナリオへの好奇心が失せるのと同義だ」という言に打ち砕かれる。
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 さて砕け散ってばかりでもいられんので、じゃあどうするか、を考えると、気を付けなくてはいけないのがプレイヤーの情報の質。ひとつの情報を手に入れたら、すぐに次のイベントが明示されるようでは、前述のような選択肢がありそで結局一本道なシナリオとなってしまう。情報を得た探索者の前には、複数の行動選択肢が示されるのが理想だ
 行動選択肢の提示は、「次の展開がはっきりわかるものではなく、少しだけ思わせぶりに、ぼやけた情報を渡す」ことで実現させる。人物ならば直接指定するのではなく、「偉大にして深淵なる魔術師」などと人となりを迂遠に表現したり、「私の最も尊敬する人物」のように、情報源との間柄で示す、など。
 明示されていない情報というのは、それだけでプレイヤーの興味を引き、想像力をくすぐるもの。こうじゃないか、ああじゃないかと手探りしている間は妥当な選択肢をすぐに導き出すことなんてできないし、そうするうちにKPの予想を超えて、より面白くなる可能性さえある。KPだけでもPLだけでも思いつかない展開を思いつく、これぞTRPGの醍醐味。これを誘発できるのがベストの情報の質というものだろう。
 ひとつ付言するなら、クトゥルフの場合、呪文のようなブレイクスルー手段を探索者が頼りづらいのを考えると、「少し考えればわかる」程度にぼかした情報を並べるのがちょうどいいと思う。あんまりややこしい情報だとそれにかかりきりになって展開が詰まるが、かといって単純すぎる情報は上記の一本道シナリオに抵触してしまう……そこで、そこそこにぼかした情報を並べて、吟味するという思考をひと手間加えることで、単純さを補うという寸法。
 まとめ、探索者の想像力をかき立てるような情報を。次の行動を簡単に特定させてしまう情報はNG

5.形あるものを残す
 この項は情報収集の補足といった感じ。曰く、「探索者に物的証拠を与えよ」。
 内山先生喩えるところによると、口頭の情報収集がクトゥルフの“”なら、物的証拠は“”。謎めいた形状のナイフ、犠牲者の握っていた不気味な彫像……一見しただけではその意味を読み取れない物品は、図書館を頼ったり、NPCに聞き込みに行ったり、という調査の出発点となる。
 それに、探索者の手元にあって、いつでも調べたり考えたりできる謎めいた物品というのは、心理的な土台となってくれるという効果もある。常軌を逸した事件が連続し、事実を直視するのが難しくなった時でも、物的証拠が手元にあるというのは、事件が妄想でも幻覚でもなく、現実のものであるという確信を抱かせてくれる。
 最後に、大事なのは、物的証拠は量より質。数が多いと目移りしてしまって、ひとつひとつの印象が薄れてしまう。決め手となる物的証拠なら、ただそれだけを見ていればいいぐらいのイソパクトを付与してやるのだ。
 まとめ、物的証拠で調査の足場を作る。奇妙な物品ひとつでプレイヤーの気持ちを掴め!

6.最後の盛り上がりに虎穴を用意
 情報収集で全貌が明らかにされたら、いよいよクライマックス。
 ここを上手くシメれば、終わり良ければ総て良し、逆に言えば終わりがしまらなければ全てがパーデンネンになるデッドエンドフェーズだ。あ、そうそう、終わり良ければ総て良し、を曲解して途中の情報収集なんておろそかでええんや、とかぬかす輩には「はじめ半分」という言葉もあるかんな!(by大熱言)
 ただ、情報収集とプレイヤーの推理で謎を解き明かすクトゥルフでは、全貌が明らかになった時点で目的が達せられたと気が抜けてしまいがちなのが危惧されている。消化試合扱いされないためにも、プレイヤーの興味は最後の最後まで引っ張ってやらねばならない。
 故に、クライマックスに必要なのは虎穴を用意しておくこと。大手同人ショップなどというありきたりなギャグや梶原一騎的プロレスラー養成機関などと昭和ジョークを放つ輩は一人残らず《ニョグタのわしづかみ》の刑だ。
 全ての謎が解けたら問題点を排除して終了してしまうこともあれば、良質なミステリにアクションシーンなんていらんのや、という人もいるかもしれない。が、道中こんだけ謎と危機を煽っておきながら無難に終了したんでは腰砕け。それに見合った緊張感があってこそ、カタルシスは生まれるのだ。
 んで緊張感を生むために手っ取り早いのは、「探索者を危険に立ち向かわせる」こと。
 最後の最後までガッチリプレイヤーの心を掴むには、全ての謎が解けた後でも、どうしても残ってしまう危険をKPは用意しておけばよい。そして、その危険はどの程度なのか、はっきりわからないようにしておくのが、なお理想。どうしても立ち向かわねばならない障害とあらば、プレイヤーはその危険を少しでも軽減しようと頭を搾り、入手した情報を総ざらいするだろう。プレイヤーが夢中になっている間は、シナリオに対しての好奇心が失われることはない。
 またあまりにも絶望的で無理竜な危険にしてしまうのは、ハナっから諦めて投げ出される恐れがあるから禁物。それまでの事前調査と推理、それにひとにぎりの勇気で乗り越えられる危険が程よい。まあ絶望的な危険というハードモードもありっちゃありだが、危険が大きければ大きいほど、その対処方法には確証を与えてあげるべきだろう。「危険は大きいが、探索者が集めてきた対策があれば対処することはできる」という保証がなければ、いくら遊びとはいえプレイヤーだってヤになって当然よな。
 さて、そのクライマックスの危険だが、ここからが本項の大部分を占める。というのも、クトゥルフでどつきあいで決着をつけるというのはなかなか難しい。何度もネタにしてきたように、クトゥルフの戦闘ルールはまじめに運用すると運用できない(内山先生は「ややアバウト」と控え目な表現に押さえているが、「やや」どころじゃないよ!)というポンコツであり、かつそれを意図して組まれた探索者でなければ、戦闘能力の確保は難しいため。それまでの地道な努力が、ちょっとの不運で露と消えたのではプレイヤーも納得しまい。かくて「クトゥルフは理不尽」などと触れ回るプレイヤーを自らの手で生む業を背負わねばならぬ羽目になる。
 ところでオレは何度も戦闘で解決させられてきたが、それはプレイグループの傾向が偏っていたからであり一般論と同一視するのは危険だろう。ついでに言うと、怪物の鉤爪に襲われて死にかけるより、操られた味方の拳銃に殺されかけた方が遥かに多いのもその証左だな。
 それではクライマックスの危険を戦闘以外でどう排除するのかというと、「これまでの情報で明らかになった手段」を「何度かの判定の成功」で行えるようにすると良い。クトゥルフが頭脳ゲーム中心であれば、その解決策もまた頭脳ゲームというのはごく自然な帰結。邪神が召喚される儀式ならば、狂信者や邪神を倒すという解決方法より、儀式に必要なアイテムを破壊する、封印の呪文を先に唱える、魔法陣を壊す……など、いかにして阻止するか、という方向性に持っていった方がよりクトゥルフらしいクライマックスとなる(この時、4の「複数の手段を用意してプレイヤーの好奇心を引く」を応用するとなお盛り上がる)。
 そして、この時自動的に成功するのではなく、何らかの判定も要求するのがポイント。全ての情報を組み合わせた最適解を得た上で、最後の一押しに判定の成否が関わってくるのも、クライマックスのスリルには相応しい。判定自体が単純なものでも、生死の関わった状況でのロールは場を盛り上げてくれるもの。
 ただ、使う判定はあまり無茶なものでない(誰も取ってない〈地質学〉ロールとか)こと、それに探索者の調査の進み具合や工夫を反映させたボーナスは積極的に汲んであげること、そして判定に取り組む機会は二度以上与えてあげること。いくらスリルが重要でも、d100ロールひとつでこれまでの成果が否定されては台無し。ひとつひとつ判定の成功を積み上げて解決に近付いてゆく展開は、達成感と同時に情報収集パートにない緊張感を演出してくれる、これぞクライマックスならではの展開というもの。それに諦めない心と努力は報われるべきで、失敗したとしてもヤクザの世界に二度目はねーぜ、などと凄まずチャンスは与えてあげてほしい。
 戦闘自体も、この「何らかの判定」に含まれる。戦闘ルールに難儀があるなら、それ自体を解決策にせず、危険を阻止するための一環に含めればいいのだ
 もしも判定抜きで事件を解決できるようにするなら、前述の絶望的なまでに危険が大きい場合と、支払うリスク(マジック・ポイントや耐久力)が取り返しがつかないほど大きい場合が望ましい。直面する危機が大きいと、プレイヤーは判定を求められた場合、刺激以前に「ここまで段取りしておいてなおロールが必要なのかよ」とストレスに取られかねない。また、よくわからんが取りあえず火を点ければ解決できる、てな最善策というのは、緻密な情報戦を下地にしておくにしては、あんまりにもあんまりだ(『パラダイスの終焉』は知っている人ほど最善策に辿り着きづらい意地悪い仕掛けになっているので…という考察を聞いたことがあるが、そんなシナリオをルールブックに掲載するなっちゅーねん)。
 最後に、失敗した場合の脅威を提示しておくのもクトゥルフでは大切なこと。プレイヤーに真に伝えるべきはその一点、とさえ内山先生は訓戒している。
 事件の真相に近付けば近付くほどその脅威を知るのだが、それでもなお探索者には立ち向かう決意をしてもらわねばならない。もしもそれが放置されたら、そして探索者たちが投げ出した場合、人間社会にはどんな危機が迫るのか? その切迫感があってこそ、探索者は最後までシナリオに取り組む姿勢を保てるのである。同時に、その危機が「探索者の手で対処できる」ことを明示するのも同じぐらい大事。わかっていて危険に取り組むとしても、探索者がアクションを起こせば解決できるというシナリオ上の保証、そういうプレイヤーとKPの信頼関係があれば、「クトゥルフは危険を無理強いされる理不尽なシステム」などと揶揄されることはないだろう。
 まとめ、終わり良ければ総て良し。失敗の恐怖と成功の達成感をプレイヤーに与えよう

 ……11年前、『クトゥルフ2010』さえ登場してなかった時期に執筆されたKP講座、如何だったろうか。
 もとよりシナリオやマスタリング作法というのは時代を越えて通用するもので、今のKP諸氏が読んでも頷ける内容、納得できる内容であったと思う。今では手に入れるのがちょっと大変だが、Vol.99のキーパーの十戒、それに最新のVol.162のキーパー・デビューと併せて読んでみていただきたい。冒頭のイラストが、女物の下着姿でハイヒールと網タイツ(と恐らくカツラ)を着用したオッサンが魔法陣の上に大の字に倒れている、という逆方向に全力で舵を切ってる代物な以外は素晴らしい記事だ。

  

テーマ : TRPG
ジャンル : ゲーム

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R&RにてパスファインダーRPGのサポート記事を担当させていただいております。

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